Works 188号 特集 インドの人材力

苦戦する製造業のインド人材確保。日本へのインターンなどで早期離職防ぐ

2025年03月21日

コンサルティング業界やIT業界と比較すると、製造業での人材獲得競争はより厳しいといわれる。金属加工機械メーカーのアマダのインド法人AMADA(INDIA)の、採用や育成に関する課題と対策を聞いた。


2000年、AMADA(INDIA)はアマダの販売・サービス拠点として設立された。ベンガルールに本社とテクニカルセンター、職業訓練センターを置き、チェンナイ、ハイデラバード、ムンバイなどに営業とサービスエンジニアを配置している。約150人の社員のうち、管理部門などの3人の日本人を除けば全員がインド人だ。「営業・サービスを中心に、大学や専門学校で電子工学、機械工学を専攻し、専門知識を持つ人材を採用します」と、同社社長のニラジ・セス氏は話す。

新卒採用はキャンパスリクルーティングが中心で、卒業予定者を事前にレジュメなどでスクリーニングし、その後、数回面接するという流れだ。日本企業の知名度はインドでそれほど高くないが、「学生が知っているのは、Google、ソニーなど超有名企業のみ。日本企業だけが不利なわけではない」(セス氏)。まずは、同社がインドでどのような技術を使い、どんな貢献をする会社なのか学生たちの理解を促すよう選考時に努めるという。

近年、同社が力を入れているのはインターンシップによる選考だ。約6カ月間のトレーニング期間に、知識レベルや意欲などを判断する。

「就職活動時、学生のほとんどは自分のやりたいことに意識的ではありません。仕事が自分にとって面白いかどうかを試し、AMADA(INDIA)で成長したい、エンジニアとしてキャリアを続けたいという人を採用したいと考えています」(セス氏)

しかし、意欲的で優秀な人材を採用するほど、若手人材の早期離職という課題が生じる。ITの中心地ベンガルールではIT企業の人気が高く、製造業から移っていく人も多い。報酬の水準も製造業は比較的低く、日本に合わせたゆっくりとした昇給も人材の確保にはマイナスに働く。これに対して、AMADA(INDIA)は対策を講じている。

1つは中途採用の強化だ。サービスエンジニアは顧客との重要な接点であり、技術を理解して活躍できるようになるには数年かかる。「技術が身についた頃に辞められたら教育投資の甲斐がありません。既に技術を持った人材に即戦力として活躍してもらうことも重要です」とエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントの今井秀久氏は説明する。

新卒入社者にはトレーニングの短期化も試みる。「日本では初期トレーニングに半年かけますが、インドでは1カ月で商品の理解をした後、すぐに配属先でのOJTに移り、短期間で一定のスキルを身につけられるようにしています」(セス氏)

また、優秀な人材にとどまってもらうために、日本本社やアジアパシフィック地域での研修の機会を提供している。「研修を受けた社員のエンゲージメントは確実に上がりますし、それを見たほかの社員にも『いつかは自分も行きたい』と波及します。本社の高い技術力を学ぶことによる技術力の向上と、二重の効果があります」(今井氏)

インド人がキャリアのラダーを上っていくこともできる。「経営マインド、論理的思考力、バランス感覚などの基準に照らし、経営リーダーとして期待する人材は人材育成委員会で議論して、ローテーションで経験を積んでもらいます。長く働き、会社とともに成長したいと考える人材をいかに作れるかがカギになります」(セス氏)

Text=入倉由理子 Photo=浜田敬子

ニラジ・セス氏

AMADA(INDIA)
プレジデント

今井秀久氏

AMADA(INDIA)
エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント