人事向けアプリカント・トラッキング・システム

人事向けの応募者追跡システム

2017年05月22日

企業人事向けATS
代表的なサービス

アプリカント・トラッキング・システム(以下ATS)は、「応募者追跡システム」、「採用管理システム」などと呼称されることもある。従来の採用プロセスにともなう事務作業やワークフローを管理するシステムである。

たとえば、作成した求人情報を一括で自社の採用サイトや各媒体に掲載できる。また、アルゴリズムを使ったレジュメの自動スクリーニング、有力候補者との面接設定の自動配信メール、採用の進捗状況の社内共有と一括管理、自社採用サイトの閲覧者の追跡や、SNSで特定した個人情報取得および追跡などさまざまなプロセスに対応している。

人事との関連性

欧米の中規模企業の約50%以上、さらにフォーチュン500社のような大企業のほぼ90%以上がATSを使用している。採用にかかる時間とコストは膨大で、その対策として人材紹介会社の利用を減らし、自社のリクルーターを活用して最大限の効果を得ようとしている。これらの機能をいかにテクノロジーで代替できるか。人事のニーズに合わせてATSのプラットフォームが開発された。ATSは、HRIS、HCM、HRMSといった人事管理システムに統合されるものが多い。

ATSは大量採用を実施する企業の人事に必要不可欠なサービスである。しかしテクノロジーが成熟し複雑化する一方で、企業の多くが既存のソフトウエアに不満を抱いている。ATSがユーザーの要望に応えられるには時間を要する。

サービス例

  1. Lever:ATSとCRMに特化、社内全体で採用に取り組みやすいシステム
    採用に関する情報を社内の関係者(リクルーター、採用マネジャー、面接者)で共有できる。面接を設定すると、担当者にレジュメが添付された面接スケジュールが自動で送られる。従業員の働き方、おもしろい社内イベントや社内の様子を候補者に公開するといった、企業ブランディングを構築する機能も充実している。大量の人材が早期に必要なスタートアップ企業向けのシステム。
  2. iCIMS:業界大手。多くの米国企業が利用
    他社のATSとの差別化では、コンサルティング、トレーニング、労働力計画、カスタマーアドバイザリーサービス、テクニカルサポート、グローバル化導入など、企業のニーズに合わせてカスタマイズできるサービスを提供。新入社員はオリエンテーション(社長からのメッセージ、企業のビジョン、経費精算方法など)を随時オンデマンドで確認できる。

ビジネスモデル(課金形態)

企業がソフトウエア利用料金をサービス事業者に支払う
企業は通常SaaS形式でATSを利用するが、ソフトウエアを導入して年間使用料をサービス事業者に支払うオンプレミスタイプもある。

今後の展望

市場における導入率は高い。企業は常に採用プロセスを管理する必要があるため、ATSの市場の見通しは明るいといえる。ATSはクラウドベースが主流で、求人情報の掲載からレジュメの管理、面接の日程調整、採用関係者との進捗状況共有まで採用プロセス全体の管理をサポートする。最近は、採用プロセスの効率性をトラッキングするアナリティクス機能、SNSを利用して求人情報を拡散したり候補者を発掘する機能などが追加されており、ダイレクトソーシングに特化したシステムの開発が進んでいる。ATSは日々高度化し、進化の速度を上げている。しかし、最近ではユーザーがそのスピードについていけないと感じている。

グローバルセンター
村田弘美(センター長)
鴨志田ひかり(客員研究員)
石川ルチア

HRテクノロジーマップ

※クリックすると拡大 出所:TTL "Talent Acquisition Technology Ecosystem"を基に再分類し筆者作成(2016.10)

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