Works 185号 特集 ニッポンの“課長”の処方箋
[データで見る]管理職昇進前後で、働き方や報酬、幸福度はどう変わる?
管理職への昇進で、働き方や気持ちにどのような変化があるのだろうか。
リクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を活用し、2022年時点に非管理職→2023年時点で管理職に昇進していた人(以下、管理職昇進者)と、2022年・2023年ともに非管理職の人(以下、非管理職のまま)の比較を試みた。
調査概要
出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」
対象
[共通条件]
◉2022年、2023年の両年に同一企業に継続勤務している正社員
[対象者]
❶管理職昇進者:2022年には非管理職で、2023年に管理職になっている人(n=130)
❷非管理職のまま:2022年・2023年ともに非管理職で、かつ35~54歳の人
*管理職昇進者の年齢の約8割が35~54歳であるため、比較対象として年齢を限定(n=7,232人)
※ここでいう非管理職とは一般社員・主任・係長。課長は管理職
労働時間は増・減の二極化
週労働時間が増えた人の合計は「非管理職のまま」の22.1%に対し、「管理職昇進者」は27.3%と労働時間が増える傾向がある。1~5時間増加する人が17.2%と最も多い。一方で、減った人の合計も「管理職昇進者」のほうが多い(28.0%)。管理職への昇進によって仕事内容や働き方が変わり、労働時間にも変化が生じるとも考えられそうだ。
仕事はレベルアップする
仕事が「レベルアップした・計」の割合は、「管理職昇進者」のほうが多く(45.3%)、「非管理職のまま」の21.8%を大きく上回る。「レベルアップした・計」のうち「大幅にレベルアップした」の数値を見ても、「管理職昇進者」は約10%、「非管理職のまま」は約2%と、その違いは鮮明だ。
本来の担当業務が増える
上図は、本来の業務、周辺的な雑務、手待ち時間の3種の業務が、自身の仕事全体を100としたときそれぞれが何%を占めているかを回答してもらったもの。平均値は、両者とも2022年と2023年では大きな変化がないように見える。ただ、本来業務が占める割合が増えた人は「管理職昇進者」が40.8%と、「非管理職のまま」の34.5%を超える結果となった。
幸福度が高かった管理職昇進者が下がる
上図は、2022年(両者とも非管理職のとき)の幸福度を5件法で見たもので、「管理職昇進者」のほうが昇進前にも幸せ層(5・4点)が多いことがわかる。2022年から2023年にかけての変化を見ると(下図)、幸福度が下がる人の合計は「管理職昇進者」が17.9%と少し多く、特に2022年の幸せ層から普通層(3点)、不幸層(2・1点)に変化する人の合計が14.8%と、「非管理職のまま」の合計の10.0%よりも多い。もともと幸福度が高い管理職昇進者のほうが下がる傾向が強かった。
疲れやすく気が張り詰めている
ストレスに関する質問で2022年から2023年の変化を見たところ、「管理職昇進者」に特徴が表れたのは「ひどく疲れている」「気が張り詰めている」の2項目。2022年に「なかった」から2023年には「あった」に変化する割合は、「ひどく疲れている」で14.7%、「気が張り詰めている」で13.8%と、いずれも「非管理職のまま」を上回った。
年収の高い人がますます増える
平均年収では、非管理職のとき(2022年)から両者に130万円ほどの差がある。管理職になるような人は、昇進前から年収が高い。年収が増えた人の割合は「管理職昇進者」で58.8%、年収の増加額の平均は約50万円と、「非管理職」を上回っている。
Text=入倉由理子