ソースコン・デジタル 2.0 2020 参加報告(後編)
ソースコン・デジタル2.0では、パンデミックによって変化した優先順位に対応するうえで役立つ、数多くのツールやスキルが共有された。そのなかから、特に興味深かったものをいくつか紹介したい。
簡単、便利なソーシング・ツール
「ソーシング・オートメーション・ツール&トリック」と題された講演をした、Amazonのテクニカル・ライターJonathan Kidder氏は、数々のソーシング・ツールを発掘し、自身のブログ上でユーザーに情報を公開している。
また、「Recruiter Wand(リクルーターの魔法の棒)」というブラウザー・エクステンションを作成し、ユーザーが自由にGoogle Chromeからダウンロードして利用できるようにしている。「Recruiter Wand」は、LinkedInをはじめとするSNS上の氏名、会社名、スキルなどをキャプチャーし、それらをテンプレートのコンタクト・リストに自動入力する。そして、ユーザーはそのテンプレートを使って、コンタクト宛にEメールを送付することができる。テンプレートの編集も可能で、その情報を他のメッセージツールにコピーすることもできる。ソーサーにとっては、ソーシングとメッセージングをスピードアップできる便利なエクステンションである。
Kidder氏は講演のなかで、簡単に使えるベーシックなオートメーション・ツールを紹介した。その1つが、Appointletである。
Appointletは、ソーサーが候補者や顧客とEメールなどでやりとりをすることなく、アポイントメントの予約ができる無料ツールである。使い方は非常に簡単である。ユーザーは、まずAppointletをダウンロードして、自分のスケジュールと予約ページをカスタマイズする。そのページを候補者や顧客に送り、都合の良い日時を選んでもらう。そうすると、自分のカレンダーに自動的に予定が追加される仕組みになっている。
簡単にスケジューリングできる無料ツール「Appointlet」
Machine Sourcerは、Google Chromeのブラウザー・エクステンションで、LinkedInのオートメーション化ツールである。Google Chromeからダウンロードした後、LinkedInに行って、このエクステンションを開き、専門分野や地理情報などを入力してサーチをかけると、自動的にプロフィールをリストアップし、メッセージも送ってくれる。価格は、4週間の無料トライアルがあり、その後は1カ月あたり4.99ドルと比較的安価である。
コロナ禍の必須アイテム レイオフ・チェックツール
今回のソースコンでは、コロナ禍でソーサーが頻繁に利用するようになったツールとして、レイオフ・チェックツールを挙げるスピーカーが多かった。2020年10月現在、米国ではパンデミックによってレイオフされて職を失った人が1,100万人以上いる。インターネット上では、多くのレイオフ・チェックツールが公開されており、ソーサーは、1つには有望な候補者を探すため、1つには失業者を助けるために、それらを活用している。
M&T BankのGreg Hawkes氏の講演「パラダイムの変化:新しい現実のためのソーシング・ツールとリソース」では、スクレーピング・ツール、デベロッパー向けツールとともに、ソーシングに役立つレイオフ・チェックツールが共有された。
Layoffs Trackerは、スタートアップなど各企業のレイオフ情報をリストアップして公開している。レイオフを実施した企業情報に加えて、レイオフされた従業員のLinkedInプロフィールも公表している。この情報をもとに、ソーサーやリクルーターは直接コンタクトすることができる。レイオフリストは一般に公開されている情報をもとに作成され、毎日更新されている。Hawkes氏の講演で紹介された情報をもとに、Layoffs Trackerのウェブサイト(https://layoffs.fyi/tracker/)に行ってみた。
同ウェブサイトのトップ画面に、レイオフを実施した企業リストが掲載されていて、一目で、企業名、所在地、レイオフ対象者数、レイオフ実施日、産業、情報源、現在の状況などがわかるようになっている。「Lists of Employees Laid Off」のタブをクリックすると、企業別のレイオフ対象者リストへのリンクがあり、そこから実際にレイオフされた従業員のLinkedInプロフィールを閲覧できる。
Layoffs Trackerで公開されているレイオフ実施企業リストの一部(2020年11月23日現在)
Layoffs Trackerで公開されている企業別レイオフ対象者リストへのリンク(2020年11月23日現在)
Candorのレイオフリストは、全米8,000社以上のレイオフ、採用実施、採用凍結に関する情報を掲載している。各企業が現在、採用を実施しているのか、凍結しているのか、あるいはレイオフを実行しているのかを色分けして表示している。また、産業ごとの採用・レイオフ状況を表したチャートも公開している。
また、Hawkes氏は、ソーシングに必要なデータをスクレイピングするためのツールや方法として、次の5つを挙げている。
①Instant Data Scraper(無料)
https://chrome.google.com/webstore/detail/instant-data-scraper/ofaokhiedipichpaobibbnahnkdoiiah?hl=en-USGoogle Chromeのエクステンションで、AIを使ってウェブページからデータを抽出し、ExcelやCSVファイルにエクスポートする。データを素早く簡単に入手するのに便利。
②Data Miner(無料)
https://data-miner.io/
Google ChromeおよびMicrosoft Edgeのエクステンションで、Instant Data Scraperと同様に、ウェブページからデータを抽出し、ExcelやCSVファイルにエクスポートする。
③Zapinfo(無料)
https://chrome.google.com/webstore/detail/zapinfo/kiodpphbmnmcmnfgpnmkkhmkllnlflef?hl=en
Google Chromeのエクステンションで、Indeedのリクルーティング・ソルーションを使って、候補者情報をATS(採用管理システム)やCRM(顧客管理システム)に統合する。
④WebScraper
https://webscraper.io/
ウェブページからデータを抽出して、CSV、XLSX、JSONにエクスポートするオートメーション・ツール。Instant Data ScraperやData Minerと似ているが、WebScraperは上級者向きだという。ブラウザー・エクステンションの利用は無料だが、データのエクスポートはCSVファイルのみ可。その他のエクスポートなど高度な機能を使用するには、有料のサービスWebScraperCloud(月50ドルのProjectから月300ドル以上のScaleまで4段階)の契約が必要。
⑤上記4つの方法でうまくいかなかった場合は、コピー&ペーストでひたすらサーチをかけるという、やや原始的な方法でスクレイピングする。
ソースコンでは毎回、数々の新しいツールが紹介されるが、今回はパンデミックの影響を受けてソーサーの利用ツールが変化していたのがよくわかった。2021年も、労働市場の状況を反映した新たなソーシングツールが出てくるに違いない。
TEXT=Keiko Kayla Oka(客員研究員)