用語解説【介護編】

2023年03月16日

パワーアシストスーツ

パワーアシストスーツは、介護職員など作業者が身に着けることにより、歩行、立ち上がり、持ち上げといった動作の支援や、身体機能の改善などを行う装置のこと。内蔵する電動アクチュエーターやゴムチューブのような人工筋肉が、人間の動きをサポートし、負荷を軽減する。介助現場では高齢者をベッドから車椅子などに移乗したり、体位変換の介助を行ったりする際に使われ、腰部への負荷を低減する作業支援型や高齢者の歩行をサポートする自立支援型などがある。代表的な製品としては、サイバーダインの「HAL®腰タイプ介護・自立支援用」などがある。

移動支援介護ロボット

移動支援介護ロボットは、高齢者の外出時や屋内での移動を支援する。屋外・屋内・装着の3タイプがあり、屋外型は両手で押して使用する電動シルバーカーなどの機器で、買い物や通院、趣味の散歩など長距離を歩く時に使用する。結果として高齢者の外出時間や機会が増えることで生活の質の向上が期待できる。屋内型は屋内での移動や立ち座り、トイレでの姿勢保持などの支援をする。1人での排泄が可能になったり、自宅や施設内での行動範囲が広がったりすることで、家族や施設内の人とのコミュニケーション拡大につながる。装着型は高齢者が1人で装着して使用でき、外出の際の転倒リスクを軽減する。機器の着脱や使用を1人で完了できるので、介護者にかかる負担を軽減できる。

介護用シャワー入浴装置

介護用シャワー入浴装置は、高齢者など身体的に自立が難しい人が安全かつ快適に入浴するための装置。通常の浴槽に設置するタイプ、ユニットバスに設置するタイプ、移動式のタイプなどがある。最近では高齢者を車椅子型チェアに移乗し、ドーム構造の機器内チェアごと浴槽に入って、ボディシャンプーやミストシャワーを行い、体の汚れを流し落とす装置などが注目されている。貯湯式に対して少量の湯量で入浴が終わるので、入浴準備時間や洗身時間を短縮し、上下水道料金や光熱費を削減できる。通常、ストレッチャーを使った特殊浴槽による入浴の介助は2人以上のスタッフが対応するが、介護用シャワー入浴装置は1人で介助を行うことが可能で、介護現場の省力化にも寄与する。

排泄予測支援機器

排泄予測支援機器は、膀胱内に尿や便がどれだけ溜まっているかを超音波で把握する仕組みのことで、排泄のタイミングが近いことを知らせ、高齢者の自立や介護者の負担軽減を後押しする。具体的には、センサーによって排泄の頻度や量、排泄物の性状などをデータとして収集、機械学習やAIの技術を活用して排泄のパターンを学習し、それに基づいて予測を行いタイミングを知らせる。この技術は、高齢者など排泄管理に困難を抱える人たちを支援すると同時に、介護者の排泄管理の負担やストレスの軽減に役立っている。トリプル・ダブリュー・ジャパンが開発した「DFree」などが知られている。

睡眠センサー

睡眠センサーは、高齢者などの睡眠状態を監視するデバイス。ユーザーの心拍数・呼吸数のモニタリングやユーザーが寝返りを打ったり、ベッドから起き上がったりする動きを検知することで、睡眠の深さや質を判断する。多くの睡眠センサーはスマートフォンアプリと連携し、睡眠状態や健康状態を可視化することができる。パラマウントベッドの「眠りSCAN」はシート状のセンサーをマットレスの下に敷きこんで、利用者の呼吸数や心拍数、睡眠状態、覚醒、起き上がり、離床動作などを遠隔においてリアルタイムに把握することができる。介護職員が持ち歩くスマートフォンにもモニター画面と同じように情報が送られて、覚醒時、起き上がり、離床時はセンサーの音が鳴るため、どの利用者が覚醒あるいは起き上がったかを把握できる。

見守りセンサー

見守りセンサーは、自宅に設置されたセンサーが音や光、赤外線、超音波を通じて高齢者の様子をキャッチし、その情報がスマートフォンやパソコンから遠隔で確認できる装置のこと。高齢者の屋内での行動を検知して、一定期間動かない場合など緊急時にはケアマネージャーや家族に通知する。窓・ドアセンサーは住宅の出入り口や窓にセンサーを設置し、開閉状態を検知する。人感センサーは温度センサーなどにより一定範囲内の行動をモニタリングする装置。リビングや廊下など日常生活を送るうえで必ず通る場所に設置することで、高齢者の生活リズムを把握できる。ガス・水漏れセンサーは、住宅内にガスや水漏れが発生した場合、センサーが異常を検知し、緊急通報を行う。これらのセンサーを利用することで、高齢者が一人暮らしをしていても、安心して生活することができる。また、ケアマネージャーや家族は、高齢者の状態をリアルタイムで把握し、必要に応じてサポートすることができる。

ハンズフリー介護

ハンズフリー介護とは、一般に介護者が手を使わず身体的な負担を減らしながら介護を行うことを指す。例えば、電動リクライニングベッドや電動車椅子などの用具を使うことで、介護者が身体的な負担を減らし、介護の質を向上させることができる。より先進的な例としては、善光会が開発したスマート介護プラットフォームと、KDDI総合研究所が開発した音声合成技術および顔認識技術を組み合わせて開発された「ハンズフリー介護作業支援システム」がある。介護者はARメガネに情報を表示し、音声で読み上げることで、入居者の情報をいつでもハンズフリーで確認できる。これにより職員がまだ詳細情報を把握しきれていない新規の入居者へも適切な声掛けなどを行うことができ、きめ細かい介護の実現につながる。

