UNLEASH America 2019参加報告(前編)

UNLEASH Start Up Award

2019年07月05日

期待のスタートアップ10社がしのぎを削った2日間

加工01_opening.jpgnexxworksのPeter Hinssen氏によるオープニングスピーチ

UNLEASH America 2019が、2019年5月14日から2日にわたってラスベガスにて開催された。

フェニックス&ユニコーンと題されたPeter Hinssen氏によるオープニングスピーチの後、パネルディスカッション、スタートアップのコンペティション、多様なテーマに沿ったミニセッションが行われるとともに、展示会場では大手HRテクノロジー会社やスタートアップを中心とする合計88社がブースで製品を紹介していた。最終日のクロージングセッションでは、2013年に米国政府による盗聴や情報監視行動を告発したことで知られるEdward Snowden氏がスピーチとQ&Aを行い、会場を沸かせた。

ここでは今回のコンファレンスのみどころのひとつであったスタートアップのコンペティションを紹介する。

スタートアップコンペティションの手順

UNLEASH がサポートするスタートアップは数百社にも上るが、スタートアップコンペティションとは、そこから選ばれた企業がステージ上で5分間で商品に関するプレゼンテーションを行い、審査員が商品やプレゼンテーションの内容などから優劣を判断し、優勝者を決定する。

1日目5月14日のUNLEASH Lightning Roundでは今後特に躍進が期待できる新進のスタートアップ5社がプレゼンテーションを行い、最高位に選ばれた1社が2019年秋にUNLEASH World で行われるファイナルステージへの出場権を獲得。2日目5月15日のUNLEASH Startup Awardでは優秀スタートアップ上位5社に選ばれた企業が優勝賞金(奨学金)2万4,000ドルを目指してプレゼンテーションを行った。

UNLEASH Lightning Roundの審査員は、TruのBill Boorman 氏、Sydney MetroのChris Long氏、12 GeniusesのDon MacPherson氏の3名が行い、5社のプレゼンテーションに鋭い指摘を与えた。

2日目UNLEASH Startup Awardの審査員は、NetflixのJohnny Sanchez氏、NextGen InsightsのYvette Cameron氏、Accelir InsightsのSarah Brennan氏、CieloのAdam Godson氏、The Acadian CompanyのJason Corsello氏、Independent Thought Leader のKatherine Jones氏、UNLEASHのChina Gorman氏、Eva.aiのMax Knupfer氏、The MuseのStefano Sassu氏、Click BoardingのPatrick Rooney氏の10名が務め、的確な質問とコメントでプレゼンテーションの内容を掘り下げた。

UNLEASH Lightning Roundに選ばれたTop5

UNLEASH Lightning Round に選出されたスタートアップは、SOLVE、Talent Alpha、Retorio、Persona Labs、Predictive Peopleの5社で、各社の概要は次のとおりである。

01_1_table.jpg(※1)各社のウェブサイトについては脚注を参照

No.1はポーランドのTalent Alpha

UNLEASH Lightning Round では創業から1年に満たない間にヨーロッパ最大規模のITプロフェッショナル・インベントリーを構築したTalent Alphaが優勝し、UNLEASH World で行われるファイナルステージへの出場権を獲得した。

加工02_TalentAlpha.jpg表彰を受けるTalent Alpha共同創業者のPrzemek Berendt氏

UNLEASH Startup Awardに選ばれたTop5

UNLEASH Startup Awardに選出されたスタートアップは、SeekOut、Jane.ai、Cultivate、TalVista、MeaningBotの5社で、各社の概要は次のとおりである。
01_2_table.jpg(※2)各社のウェブサイトについては脚注を参照

No.1はAIプラットフォームのJane.ai

UNLEASH Startup Awardでは、Cultivateが第3位、SeekOutが第2位の表彰を受けた。そして、あらゆる企業情報をチャットなどを通してアクセス可能にし、クライアントのニーズに応じた幅広い情報を提供することで、コストと時間の削減を手助けするJane.aiが優勝し、2万4,000ドルの賞金を獲得した。

加工03_1st_Dave-Karandish.jpg優勝賞金2万4,000ドルの小切手を受け取るJane.ai 創業者・CEOのDave Karandish氏

インプレッション

今回10社のスタートアップのプレゼンテーションをみたが、そのほとんどがソーシング、リクルーティング、エンゲージメント、人材確保(リテンション)を含むHR分野にAIを用いるものだった。とりわけ、AIの利点を強調するというよりも、AIをダイバーシティやインクルージョンに有効活用し、公正で働きやすい職場環境の構築を助けることに重点を置いた製品が多かったように思う。

このコンファレンスでオープニングスピーチからクロージングセッションに至るまで、多くのスピーカーが強調したのは「AIによって10%の職が失われ、100%の職が変革を求められる」ということだ。HR分野におけるAIの浸透はもはや不可避だが、AIがあらゆる仕事に取って代わるという事態にはならないというのが大方の見解だ。しかし、どのような仕事も少なからずAIの影響を受けることは間違いない。ゆえにこれからの人材は向上心を持ちつつ変化に対応する柔軟性を維持しなければ、キャリアアップは難しくなるだろう。スピーカーの1人が言っていたが、キャリアはもはや“ladder(はしご)”ではなく、“wall climbing(壁のぼり)”であり、急な斜面をよじ登っていくように忍耐を要するものなのかもしれない。


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TEXT=Keiko Kayla Oka(客員研究員)

 

(*1)UNLEASH Lightning Roundに選ばれたTop5のウェブサイト
SOLVE(https://www.hcmi.co/solve)
Talent Alpha(https://talent-alpha.com/
Retorio(https://www.retorio.com/
Persona Labs (http://www.persona-labs.com/
Predictive People(https://predictive-people.com/

(*2)UNLEASH Startup Awardに選ばれたTop5のウェブサイト
SeekOut(https://seekout.io/
Jane.ai(https://jane.ai/
Cultivate(https://trycultivate.com/
TalVista(https://www.talvista.com/
MeaningBot(https://www.meaningbot.com/

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