複数のプロジェクトを通して一人ひとりが成長し、チーム力が築かれる【Vol.6椙山女学園大学 現代マネジメント学部 東ゼミ】
自身が日本中から「イケてる」と思うゼミを探し、取材し、発信する学生記者プロジェクト。今回からは、学生記者2期生(2023年度)による記事がスタートする。 そのトップバッターが選んだ取材先は、企業と連携した商品開発や取材執筆など複数のプロジェクトをアクティブに進めている東ゼミ。取材当日も和気あいあいと笑顔が絶えない結束力のあるゼミの秘密を探った。
取材・文 松本 結(椙山女学園大学3年)
取材 中村 星瑛(白百合女子大学2年)
【Seminar Data】
教員:東 珠実(アズマ タマミ)教授
椙山女学園大学 現代マネジメント学部 現代マネジメント学科
研究分野:消費者行動論、生活経営論
構成員:2年生9名、3年生10名、4年生11名
位置づけ:必修のゼミ
単位数:2〜4年で計7単位
消費者力検定って知っていますか?
今回紹介する東ゼミの学生は、主に消費者行動論、生活経営論を中心に学んでおり、3年次に消費者力検定に挑戦する。消費者力検定では下記のような問題が出題される。
皆さんはこの問題を解くことができるだろうか?
出典:一般財団法人日本消費者協会「消費者力検定 チャレンジ問題」
消費者力検定は、消費社会を生きるうえで知っておくべきこと、役立つことを学び、さらに消費者行動を通じて社会に貢献する意識の向上を目的とした検定である。出題分野は、衣食住の知識から、環境問題やインターネットでの売買、生活設計に関することまで、幅広い。
消費者力検定は、私たちの日常生活に直結していること・私たちが生活していくうえで役立つことを学べる。
大学生が取得する資格として、日商簿記やファイナンシャル・プランナーなどはよく耳にする。「消費者力検定」という少しマイナーな資格に挑戦でき、ゼミで学んだことを資格という形で残せることも魅力的である。
※一般財団法人日本消費者協会「消費者力検定」
ゼミ活動の中心は企業や地域と連携したプロジェクト
東ゼミの最大の特徴は、ゼミで学ぶ消費者行動論や生活経営論について実践する様々なプロジェクト活動が多いことである。今回取材させていただいた3年生が、ゼミが始まってから取り組んできたプロジェクトは、エシカルフェアへの参加、養老町への特産ブランド開発プロジェクト、地元企業のユタコロジー株式会社との産学連携プロジェクト(カレンダー&就活パンフレット作成)、おふろ部のライター活動など多岐にわたる。
養老町への特産ブランド開発プロジェクトとは、東ゼミと株式会社大垣共立銀行、御菓子司 松野屋が連携し、養老町特産ブランドを開発するものである。「養老の滝」をモチーフにした「YOROだんご」と「YOROあんドリンク」の商品開発をし、2023年10月には、椙山女学園大学の大学祭で実際に販売した。
「養老町への特産ブランド開発プロジェクト」の打ち合わせ(左)と大学祭出店準備(右)
地元企業のユタコロジー株式会社との産学連携プロジェクトとは、多様な働き方に主眼を置いて、社会人への取材を実施し、インタビュー内容を踏まえた読み物としてのカレンダーと、社会人の本音が詰まった就活生向けパンフレットを作成するものである。
「地元企業のユタコロジー株式会社との産学連携プロジェクト」の話し合い(左)と就活生向けパンフレットのデザイン案(右)
株式会社ノーリツが運用するおふろ部においては、全国のおふろ好きを増やすWebメディアにおいてライター活動をしている。
東ゼミが取り組んだ様々なプロジェクトの成果は、ぜひ、該当の大学ホームページやサイトをご覧いただきたい。
エシカル消費普及啓発の取り組みを発表!(椙山女学園大学)昨年に続く養老町特産ブランド開発プロジェクト、いよいよ商品の決定!(椙山女学園大学)
おふろ部 (株式会社ノーリツ)
複数のプロジェクトを並行して行う狙いは
プロジェクトの中には、夏季休暇中も含め長期にわたって取り組むものもある。特にプロジェクトの中核を担う3年次はかなり忙しくなると思うが、複数のプロジェクトを並行して行う狙いはなんだろうか。
東先生は「一つのことをやるのは簡単でも、同時並行は難しい。課題達成のために組織で取り組んでいく中で、いろんな立場を経験してほしい」と語る。
チームで複数のことに取り組むとなると、互いに協力し合うことが必要不可欠になる。また、プロジェクトごとにリーダーを決めることになっており、ゼミのメンバー誰もがリーダーになる可能性があるそうだ。学生は、「指示する経験もされる経験もする。あの子はこれを頑張っているから、私はこれを頑張ろうという気持ちになる」と話した。
