分析5 ファーストキャリアに着眼してみた(5)

2019年07月11日

分析⑤-5

つらい新人時代に意味はあるでしょうか。
もし、今、「生き生き」できていないとしても……。

「若いころの苦労は買ってでもしろ」「石の上にも三年」というのは、今も昔も、言葉を変えて大人から若者へ伝えられているファーストキャリアづくりのキーフレーズです。しかし、つらい仕事はつらいもの。耐えきれず転職してしまう人もたくさんいます。何故我慢できないのか、と責める人もいますが少し待ってください。この「つらさ」は、そのつらさを乗り切って成功した人にとっては自明の大事なことでしょうが、未来のキャリアにどう効いてくるのかを言語化できていないのではないでしょうか。

今回の調査からは、そんな疑問に対してもひとつの回答が得られます。つらい新人時代を経験した価値が後々いきてくるケースがあることが明らかになりました。例えば、営業販売の仕事。ノルマがあったり、お客さんから厳しいことを言われたり、飛び込みで知らない人と話さないといけなかったり。営業はイヤ、という学生が多いことはそんな世間にあふれる新人時代の体験談に原因があるのかもしれません。しかし、新卒で採用された、特に文系の大学生のうちの一定数が最初に配属されるのが営業販売職であることもまた事実です。データを見ると、確かにステージ①での「生き生きスコア」は全職種中最低レベル。しかし、初職が営業販売職であった人の「キャリア展望」スコアは最高になっています。そう、ファーストキャリアで営業販売の仕事に就くことで、つらい新人時代を乗り越えた恩恵を受けていたのです。顧客接点業務は個人の裁量の高い仕事。34ページの結果とも関連しているのでしょう。

大学生や若手社会人の皆さん。やらないうちから「自分には無理」とあきらめるのはまだ早い。その裏に、あなたのキャリアにとってのお宝が眠っているかもしれませんよ?

5-5.jpg

text:古屋星斗
「マルチサイクル・デザインの時代」レポートPDF版