ソースコン参加報告(2)
リンクトインに頼るソーシング、頼らないソーシング
リンクトインに頼るソーシング、頼らないソーシング
ソーサーにとって、プロフェッショナルが経歴を詳細に開示しているリンクトインは、候補者を発掘する際に必要不可欠なツールのようだ。ソースコンがソーサー600人弱に実施した調査でも、リンクトインへの依存度が如実に表れている(図表1)。
プロフェッショナルを検索するだけではない、リンクトインの用途
リンクトインは複数の有料サービスを提供しており、その中でもリクルーター向けのアカウント、Recruiter Liteでは他のリクルーティングチームメンバーと協働作業ができるようになっていたり、個人的につながっていないユーザーのプロフィールでも確認できるといった機能がある。主にリンクトインでソーシングをしていても、数々の機能を知らないか使いこなせていないソーサーが多いようで、リンクトインの活用法を説明するセッションはさまざまなコンファレンスで開催されている(例、SIAエグゼクティブフォーラム)。今回のソースコンでは、ペプシコのソーシングリーダー、ジム・シュナイダー氏が社内の戦略チームの良きタレントアドバイザーになるために役立つリンクトインのツールを紹介した。
<市場調査>
有料ユーザーならば無料で利用できる「プレミアム・インサイト」では、リンクトイン上の情報を基に特定の会社について調べられる。たとえば、従業員数、部門別トレンド(新規採用者数の経時的な変化から、成長中の部門かを判断できる)、その会社を12カ月未満で離職したVP以上の社員、求人数、各従業員のアカウントなど。ソーシング前の市場調査だけでなく、会社が新規市場に参入する際にも役立つツールだ。
<該当するユーザーたちのデータをグラフ表示>
「サーチ・インサイト」というツールでは、場所や業種など条件を設定して検索をかけると、それに当てはまるユーザーたちの現在と過去の雇用主、経験年数、学歴、居住地域といったデータがグラフで表示される。さらに、グラフだけでなく個々のユーザーのプロフィールも確認できるため、候補者を発掘しやすい。
<過去の応募者を優先表示>
リンクトインには基本的なCRM(候補者関係管理)機能もある。その中でも特に便利な機能は、会社で使用しているATS(応募者追跡システム)をリンクトインが相互認識するもので、ATSにすでに入っている候補者がリンクトイン上で強調されて表示されるという。つまり、以前求人に応募して何らかの理由で採用に至らなかった候補者のその後の動向がわかる。さらに、一度応募してきた人材であれば自社に興味を持っているはずなので、今後の求人にも興味を示す可能性が高い。
ただし、リンクトイン上のデータはあくまでも同社の所有物なので、レポーティングとデータのエキスポートはできない。
リンクトインに頼り過ぎず、募集職種に応じたソーシング経路を考える
一方、リンクトインばかりに頼らず、常に自分でソーシング戦略を考え進化させていかなければ、時代の流れに取り残されそのうち候補者を見つけられなくなると釘を刺すベテランソーサーもいる。また、リンクトインに登録している人材は職種に偏りがあり(主にホワイトカラー)、求人の職種に応じて検索場所を変えなければならない。
マーク・トートリチ氏(Transform Talent Acquisition創設者)は、職種別にリンクトイン以外でソーシングする方法を紹介した。まず、グーグル上に大量のレジュメが存在する。グーグル検索に向いている職種はリンクトインと似ており、ソフトウェアエンジニア、ウェブ開発者、ウェブデザイン、営業、マーケティング、低レベルの財務職、フリーランスなど。ただし、短期契約をつなげて長く働いてきた人のレジュメが多いので、正社員職には適切でないかもしれないそうだ。
ブルーカラー職の求人であれば、イエローページやグーグルマップ、食べログのようなレビューサイトを使い、職場に電話をかけ、その人を直接呼び出すという手がある。専門職種の場合は、その職種に特化したサイトを利用してみる。たとえば、放射線技師であれば、医療従事者の登録番号を検索できるサイトの「NPI NO」など。エンジニアやディベロッパーはGitHubで探せることはよく知られているが、職務名を入れたブール検索ではさほどヒットしない。GitHubに職務名を登録する人が少ないからだ。開発しているものや使用する言語で検索すると、検索結果数は飛躍的に上がる。
ソーシング時のちょっとしたコツ
ステイシー・ゼイパー氏(Tenfold創設者)は自身がソーシングするときのコツとして、次を紹介していた。
- グーグルやリンクトイン上でブール検索を使用して候補者を探すとき、まずは必須条件も歓迎条件もすべてANDでつないで、全条件を満たす理想の候補者がいるかを試す。見つからなければ、ANDを1つずつORに変えていき、条件を緩和していく
- 潜在的候補者へ返信を促す3ステップとしては、
最初のメッセージ…短くフレンドリーに、新しい求人が出て、あなたに興味があるので話したい、と送る。
数日後…面接が開始し、あなたにこの機会を逃してほしくなくて、また連絡している、と様子を見る
さらに数日後…「今回はありがとうございました。今後も連絡は取り合っていきましょう」とシンプルに引き下がる。
リクルーターやソーサーからの連絡を敬遠する候補者もいるので、候補者と同職種の従業員や採用マネジャーから連絡してもらうと、反応が来る場合がある。注意としては、採用マネジャーのリンクトインプロフィールを充実させておくこと。候補者は高い確率で採用マネジャーのアカウントを確認する。
探偵のごとく、候補者のすべてを知ろうと根気強く調査を続けるのがソーサー
目ぼしい候補者を特定しても、連絡先がわからない場合や、入手したものとは別の連絡先を知りたい場合がある。アマゾンのテクニカル・リクルーティング・ソーサー、ナンシー・ドーン氏は、通常の方法では見つけにくい候補者の探し方を、実例を使って伝授した。
【実例1】
- GitHubで候補者のユーザーネームがわかったら、そのユーザーネームで検索をかける
- GitHubのユーザーネームに@gmail.comをつけて検索をかける
- 2で該当がない場合、GitHubのユーザーネームに適当な文字や数字をあわせて@gmail.comをつけて検索をかける
- 3で結果が得られたら、そのgmailを照合する
【実例2】
- 候補者の情報をツイッターで検索する
- ツイッター上のユーザーネームがわかったら、Connectifier(※)でそれにgmail.comをつけて検索をかける
- 2で見つからなかった場合は、ユーザーネームに適当な文字や数字をあわせて@gmail.comをつけてさらに検索をかける
さらに、ツールを使って得た連絡先にコンタクトを試みても候補者から反応がない場合、候補者の住所や電話番号がわかっていれば、偽のピザデリバリーなどを試みて接触するという。ソーサーは時には探偵のごとく相手を追跡するようだ。
リンクトイン+αで人材獲得競争に打ち勝つ
ソーシングの元となるテクニックは図書館のデータベース検索技法だが、ソーサーによっあらゆる場所からあらゆるツールで人材を探していることがわかる。リンクトインを開始地点としながら、そこでは見つからない人材をも見つけようとしている点から、企業間で激しい人材獲得競争が起こっているとうかがえる。
次回は、ソーシングで役立つツールをまとめて紹介する。
※ Connectifierで人を検索すると、インターネット上の情報からその人のメールアドレス、SNSアカウント、運営するウェブサイトなどが一覧に表示される。ソーサーは、対象人物についてレジュメ以上のことを知ることによって個人的なメッセージを作成でき、その人が最も頻繁に利用するアカウントへメッセージを送ることができる。