ソーシャルメディアのインフルエンスはリクルーティングの一部

2025年01月29日

SourceCon Fall 2024 詳細

人材発掘のスペシャリストであるソーサーが集うSourceConが2024年10月22日、23日の2日間、カリフォルニア州サンディエゴの会場とオンラインのハイブリッドで開催された。基調講演、同時進行で行われるテーマ別講演、パネルディスカッション、AI製品の紹介、ソースコンハッカソンなどセッション数は20、スポンサー数は15社だった。このコンファレンスの司会を務めたのは、主催であるERE MediaのソーシングエディターJim Stroud氏。筆者は1日目に3つ、2日目に5つのセッションに参加した。今回は、初日のコンファレンスで特に興味深かったセッションと内容を紹介する。

1日目のオープニングセッションのタイトルは「インフルエンスこそ新しいソーシングだ(Influence is the New Sourcing)」。リクルーティングとトレーニングを専門とするMount Indie社の創業者であるTommy Weinert氏が、リクルーティングの変遷を説明しながら、次世代で成功するための戦略を示した(図表1)。

Tommy Weinert氏

Weinert氏は、ソーシングとリクルーティングが日々進化していることを強調し、AIなどの新しいテクノロジーを活用することで、管理タスクの負荷が軽減され、リクルーターがより有意義な人間関係の構築に集中できるようになると述べた。また、リクルーターはAIに適応し、データに基づいた戦略を立て、マーケティングに精通する必要があると指摘した。さらに、ソーシャルメディアのインフルエンサーが候補者の就職活動に影響を与えていることを述べ、今後のリクルーティングの成功には、信頼とインフルエンスを築くことがますます重要になると強調した。

今回のコンファレンスではオープニングセッション以外でも、「インフルエンス」「インフルエンサー」という言葉が頻繁に登場した。ソーシャルメディアの影響力が非常に大きく、そのインフルエンスがソーシングの新しい形になる時代だと実感した。

図表1 リクルーティングの変遷 

リクルーティングの変遷

出所:Tommy Weinert, “Influence is the New Sourcing” SourceCon Fall 2024, October 22, 2024, San Diego.

コスト削減のケーススタディ

次のセッションは「ソーシングでどのようにして数百万ドルのコスト削減を実現したのか(How Sourcing Saved Us Millions)」というタイトルで、BECU(※1)社のタレント・アクイジション部門シニアマネジャーであるMarvin Smith氏が、コスト削減のケーススタディを紹介した。Smith氏が入社した時期に大規模なリストラクチャリングが行われ、タレント・アクイジション・チームには、100万ドルのコスト削減、古い認識の見直し、リクルーティングの質向上という課題が課せられた。目標達成に向けて、いくつかの調査を実施した結果、リクルーティングの品質が不安定で充足までの時間が長いという問題が明らかになった。そこでチームは、社外リクルーターやコンティンジェント人材の利用、オートメーションの導入、AIツールやソーシャルメディアの活用を積極的に行い、これらの問題を解決しようと努めた。

さらに、チームは、100万ドルのコスト削減を目指して「プライオリティ・ワン」キャンペーンを実施した。このキャンペーンは、充足までの時間を短縮することを目標とし、最初のソーシングから最終候補者の選定までを18営業日で完了することを目指した(図表2)。このキャンペーンは予想を上回る成果を上げ、最終的に1200万ドルのコスト削減を実現した。

図表2 BECUの「プライオリティ・ワン」キャンペーン

BECUの「プライオリティ・ワン」キャンペーン


出所:Marvin Smith, “How Sourcing Saved Us Millions - a Case Study” SourceCon Fall 2024, October 22, 2024, San Diego.

AIツールを使いこなす

Notion so

eq app出所:Greg Hawkes, “To AI, or NOT to AI, What was the Question? A Look at Sourcing Using AI Tech and the Forgotten Websites of Yesteryear” SourceCon Fall 2024, October 22, 2024, San Diego.

次に「AIテクノロジーと忘れられた過去のウェブサイトを使ったソーシング(A Look at Sourcing Using AI Tech and the Forgotten Websites of Yesteryear)」を紹介する。スピーカーはM&T Bankの副社長兼プリンシパルソーシングリードであるGreg Hawkes氏。Hawkes氏はソースコンではお馴染みのスピーカーで、毎回最新のAIツール情報を参加者に共有するのが恒例になっている。今回も、リクルーティングで活用できる効果的なツールが紹介された。ツールには、ChatGPT、GPT 4.0、Custom GPTs、Gemini、Bing、 Bard、Perplexity、Llama、Claude、Midjourney、DALL-Eなどがあるが、特にNotion.soとEQ.appを推奨していた。Notion.soはマーケティング資料や採用コンテンツの作成に便利で、パンフレットの作成が容易でカスタマイズしやすく、ビデオや外部コンテンツを追加して魅力的なページを作成できる。利用は無料。EQ.appはリクルーター向けに設計された新しいAIツールで、特定の職務と場所のクイックリンクとプロファイルを提供する機能が便利だという。

Hawkes氏はスピーチの中で、連絡先情報を見つけるにはLISTSERVやLinkedInのようなプロフェッショナルなネットワーキングサイトを活用すると効果的であること、検索の種類に応じて適切なツールを使用する必要があること、AI主導のソーシングプラットフォームへ移行することの重要性を強調した。具体的で役立つアドバイスが満載のセッションであった。

(※1) BECUはワシントン州にあるボーイング社従業員信用組合

TEXT=Keiko Kayla Oka(客員研究員)

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