ソースコン参加報告(1)

人材発掘専門家“ソーサー”の10年間の進化

2018年01月22日

人材発掘専門家"ソーサー"の10年間の進化

item_trend_sourceconfall17sourcer_column_trend12_dg01.jpg

ソーサーは、人材を採用するプロセスで最も初期の段階を担当する。求人要件を満たし、会社の風土にマッチする優秀な人材を発掘する業務である。発掘した人材は必ずしも求職中、あるいは自社に興味を持っていないので、どのように優秀な人材を見つけて自社に応募させるかのプロセスやテクニックをソーサー同士で共有するのがソースコンという場である。

今年はソースコン10周年ということで、この10年間のソーシング業界の移り変わりを振り返る内容が多かった。レポート第1回目では、平均的なソーサーのプロフィール、ソーシングのプロセス、ソーサーに必要なスキル、歴史を紹介する。

平均的なソーサーは、大都市郊外に住み通信会社に勤める女性

item_trend_sourceconfall17sourcer_78588688fbd430634604f2aad737cbd4-225x300.jpg

ソーサー600人弱を対象に実施したアンケート調査によると、米国で平均的なソーサーのプロフィールは以下であった。

  • 女性
  • 企業のソーサーとしてフルタイム勤務(リクルーターではない)
  • ソーシング経験4年前後
  • 大都市郊外に居住
  • 年収5万ドル未満
  • 通信会社勤務
  • 年間121件以上の求人を埋める
  • 常時6~10件の採用要請を抱える

ソーシングのプロセス

ソーサーの定義はまだ確立しておらず、企業によってその責任範囲や業務プロセスは異なる。ここでは、ディズニーのセッション資料を基に、一般的で基本的なプロセスを紹介する。

item_trend_sourceconfall17sourcer_column_trend12_dg02_2.jpg

ソースコン歴代編集長が語る、ソーサーが持つべき普遍的なツールとスキル

item_trend_sourceconfall17sourcer_column_trend12_dg04.jpg

オープニングセッションでは、前述のソーサーを対象にした調査結果を確認しながら、歴代のソースコン編集長4人がパネリストとして自身の考察を述べた。ソーサー600人弱が考える、時代を超えて大事なもの1位はソーシングツール&テクノロジーだったが(図表1)、パネリストたちの意見は異なるようだ。

エイミーベス・クイン氏(初代編集長)とシャノン・プリチェット氏(現編集長)は、「候補者エンゲージメント」能力の重要さを訴えた。昔、ソーサーは人材サーチに特化していて候補者と話すことはなかった。だが、今は候補者に電話やメールで接触を試み、返信してもらえるようなコミュニケーション能力が求められる。ソースコン会場でも、出席者の中で「厳密にソーシングのみをしている」ソーサーは約5%に過ぎなかった。

ランス・ホーン氏(2代目編集長)は、「ブランディング&マーケティング」に着目した。企業が社会から信頼されて尊敬されているという評判があれば、優秀な候補者の反応を引き出しやすくなるからだ。

item_trend_sourceconfall17sourcer_column_trend12_ph01-300x215.jpg左から、ロブ・マッキントッシュ氏(ソースコン共同創設者)、クイン氏、ホーン氏、ロバーツ氏、プリチェット氏とレスリー・オコナー氏(ソースコン創設者兼初代社長)

ジェレミー・ロバーツ氏3代目編集長)は、「ブール検索」をはじめとするテクニカル能力の高いソーサーは今後も必要だが、オートメーションツールに取って代わられないためには、常に最新テクノロジーにアンテナを張り、よりテクニカルになるよう努力し続けなければならないと警鐘を鳴らした。そして、十分にあるデータから求人案件に興味を示すであろう人材を見極められる、「メトリクス&データアナリティクス」スキルの価値が出てくると唱えた。

4人の共通認識は、現代のソーサーに必要なのは、ある程度のテクニカル能力の維持と高いコミュニケーション能力だった。最新のツールが自分の求める情報を与えてくれるのかを判断できるテクニカルなソーサーを部署に1人置き、採用プロセスの改善点を洗い出せるデータ構築・分析スキルを持つソーサーと、候補者を説得して求人に応募させ、採用・内定承諾まで持っていける交渉力のあるソーサーがいれば、強力なチームになるだろう。

ソーサーの存在が広まり始めたのは約10年前

item_trend_sourceconfall17sourcer_fb2eab231ab4770dd11c0d2906b481ea-300x85.png

ステイシー・ゼイパー氏(リクルーティングコンサルティング会社Tenfold創設者)は、この10年間を振り返るセッションの中で、CareerXroadsによる2007年の採用経路調査を紹介した。同調査によると、ソーサーによるダイレクトソーシング経由での採用は過年度から徐々に増加し9.4%だった。リファラル、ジョブボード、その他に続く第4位である。翌年の同調査で、CareerXroadsが「人材紹介会社の従業員が見込みのある候補者リストを作成するために利用していたツールやリサーチ方法が、企業内の採用部署でも取り入れられてきた」と記述しているように、ソーサーは人材サービス会社出身者が多く、転職して企業の採用部署に入り、一般企業でもソーシングを行うようになったそうだ。

従来、ソーサーは「リサーチャー」と呼ばれることが多く、検索技術を駆使して人材を発掘する仕事に特化しており、直接候補者と接触することはなかった。候補者を特定した後は、リクルーターが面接やその後の選考プロセスを引き継いでいたが、現代のソーサーはリクルーターの仕事を兼ねる人が一般的だという。

あるソーサーの典型的な1日

ゼイパー氏は自身の1日のスケジュールを共有した(下図)。潜在的候補者と直接会話し、適性を判断する電話審査を重視していることがわかる。

item_trend_sourceconfall17sourcer_column_trend12_dg03_2.jpg

ソーサーの価値を理解して活用できれば、会社は市場で優位に立てる

歴代編集長たちを迎えたパネルセッションでは、経営陣や株主はソーシングの価値を見いだせていないという点に触れていた。ソーサーは採用対象の人材の言語を理解するため、会社の採用ニーズに関する主題専門家になり得る。また、巧妙な情報収集技術で競合の人員整理や事業所閉鎖などといった市場情報をいち早く取得できるため、対内外的に役立つ貴重な存在だとクイン氏とプリチェット氏は口を揃えた。

ソーシングの基礎の手ほどきから高度なテクニックの紹介まで

ソーサーのコミュニティは非常に友好的で、スピーカーたちは自身が潜在的候補者へ送るメールの文章やブール検索での演算子の作り方、採用マネジャーに確認する項目など、手の内を詳細に明かしているのが印象的だった。分科会は初心者向けや上級者向けなどのテーマに分かれており、自分に合うレベルのテクニックを学べるようになっていた。

次回は、ベテランソーサーそれぞれが独自に見いだしたコツやツールの活用法を詳しく紹介する。