Z世代を引きつけるキーワードはインフルエンサー
人材発掘のスペシャリストであるソーサーが集うSourceConが2024年10月22日、23日の2日間、カリフォルニア州サンディエゴの会場とオンラインのハイブリッドで開催された。今回は、2日目のコンファレンスから特に興味深く感じたセッションと内容を紹介する。
Z世代タレントによるZ世代リクルーティング術
2日目のオープニングセッションのタイトルは「ソーシャルメディアとインフルエンサーをZ世代のタレント・ソーシングのために利用する(Harnessing Social Media and Influencers for Gen Z Talent Sourcing)」。スピーカーは、候補者のエンゲージメントや多様な人材のリクルーティングをサポートする会社TapInを20代で創業したMilimo Banji氏。Banji氏は、EasyJetやBritish Airwaysでソーシャルメディアを活用して求人応募数を増やした事例を紹介し、インフルエンサーを活用した実践的なリクルーティング術を共有した。これは2日間のコンファレンスで、筆者が最も興味深いと感じたセッションであった。
Banji氏はまず、Z世代の行動に影響を与えるインフルエンサーに関するクイズを行い、参加者がどれだけインフルエンサーについて知っているかを確認した。約200人の参加者全員が立った状態でクイズが始まり、著名なインフルエンサーの写真を順番に見せ、知っている場合は立ったまま、知らない場合は着席するというルールだった。5人目のインフルエンサーの写真を見せた時点で、立ったままだったのはわずか3人であった。この結果から、多くのリクルーターやソーサーがミレニアル世代であり、Z世代とは異なり、インフルエンサーにあまり関心がないことがわかった。
その後、Banji氏はZ世代を対象とした調査結果(※1)を紹介し、彼ら・彼女らが職場で求める6つの基本事項を提示した。それらは下記のとおりである。
- 雇用の安定(Z世代の76%が雇用の安定を優先)
- スキル開発の機会(Z世代の87%がスキル開発の機会を重視)
- 柔軟な働き方(Z世代の80%がリモートワークを希望)
- 持続可能なワーク・ライフ・バランス(Z世代の78%がワーク・ライフ・バランスを重視)
- 企業の価値(Z世代の65%が企業の価値と自身の価値の一致を重視)
- 競争力のある報酬と透明性(Z世代の80%が退職金の有無を参考にし、50%が家族を経済的に支えている)
これらの基本事項を踏まえ、Z世代人材を引きつけるための戦略として以下を提案した。
- Z世代の注意を引く:Z世代の言語を理解し、企業ブランドを明確にし、定期的にソーシャルコンテンツを更新する。
- Z世代の視聴者を理解する:Z世代が学べて使えるプラットフォームを作り、彼らのコミュニティに耳を傾ける。
- Z世代が利用しているプラットフォームを知る:YouTube、Instagram、TikTok、Snapchatなどを効果的に活用する。
- 真実であれ:一般ユーザーが作ったコンテンツを使い、仕事の舞台裏を見せ、多様性と包括性にコミットしていることを示す。
- インフルエンサーと協力する:Z世代の78%がインフルエンサーをフォローしていることを考慮し、彼らの文化とつながり、ニッチコミュニティにもアクセスする。
Banji氏の指摘や提案は非常に説得力があり、リクルーティングにおいてインフルエンサーを活用することの重要性を実感させるセッションだった。
新しいAIツールの紹介
1日目の参加報告でもAIツールを紹介したが、2日目のコンファレンスではソーシングコンサルタント歴25年のCielo Talent社のRonnie Bratcher氏が、「ソーシングAIサーチ・スタックを構築する(Building Your Sourcing AI Search Stack)」というタイトルのセッションで、デモを交えながら使いやすいAIツールをいくつか紹介した。
その中の1つはExaで、生成AIベースの検索エンジンである。ユーザーの検索意図を理解し、それに基づいて関連する結果を提示する。ニュース、新聞、PDF、ブログ、ポスト、個人サイトなどをフィルターにかけることができ、結果をフィルタリングしたうえで、プロファイルの要約を示す。自然言語検索機能が優れており、無料トライアルも可能である。
もう1つはオープンソースのマシーンラーニング・プラットフォームH2O.aiである。HadoopとSparkのビッグデータフレームワークをサポートし、Python、Java、Scala、Json環境などを統合する。
わかりやすい内容のセッションが増えたソースコン
2017年にはじめてソースコンに参加した時は、人材の発掘に特化したソーサーの役割を理解するのがやっとで、テクノロジーに詳しくない筆者には、ソーサーが早口でまくしたてるツールの特徴や短時間に詰め込んだデモの説明はまったく頭に入ってこなかった。当時のコンファレンスは、専門性の高い内容のセッションが多く、初心者向けのものは少なかったように思う。今回のコンファレンスでは、初心者でも理解しやすいセッションが増えたと感じた。次回のソースコンがさらにわかりやすくなることを期待している。
(※1) Banji氏がセッションで引用したのは Handshake Global Gen Z Workplace Survey
TEXT=Keiko Kayla Oka(客員研究員)