AI・介護記録ソフト

AIを活用した介護記録ソフトは、介護現場における負担の軽減や効率化を目的として開発されたソフトウェアを指す。AIの活用により、介護職員がスマートフォンなどから入力した各種データを自動的に解析し、利用者のバイタルや生活状態を把握して、適切なケアプランを提供することが可能となる。また、AIはデータの傾向を自動的に把握することができるため、利用者の健康状態の変化を早期に発見し、迅速な対応が可能となる。スタッフの紙での記録作業がなくなるだけでなく、AIがデータを解析することで、利用者ごとに最適なケアプランを自動的に生成したり、利用者の健康状態の予測を行ったりすることもできる。日本KAIGOソフトのAI・介護記録ソフト「CareViewer(ケアビューアー)」などがある。

服薬支援ロボット

服薬支援ロボットは、ドクターや薬剤師などが入力した薬の種類、服用量、服用時間などの情報を基に、薬を分別し、必要な時間になると、患者に服用を促す音声やメッセージを出す装置のこと。一度に複数の患者の薬の管理が可能なため、医療スタッフの負担軽減につながる。近年は、AI技術を組み込んだ服薬支援ロボットも開発されており、患者の服薬履歴を記録し、患者に応じた適切な服薬スケジュールを提供することが可能になっている。ワイズマンの服薬支援システム「服やっくん」では、投薬時に介護職員・利用者・薬包の3つの二次元コードをスマートフォンなどで読み取ることで、投薬対象や薬の内容が正しいかチェックを行うことができる。服薬結果はケア記録へ自動取り込みされるため、業務の効率化につながる。

利用者行動予測

高齢者の性格や病歴、各種センサーやカメラなどのデータから得た日常生活の状況から、当人が将来どのような行動をするかを予測すること。利用者のケアプランの策定や介護サービスの改善などに役立てることができる。具体的には、転倒や転落のリスク、徘徊や暴力行為のリスク、食事や入浴などのADL(日常生活動作)の支援の必要性、睡眠障害や不眠症の発症リスクの予測などである。例えば、認知症が疑われる高齢者の場合、物忘れや徘徊などの兆候が見られた場合、それを踏まえたケアプランを立てることができる。AIを活用した行動予測を行う研究や開発も進んでおり、映像解析技術を利用して、徘徊する傾向がある高齢者を検知し自動で警告を発するシステムや、入浴時の転倒を検知し介護職員に通知するシステムなどが開発されている。

自動体力測定装置

介護施設などで使われる自動体力測定装置としては、握力などを測る手持ち式力量計や歩行時の姿勢や歩行速度、歩幅、歩行バランスなどを測定する歩行分析装置、立位や座位でのバランス能力を測定するバランス能力測定装置などがあり、結果を知ることで運動能力やバランス能力の障がいの早期発見や個別の運動プログラムの立案に役立てることができる。介護施設では、定期的に利用者の身体機能を測定し、転倒などのリスクの予測に役立てているが、職員のシフト調整やデータの記録、データ集約、一元管理といった業務の負荷が発生する。「TANO CHECK」(開発:TANO TECH)は、5メートル歩行・握力・片足上げ・CS30(立ち座り)・空間認識力の5つの測定に対応でき、結果も自動で記録される。手作業での記録やデータの集約が不要になり、体力測定に関わる介護職員の時間を大幅に削減できる。

セラピーロボット

AIやロボット工学を応用したセラピーロボットは、人との対話や表情やしぐさなどを通じて、癒やしや快適さを提供することを目的として開発されたロボットである。高齢者や障がい者に対しては、相互作用を通じて孤独感や孤立感を軽減することが期待できる。ロボットの形態としては、人間のような外見のものや、動物のような姿をしたものなど、様々なタイプがある。例えばアザラシのような姿をしたPARO(パロ)やクッション型セラピーロボットQoobo(クーボ)などがあり、PAROはデイサービスセンター、介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどで長期間にわたる実験を続けることにより、アニマル・セラピーと同様の効果を得られることが確認されている。

コミュニケーションロボット

コミュニケーションロボットとは、AIや自然言語処理技術の搭載により人間と自然な会話ができるロボットのことで、高齢者や障がい者のコミュニケーション支援などに利用される。例えば普段あまりしゃべらない人でも、ロボットの外見の愛らしさなどから会話を楽しむようになり、口腔機能の向上や認知機能低下予防に効果を発揮できるようになる。リズムに合わせてダンスを踊るロボットもあり、一緒に体を動かしたり手拍子したりすることで、運動器の機能向上にもつながる可能性がある。介護現場における活用では「介護レクリエーション支援サービス」を提供するために開発されたコミュニケーションロボット「Sota(ソータ)」(ヴイストン)のほか、一般企業の受付業務などで導入されているコミュニケーションロボット「Pepper(ペッパー)」(ソフトバンク)にもレクリエーションや顔認証、夜間見守りなどの多様なアプリが用意されている。

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