Works 183号 特集 Z世代 私たちのキャリア観 自分らしさと不安のはざまで

グループ横断で面白い人をつなぎもっとワクワク働ける会社に──NTTグループO-Den

2024年04月26日

O-Den 共同代表 NTTファシリティーズ 経営企画部 経営企画部門 企業イノベーション推進担当 山岸宏輔氏(写真左)
O-Den 共同代表 NTT DX パートナー プラットフォーム ビジネス部 ビジネスデザイナー 高橋慶充氏(写真中央)
O-Den 副代表 NTTコミュニケーションズ ビジネス ソリューション本部 第四ビジネス ソリューション部 流通・サービス・エネルギーグループ平城 駿氏(写真右)
Photo=伊藤 圭

若手の有志団体のなかでも、着実に拡大・継続しているのがNTTグループの「O-Den」だ。
ネットワークは年々拡大し、意欲ある若手が集まって新しい取り組みが生まれている。
世代を超えた交流も深まっており、いまや経営層からも認められる存在になっている。

NTTグループの若手社員が立ち上げた有志団体「O-Den(おでん)」。ユニークな名前の由来は、「One」「電電」「縁(en)」をハイフンでつないだものだ。2015年の発足以来、さまざまな活動を通じてネットワークを拡大。累計の参加者は、5000人を超えた。

共同代表を務めるNTTファシリティーズの山岸宏輔氏は、入社6年目。O-Denのミッションについて、「我々が問いかけているのは、『ワクワク働いていますか』ということ。NTTグループ33万人を縦横斜めにつなぐことで、自分を変え、会社を変え、社会を変えることを目指しています」と説明する。山岸氏自身も4年前、日々の仕事に閉塞感を持っていたとき、O-Denの活動を知って参加したという。

山岸氏とともに共同代表を務めるのが、NTT東日本に入社して5年目の高橋慶充氏。新入社員研修で出会い、魅力的に感じた先輩が、たまたまO-Denの創設者だった縁で参加を決めた。副代表の平城駿氏はNTTドコモに入社して3年目。コロナ禍で入社してすぐフルリモート勤務に突入し、社内につながりが欲しくて試行錯誤し、行き着いたのがO-Denだった。

代表・副代表に加え、グループ主要各社から手を挙げたメンバー15~20人が運営事務局として活動しているが、ゆるく関わっているメンバーは常時50人ぐらいになる。

毎年1つは大きなイベントと、次の世代に向けた新入社員歓迎会を開催することは決めているが、それ以外の活動の多くは各メンバーの問題意識や興味・関心から企画が生まれている。たとえば「営業の成績が上がらない」と悩んでいるメンバーがいたら、「そのもやもやをみんなで解決する企画を考えてみよう」といった具合だ。高橋氏は、「自分のやりたいこと、伸ばしたいスキルをダイレクトに活動に反映できる。自分の成長と直結している実感が持てるのが有志活動の魅力」だと語る。

これまでにグループの垣根を越えた交流の場を作る「ネットワーキング」、失敗を恐れず挑戦できる「ビジネスコンテスト」、大人が本気で遊ぶをコンセプトとした「エンジョイ会」など、硬軟取り混ぜた分科会が立ち上がり、イベントやワークショップを開催している。

経営層からも一目置かれる存在に

若手主体の有志活動とはいえ、O-Denはグループ内での存在感を確実に高めてきた。

たとえば、コロナ禍が始まったばかりの2020年には、初めてオンラインで新入社員歓迎会を開催。有志活動ならではのフットワークの軽さで、会社の人事よりも早く、オンラインで人とつながる場づくりに挑んだ。

「O-Denの活動のなかで生まれたアイデアが事業化されたり、O-Denでつながったメンバーが共同で事業を提案するなど、本業にも貢献しています。『ワクワク働く』というマインドに変わったことで、自分の業務のなかでも新しい領域を開拓するなど、副次的な効果も大きいですね」(山岸氏)

そうした成果が生まれるのに伴い、マネジメント層にも広く認知されるようになってきた。O-Denが企画したイベントには、「若手と触れ合いたい」「自分の経験を役立ててほしい」などの理由で、グループ各社のミドルクラスや経営層が参加することも多い。

2022年には、会社が新しい働き方を打ち出したタイミングで、当時の日本電信電話社長(現会長)の澤田純氏を招き、Well-beingをテーマにしたイベントをオンラインで開催した。経営トップと参加者が率直にディスカッションできる対話型イベントで、グループ64社、1600人以上が参加するほど好評だった。

1on1も行いビジョンを共有

もともとはわずか9人で始まった活動だったが、少しずつ仲間が増え、輪が広がっていった。運営事務局のメンバーに業務事情やライフステージの変化があっても、若い世代が途切れず入ってくるので、柔軟に役割交代して代替わりできている。

「越境活動の始め方」をテーマにしたイベント
2023年6月に開催された「越境活動の始め方」をテーマにしたイベント。約200人が東京・大手町のNTTコミュニケーションズのコミュニケーションスペースに集まった。同年には大阪会場でも開催するなど、地域での自律的な活動も増えている。Photo=O-Den提供

「入社2年目でイベントのチームリーダーを務めましたが、自分に何が足りないかを知ることができ、責任ある役割を果たした経験はとても貴重でした。副代表に手を挙げたのは、もっと貢献し、自らの成長にもつなげていきたいからです」(平城氏)

入社2年目でイベントのチームリーダーを務めましたが、自分に何が足りないかを知ることができ、責任ある役割を果たした経験はとても貴重でした。副代表に手を挙げたのは、もっと貢献し、自らの成長にもつなげていきたいからです」(平城氏)

現在の体制は既に4代目だ。上の世代が役職を退いても、活動には継続して参加しており、現メンバーのサポートにあたることが多い。

発足から時間が経過すると熱量をキープできず活動が停滞してしまう有志団体も少なくないなか、O-Denが確実に成長できている秘訣は、動機付けの強さにある。運営体制や活動内容には柔軟性を持たせつつも、ビジョンの共有は徹底している。

興味を持った人には、O-Denが目指すものや活動を説明した後、事務局運営メンバーと1対1で話す場を作り、O-Denで何をやりたいのか、どういう会社にしたいのかをとことん問いかける。結果的に「やりたい」という思いの強い人だけが入っている。さらに運営メンバー間でも定期的に1on1を行っており、「志を持って行動を起こすことで会社を変え、社会を変えていこう」という熱い思いを日頃から語り合う。こうした努力が、「ゆるい」組織ながらも求心力を持ち続けることにつながっている。

今後についても具体的な目標を定めず、一人ひとりの挑戦を大事にしながらビジョンの実現を目指していく。「会社を変える、社会を変えると掲げているので、もっと影響力のある存在になりたいという思いはあります。今は会社から自由にやらせてもらっている感じですが、O-Denとして会社へ働きかけたり、会社からもO-Denという枠組みをうまく活用してもらったり、よりよい会社に変える取り組みをさらに加速させていくことができればうれしいですね」(高橋氏)

Text=瀬戸友子

高橋慶充氏

O-Den 共同代表
NTT DX パートナー プラットフォーム ビジネス部 ビジネスデザイナー

山岸宏輔氏

O-Den 共同代表
NTTファシリティーズ 経営企画部 経営企画部門 企業イノベーション推進担当

平城 駿氏

O-Den 副代表
NTTコミュニケーションズ ビジネス ソリューション本部 第四ビジネス ソリューション部 流通・サービス・エネルギーグループ

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