HRテックワールド参加報告(3)
AI内蔵はもはや常識。突出するHRテクノロジーの紹介
HRテックワールドのエキスポには約150社のHRテクノロジー業者が出展し、グローバル展開する大手のエリアからスタートアップ企業のエリアまで、複数のサイズのブースがあった。スタートアップ企業が商品をデモンストレーションするステージも設けられていた。アムステルダム開催ということで、当然ながら欧州をベースとした出展企業が多かった。ここでは、特徴的なサービスを提供するHRテクノロジーと、ジョシュ・バーシン氏が驚愕したと講演で薦めていたHRテクノロジーを紹介する。
<候補者マッチングツール>
Pocket Recruiter
求人にマッチする候補者をATS(Applicant Tracking System、応募者追跡システム)から探し出すという、多数存在するサービスだが、Pocket Recruiterの強みは求人広告に記載してある言葉以上にポジションのことを理解してマッチングできるところにある。ウィキペディアを含むインターネット上のあらゆる情報からその職務や分野について学習するため、たとえば「ネットワークエンジニア」の募集でも、業務内容はネットワークの設定なのか開発なのかによって異なる候補者を提案できる。
さらに、Pocket Recruiterがリストアップした候補者をリクルーターが承認・否定することで、ツールはその職務についての理解を深め、マッチング精度を上げていく。
<オフボーディングサービス>
Konnect Again(2018年2月1日付でTavelistへ名称変更)
顧客企業の代理で、離職する人から匿名で短いアンケートを取る。回収率が高いという。
主要なサービスはアルムナイ(離職者)コミュニティの構築。以前在籍していた人材は、育成の必要がなく即戦力になるため、人材不足の昨今リクルーターの間で注目が集まっている。顧客企業はアルムナイ向けのウェブサイトを作成し、アルムナイイベントの企画・告知や求人掲載、そのほか会社のニュースなどを発信して優秀なアルムナイの繋ぎ止めおよび彼らからのリファラルを目差す。アルムナイ同士もネットワーキングできる。拠点はダブリン、NYとリスボン。
<言語分析による企業文化とのマッチングサービス>
Seedlink
社内の優秀な人材が使う言葉や文章のスタイルを分析し、似た特徴を持つ候補者は企業文化に適性があり、将来の活躍が予測されるとしてマッチングを行う。
自由回答形式の質問に対する回答から、SeedlinkのAIアルゴリズムによりその人の「協調精神」、「原則に対する忠実性」、「論理的・分析的思考」、「学び続ける意欲」、「企画力・組織能力」、「結果重視型」、「難題に立ち向かう力」、「ストレス耐性」などについて分析する。
話し言葉も対応可能。現時点では英語と中国語に対応しており、順次言語を追加予定。
本社は上海。アムステルダムにも拠点を持つ。
バーシン氏が感服したHRテクノロジー
<動画面接分析ソフトウェア>
HireVue
15分間の動画面接から約100万のデータ要素を収集する。候補者の使用する言葉、声のトーン、微表情を機械学習アルゴリズムが分析し、今後の仕事ぶりを予測する。
<リクルーティングボット>
Mya
このコラムでも以前紹介したが、時間給やシフト制の仕事、一斉に多数の採用を行う企業に適したチャットボット。応募者に勤務可能日や時間、25キロの荷物を持ち上げられるか、フォークリフトの免許を保持しているかといった項目をボットが確認し、条件を満たす候補者をリクルーターに引き継ぐ。条件を満たさない候補者には、他のポジションを提案する。
<リーダーシップ育成ツール>
Compass
人事管理ソフトやサービスを提供するADPの商品で、従業員が送るメールをソフトウェアが読み、送信者がより良いリーダーやチームメンバーになるためのコーチングをする。チームメンバーはリーダーへのフィードバックをCompassに匿名で送り、Compassが効果的な言動とそうでない言動をリーダーに指摘する。また、Compassはチームの働き方を分析し、効果的なチーム力学とそうでないものを特定する。
<モバイル学習作成ツール>
Volley.com
本や雑誌の記事、会社の研修資料、ファクトシートなどを読み込み、自動的に5秒でゲームのような試験を作成する。各従業員に欠けている知識を特定し、解決策を提案する。
テクノロジーが驚異的なスピードで進歩している。
HRは候補者の特定や選考の1次スクリーニングをマシーンに任せ、従業員に身に付けさせたウェアラブルデバイスから優秀な人材の行動パターンを探るなど、テクノロジーの進化を受けてHRの役割も変化している。
あらゆる業務をテクノロジーに頼るなかで、「人はテクノロジーに時間を費やし過ぎている」という指摘が随所であった。アリアナ・ハフィントン氏が創業したThriveでは、人間をテクノロジーから離すためのテクノロジーを開発している。
これからのテクノロジーは、業務を自動化するだけでは十分でなく、人間同士の交流も促進できる、「ハイタッチ・デジタル」が求められるという(Leapgen CEOジェイソン・エイバーブック氏)。
テクノロジーの革新性に目を奪われ非生産的にならないよう、労働者が心地よく働けるツールの開発と導入が余儀なくなっている。