ドローン撮影で、戸建住宅の屋根外装点検作業や大規模な建設現場の施工管理などを省力化(CLUE)

【Vol.8】CLUE 法人営業部 カスタマーサクセスチーム マネージャー 白鳥 達也(しらとり たつや)氏/法人事業部 マーケティングチーム 萩原 北斗(はぎはら ほくと)氏

2022年12月02日

建設業の現場で働く技能者は約3分の1が55歳以上、29歳以下は約1割と、他産業より高齢化が進み(※)、今後は人材不足がいっそう深刻化する。このためCLUEでは、危険を伴う高所作業のうち屋根外装点検にドローンを用い、作業の効率化・省人化を図ると同時に、従来は高所作業に従事していなかった労働力の活用を見込む。リフォーム業界・建設業界を中心に広がる同社のサービスは働き方をどう変えるのか、法人営業部の白鳥達也氏、法人事業部の萩原北斗氏に聞いた。

(※)出典:国土交通省「建設業の働き方改革の現状と課題」(2021年11月)

点検のためのハシゴや足場の組み立て、撤収作業を削減、見積もりもその場で

周辺サービスを含めたドローンビジネスの国内市場規模は、2019年度に1409億円(前年度比51%増)で、2025年度には6427億円を見込む。2022年度には有人地帯での目視外飛行(レベル4)が実現の見込みで、物流、防犯、農業、点検、土木・建築、空撮など多方面での利用が期待されている。ドローンビジネスを展開するCLUEは「テクノロジーを社会実装し、世の中の不を解決する」ことをミッションとしており、主に建設業界向けにドローンを用いた作業の効率化・省人化サービスを提供している。その1つが、ドローンで撮影した写真やリアルタイム映像を見て主に戸建住宅の屋根外装点検を行う「DroneRoofer(ドローンルーファー)」である。

DroneRoofer(ドローンルーファー)

従来の屋根外装点検従来の屋根外装点検

一般的に戸建住宅の屋根外装点検は、5~10年程度の間隔で実施される定期点検のほか、リフォーム時、台風や大雨などの災害時、中古物件の購入時などに行われている。現在はリフォームおよび中古の戸建住宅市場が活況で、屋根外装点検の需要も高まっているため、人材不足への対応は急務と言える。ただ、建設業の就労人口は減少傾向が続いており、急に人員を増やすのは難しい。同社のサービスを導入して作業の効率化を図りたいという 企業の意向は強く「点検1件あたりの効率をいかに高めていき、家主さんとのコミュニケーションの時間を作り信頼獲得をするか。1日あたりどれだけ多くの案件を効率よく点検し、業績を伸ばすことができるかをみなさん考えています」と萩原氏は言う。

「DroneRoofer」は屋根外装点検のワークフロー全体を効率化「DroneRoofer」はドローンをiPadの画面のタップにより簡単に操縦ができるほか、屋根や外壁の面積計算や報告書の作成などができ、屋根外装点検のワークフロー全体を効率化できる。従来の屋根外装点検の手順と比較すると以下のようになる。

■従来の屋根外装点検と「DroneRoofer」を使う場合の手順の比較
従来の屋根外装点検と「DroneRoofer」を使う場合の手順の比較

従来のやり方では点検に1~2時間ほどかかり、調査報告書や修理費の見積もりは事務所に戻ってからの作成となる。このため、顧客との商談は日を改めて行うことがほとんどとなっている。一方、「当社の『DroneRoofer』なら屋根に上る準備と撤収の時間がなくなり、点検に要する時間も5~10分程度になるため、点検作業全体で時間短縮が可能です。さらに、顧客に屋根や外壁の画像・映像を見せながら状態を説明することで、より信頼が高まるので、工事の提案に対する理解も得やすいと思います」と白鳥氏は効率化のメリットを強調する。

作業の安全性が向上、技能者の活用機会の拡大にも期待

加えて、「DroneRoofer」を使うことで作業の安全性も高めることができる。建設業界では高所作業による滑落事故が多く、2019年の労働安全衛生法改正で、5m以上の高所作業はフルハーネス型の墜落制止用器具の原則使用が義務付けられることになった。しかし、「現場の状況によっては、そうした器具の使用が難しいケースも出てきます」と白鳥氏。

「当社の『DroneRoofer』は、そもそも屋根や外壁に上らないため滑落事故の防止に役立ち、高所作業に慣れていない技能者でも点検が可能になります。これにより、体力に不安のある高齢な方でも知識・経験を活かして屋根外装点検を担当でき、高所作業に従事していなかった技能者の活用も進むなど、人材不足への対応として期待できます」(白鳥氏)

