分析5 ファーストキャリアに着眼してみた(4)

2019年07月11日

分析⑤-4

高卒者のキャリアづくりが次世代のヒント?
「初期に深める」が、学歴の差を解消していました。

高卒か大卒かといった「学歴」は大きな違いを生んできました。初任給、就職先の規模、離職率。また、高卒者は地域・現場採用でひとつの職種に限定されたキャリアを歩み、大卒者は本社採用でジョブローテーション、という違いもありました。
こうした学歴の違いが生むキャリア展望の違いは、入職した職種など様々な要素によって打ち消されることがわかっていますが、今回の調査で回答してもらった“キャリア曲線”からも明らかになったことがあります。キャリア曲線におけるひとつの要素によって、学歴によるキャリア展望スコアの差がみごとになくなるのです。

それは「ステージ①で少しでも仕事を“深められていたか”」。「ステージ①に、深めるキャリア曲線を描きこんでいた人」に限定すると、大卒と高卒のキャリア展望の差はなくなります。そして深めたことがある人は、高卒者では仕事のプロフェッショナルレベルが急速に高まっているのに比べ、大卒者では高まっていません。これまでの高卒者における特定の地域で特定の仕事を、というジョブを重視した初期のキャリアづくりが、ステージ①で「深める」ことの意味を作っているのではないでしょうか。自分の仕事領域が見定まっているからこそ、自分が将来やるべき仕事がわかっているからこそ、初期の「深める」の意味が出てくるのです。

そして、こうしたジョブを重視し仕事領域を見定めたキャリアづくりは、現代においてエリア総合職や職種別採用という形で大卒者にも広がっています。過去の高卒者のキャリア形成に学ぶ点は間違いなくあります。若い世代における専門職志向の高まりが指摘されますが、専門性を追求するキャリアをつくるうえでは、新人時代にいろいろと広げながらも、興味を持ったことには強くコミットし「初期に深める」ことが大きな意味を持つはずです。

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text:古屋星斗
「マルチサイクル・デザインの時代」レポートPDF版