SIAエグゼクティブフォーラム2017参加報告(1)
マンパワー、アレギスらが描く、2027年に向けた人材サービスの課題
SIAエグゼクティブフォーラムのテーマは、「Dare to Lead」
業界の先頭を行くにはリスクが付きものだが、成功のためにはリスクをおそれずに新しい道を切り開いていかなくてはならない、という意味が込められているのだろう。
本コラムでは、新しい人材サービスモデルのファウンダーや業界トップ企業による見解を3回にわたって紹介する。
エグゼクティブ・リーダーシップ・パネル~頂上からの視座
第1回目は、人材サービス業界をけん引する企業のエグゼクティブ4名によるパネルディスカッション。パネリストは、
マンパワーグループ会長兼CEOのヨーナス・プリーシング氏(※1)、
アレギス・グローバル・ソリューションズ社長のチャド・レイン氏(※2)、
On AssignmentCEOのピーター・ダメリス氏(※3)、
AMN Healthcare社長、CEO兼ディレクターのスーザン・サルカ氏(※4)。
司会はSIA社長のバリー・エーシン氏。
世界中の労働市場で構造改革が起きており、
人材サービス業界は解決策にも、問題にもなり得る
2016年は人材サービス業界にとって転機の年だったと4名のパネリストが口を揃えて指摘した。米国はテクノロジースキルを持つ人と持たない人に二極化しているが、プリーシング氏によると、他の先進国でも同様のことが起きているという。
「人口動態、テクノロジー、グローバル化は国による大きな違いはない。政治情勢においても、米大統領選挙も、ブレグジットも、スペインの議会総選挙も、イタリアの五つ星運動も、フランス大統領選挙も、労働市場を揺るがす、まったく同じ構造改革だ。それが人材サービス業界の転機につながり、今脚光を浴びている。即戦力となるフレキシブルな人材を組織の適所へ配置する、という需要が発生している」
「どのように求職者に対応し、彼らのキャリアを管理し、報酬を支払うかを業界として細かく詮索されるようになる。方法を間違えれば、労働者を悪用する企業だと思われ、クライアントは二度とサービスを利用しないだろう。人的資源を合法に共有する唯一の方法は、人材サービス会社を利用すること。私たちは解決策の一部になるか、問題の一部になるか、業界のリーダーシップが問われている」
専門領域を絞る。他社との戦略的提携が発展のカギ
人材サービスは日々複雑化し、仕事は専門的になっていく。大企業でも、すべての領域のエキスパートにはなれない。
「10年前と比べて、人材サービス会社は賭けに出るようになった」とアレギスのレイン氏は言う。「クライアントにいつでも専門知識を提供できることが不可欠。地域、業種、特定の問題でもよい。専門領域を絞って得意なことに集約しようと、各社は決断を下している。未来のやり方は戦略的提携になるだろう。専門性を持つ会社同士が連結すると、大きく成長する機会を作れる。人間同士の交流を助言的な会話へとレベルアップしなければならない。テクノロジーは特効薬にはならないが、効率と効果を上げる点では非常に役立つ」
「さまざまなソリューションの登場に惑わされてはいけない。これまでのモデルは汎用的だった。マンパワーが事業を開始した70年前、クライアントの物理的な施設で働く候補者のスキルを査定して配置した。何十年もこのモデルでやってきて、80カ国で展開した。しかし、私たちはこれからもっと焦点を絞らなければならない。各クライアントにおける適切なモデルが異なるためだ」とプリーシング氏も同調する。
課題は"候補者との関係構築"、"イメージチェンジ"、"敏捷性"と"啓発活動"
大手各社の喫緊の課題は何か。
プリーシング氏(マンパワー)「急速に変化する環境の中で、より迅速に動き、クライアントの身近にいられるよう努力している。敏捷性と柔軟性」
レイン氏(アレギス)「MSPやRPO会社というイメージから脱却すること。最終的には、クライアントの人材誘引戦略に役立つサービスを提供するという位置づけになろうとしている。社内でのメンタリティと社会における当社のイメージを変えること」
ダメリス氏(On Assignment)「候補者と関係を築くこと。失業率が非常に低い今、誰もが同じ人材を狙っている。候補者は、良い付き合いがあると感じる派遣会社をより頻繁に利用するだろう」
サルカ氏(AMN Healthcare)「医療業界における労働力ソリューションの浸透率は未だ序盤だ。取り入れるメリットをクライアントに教育する必要がある。基本教育とビジネスの浸透」
2027年予測、人材サービス業界はどう変化するのか?
彼らが描く10年後の人材サービス業界はどのようなものだろうか。
プリーシング氏(マンパワー)「人材不足の環境なので、タレントの発掘からタレントの創出に移っている」
レイン氏(アレギス)「現在のトップ7社のうち、1、2社はもう存在しない」
ダメリス氏(On Assignment)「業界は倍に成長し、浸透率は6~7%になる」
サルカ氏(AMN Healthcare)「医療スタッフィングでは、労働力ソリューションの浸透率が上がり、エコシステム内でのコラボレーションが進む。医療系と非医療系のプロバイダー間の協働も増えるだろう」
国の成長には高い労働力参加率が不可欠
「米国の失業率は低いが、労働力参加率も63%と非常に低い。移民、高齢者、女性などさまざまな人口層から労働力を迎えようと積極的な国では、労働力参加率はおよそ80%である。欧州の多くでは、生産性の伸びが人口増加と結びついていなければ、国は成長しない。人口構成を反映するあらゆる人を組織のさまざまなレベルで含めることが大きな優先事項だ」と、プリーシング氏はマンパワーの多様性とインクルージョンに関する取り組を挙げた。日本でも働き方改革が進んでいるが、世界的に人材不足であり、他国に後れを取っていられない。
※1 マンパワーグループは、世界第3位の人材サービス会社
※2 アレギス・グローバル・ソリューションズはアレギスグループのMSP。60カ国で事業を展開する株式非公開会社
※3 On Assignmentは米国で10番目の規模の人材サービス会社。IT、マーケティング&クリエイティブに特化する
※4 AMN Healthcareは医療系(医師や看護師)人材サービス業界の大手。医療系VMS/MSP、RPOにおいても大手である
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