ただ、屋根の浮き、たわみの状況についてはドローンのみでは確認困難で、必要な場合は技能者が屋根に上って調べる必要があり、修理の際にも高所作業は必須となる。その意味で、「DroneRoofer」は高所作業のすべてを置き換えるというより、「これまでは、一度上らないとわからなかった屋根・外壁の状況をドローンで把握し、必要な時に上ることで危険を伴う作業を減らすのが目的です」と白鳥氏は説明する。

「点検作業の時間を削減することで、減った分を顧客とのコミュニケーションの時間に充てるなど、ドローンとの協業で人間にしかできない業務にシフトできます。さらにドローンで得た情報を基に見積もりもすぐに出せるため、顧客とその場で商談も可能です。このように業務の効率化だけでなく、導入した企業に付加価値をもたらす点もメリットと考えています」(白鳥氏)

ドローン普及に向け、機器の導入から運用までを支援

屋根工事や外壁塗装を行う企業は、テクノロジーの導入も進んでいないことが多く、ドローンをはじめとするITツールに詳しい人員がいないことも珍しくない。そこで、同社ではドローンの導入にとどまらず、各社の事業課題を解決するため、業務に関連したサービスをトータルで提供する。ドローン本体の価格は数万円から数百万円と幅があり、利用目的や求める機能など、企業のニーズに合わせて機種選定をサポートする。

同社ではドローンの操作や屋根・外壁の面積計算・報告書作成が可能なiPad用アプリケーション「DroneRoofer」と、ドローン本体やiPadのほか、操縦に必要な許可の申請などすべて揃ったパッケージをサブスクリプションモデルで提供する。また、「DroneRoofer」をユーザーの営業ツールとしてもらうべく、ドローン活用のメリットを活かした営業活動の支援も行っている。ドローン活用のメリットを活かした営業活動の支援も行っている「ドローンの飛行に関する法律も年ごとに変わるような状況です。安心・安全にドローンを活用していただくためにも、タイムリーに情報提供をしていくなど教育面でのサポートも引き続き行っていく予定です」(白鳥氏)

大規模な施工現場では、ドローンが現場監督の“目”に

また、同社ではゼネコンが関わるような大規模な建造物を対象に、ドローンで撮影した画像で施工管理を支援する「ドローン施工管理くん」のサービスも提供している。これは、現場監督が建設中の建物の敷地内を歩き回り、足元の状況や建設作業の進捗などを確認する作業を代替するもの。広い敷地の各所を確認しながら移動すると数時間かかる場合もあるが、「ドローン施工管理くん」を使うことで作業は10~20分程度に短縮ができる。「現場監督が見回る敷地が広いほど効率化のメリットは大きいでしょう」と白鳥氏は言う。

「例えば定期的に同じ場所からドローンを離着陸させ、現場の俯瞰写真、所定の位置から見た定点写真などを継続して撮影すれば、その変化から進捗状況を把握しやすくなります。敷地の中でトラックとほかの重機との動線が重なっているような危険な状態も、ドローンで俯瞰して見るとわかりやすいでしょう」(白鳥氏)

同社ではドローンを現場の技能者や現場監督の“目”の代わりに使い、状況の確認や対応の判断は人が担うという考えがベースにある。こうしたシンプルな取り組みにより、サービスを提供するコストが低減でき、ユーザーは機器やアプリケーションの複雑な操作を覚えずに済む。現場でドローンを活用していく事業者にとっては、導入のハードルを下げることにつながるだろう。

建設現場の情報収集・分析は、ロボットと人の協業が当たり前の時代へ

これまで同社では、屋外からの画像・映像撮影で作業の効率化・省人化を図ってきた。今後は同様のサービスを住宅内にも広げ、住宅の床下で自走式ロボットを走らせ、撮影した画像・映像で床下点検を行う事業も検討している。

「人が直接床下に入って検査することは、衛生面でも望ましくありません。そうした点をロボットとの協業でクリアできれば、作業の効率化とともに、人材不足の解消にも役立つと考えています」(白鳥氏)

白鳥氏、萩原氏とも、建設業界の人材不足の解消には課題が多く残されていると考えているが、ロボットとの協業はそうした課題の解決の一助になると話す。

「細かな技術が必要な工事など、人が作業する分野はどうしても残るでしょう。しかし、現場での情報収集やその一次分析といった部分では、ドローンをはじめロボットとの協業による効率化・省力化が当たり前になってくると思います」(白鳥氏)

ドローンの飛行については法律の規制が整備される段階にあり、これから建設現場でどの程度活用できるかは不透明な部分もある。しかし白鳥氏と萩原氏は、「建設に関わる業務ではDXによる生産性向上が求められており、法制度も先端テクノロジーを積極的に活用できる方向に整備されてきています。実際に、ここ数年でドローンの活用は進んでいることを実感しています。建設業界には課題がたくさんあり、ドローンやその他のロボットが登場するなど、ロボットと協業する流れは止まらないと思います」と建設業界の将来を予測している。

(聞き手:坂本貴志村田弘美、高山淳/執筆:山辺孝能)

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