分析2 役割に虫眼鏡をあててみた(2)
分析②-2
役割を幅広く経験することが、
「キャリア展望」と「キャリア満足」につながります。
人生100年時代を迎えると、人々はこれまでより多くのステージを経験しながらマルチサイクル・キャリアを歩んでいくことになるでしょう。ステージが変わるきっかけはいろいろあるでしょうが、役割の変化も大きな要因だと考えられます。では、キャリアを通じていろいろな役割を担っていくことは、「キャリア展望」や「キャリア満足」にはどのように影響するのでしょうか。
ここでは、キャリアを通じてどれくらいさまざまな役割を経験したかという「役割多様性」に注目しました。たとえば、これまでのキャリアで前ページの7つの役割をすべて担ったことがある人は役割多様性が高く、逆にすべてのステージで単一の役割を担ってきた人は役割多様性が低いということです。
分析を行ったところ、明らかな差が確認されました。役割多様性が高い人たちは、キャリア展望のスコアもキャリア満足のスコアも高い傾向にあることがわかりました。ひとつの役割にとどまらず多くの役割を担ってきたことが、キャリアの見通しやこれまでのキャリアの満足につながっているということです。
では、どうすればキャリアを通じてさまざまな役割を経験することができるのでしょうか。実は、役割多様性が特に高い人たちにはある特徴がみられます。それは、ひとつのステージでも複数の役割を担っているということです。あるステージにおいて、リーダーとプロフェッショナルの役割を担っていたり、マネジャーとアドバイザーの役割を担っていたりといった具合です。自分の役割をひとつに固定せず、単一のステージでいくつかの役割意識を持って取り組むことが、豊かなキャリアを歩むための秘訣といえるでしょう。
text:津田郁
「マルチサイクル・デザインの時代」レポートPDF版