指示する経験もされる経験もするからこそ、「相手の立場に立って考える」ということを常に意識することができている。
これらが、複数のプロジェクトを並行して行っている狙いである。
学外の方との関わりで何が得られたか
東ゼミが行うプロジェクトは、学外の人と深く関わるものが多い。具体的には、イベントへ参加した際の参加者との関わり、産学連携先の企業の人やプロジェクトの取材対象の方との連絡やスケジュールの管理などである。
ゼミの活動を通して成長できたことや得られたものとして、ゼミ生からは、
「前は人と関わることがそんなに得意ではなかったけど、様々なイベントに参加する中で人と話すのが好きになった。どうすれば相手に伝わりやすいか考えられるようになった」
「組織で動く際のスケジュール管理ができるようになった」
といった回答があった。社会に出て仕事をしていくうえで欠かせない力を身につけることにつながっていると感じた。
密にコミュニケーションを図り、チームで取り組む
学外の人との関わりだけでなく、学内の人との関わりも密に行われている。プロジェクトを進めるうえでの基本的な方針は、自由であることである。
先生が介入する場面もあるが、「基本的に自分たちでできることは自分たちで」という考えを大切にしているそうだ。先生は基本的に介入せず、学生主導でプロジェクトを進めている。つまり、プロジェクトの責任を学生たちが背負っているということである。責任が学生にも生じることで、「チームとしてやらざるをえない状況」が生まれている。学生同士で話し合いの機会を設けたり、役割分担をしたり、といった密な関わりが自然と生まれている。プロジェクトが立て込んでいた夏季休暇中は、週に一度ぐらいのペースでゼミの人と会っていたそうだ。このような背景が、密にコミュニケーションを取る環境を生み、次第に仲も深め、互いを理解し、尊重することにもつながっている。
ゼミの活動を通して成長できたことや得られたこととして、学生からは、
「普段関わる人は自分と似ているタイプの人と関わることが多かった。このゼミに入ったことで、関わることができないタイプの人と出会えた」
「初めはゼミ長として貢献できているのか不安に思うこともあったが、様々なプロジェクトに取り組む中で、人それぞれ得意なことが違い、チームで取り組むことの大切さを学ぶことができた」
「各々のゼミ生が持っている得意分野や長所が違って、ゼミ活動の中で刺激をもらっている」
「自分の得意分野でゼミの一員として貢献できたとき嬉しかった」
といった回答が挙げられた。
「一人ひとりをしっかり見る」東ゼミのスタンス
東先生がゼミを運営するうえで心がけていることは、「一人ひとりのいいところを見て伝えるようにしていること」だそうだ。「自分自身をきちんと評価できるようになってほしい」という思いも話された。一人ひとりをよく見ることができる機会が多いことも少人数教育(ゼミナール)ならではの魅力である。
また、先生が一人ひとりを見ているだけではない。学生一人ひとりも、ゼミ全体のことを把握できている。前述した役割分担を学生同士で話し合い、決め、プロジェクトを進めていくということは、学生たち一人ひとりが相手の立場に立って考え、互いの得意・不得意なことを把握し、ゼミ全体を見ているからこそできることである。そして、信頼関係があることも欠かせない。
「先生、学生ともに一人ひとりのこととゼミ全体のことを見る」というスタンスがあるからこそ、一つの組織として複数のプロジェクトを並行して行うことができているのではないだろうか。
【Student’s Eyes】
■複数のプロジェクトを並行し、忙しそうな中でも、学生の皆さんに笑顔が見られました。役割分担がきちんとできていて、チームとしての力が高いからこそ、笑顔が溢れ、温かい雰囲気が生まれているのではないでしょうか。
取材時は、皆さんが談笑しながら質問に答えてくださり、ゼミの団結感や仲の良さを感じました。ゼミ活動を通して成長できたことや得られたものがそれぞれにあって、一人ひとりが輝ける場所であると感じました。(松本)
■「頑張ることがいいことという雰囲気」という学生の言葉が印象的でした。またゼミへの志望動機から、自分が興味のあることに対する学生の皆さんの熱い思いが伝わってきました。東先生がゼミの中で大切にされている「相手に思いやりを持つこと」がお互いに頑張る雰囲気を作り出し、ゼミの中で思い切り学ぶ環境を導いているのだと感じました。(中村)