2024年新たに「生成AIモデル」「面接インテリジェンス」「面接スケジューリング」の3つを追加
グローバルセンターでは、タレントアクイジション(採用領域)テクノロジーに注目し、2016年よりコラムで紹介している。
Talent Tech Labs(以下、TTL)の「タレントアクイジションエコシステム」(HRテクノロジーマップ)にある代表的なサービス分野は2016年時点には28領域であったが、2023年には42領域、2024年現在では40領域と、常に変化している。
最近の傾向として、「労働市場インテリジェンスプラットフォーム」や「マッチングシステム」分野で、M&Aを通じて製品やサービスを拡充する動きが見られる。企業は必要な機能を選んで利用できるオールインワンのプラットフォームを好むようになり、単一機能の製品を提供する小規模なサービス事業者は大手に買収されている。
TTLは2024年版 HRテクノロジーマップで主要なHRテクノロジー事業者として計575社を紹介している。本コラムでは、2024年版に新たに追加された「生成AIモデル(Generative AI Models)」「面接インテリジェンス(Interview Intelligence)」「面接スケジューリング(Interview Scheduling)」の3領域について、その概要、主要なサービス事業者、製品・サービスの特徴、ビジネスモデルを解説する。
2024年版での変更点は主に下記の4点である。
1. 「生成AIモデル(Generative AI Models)」を新設
生成AIは、採用プロセスにおいて多くの場面で活用されている。魅力的で効果的な求人広告の原稿やスカウトメールの文章案の自動生成、SNS投稿用の画像生成、大量の履歴書のスクリーニング、履歴書の分析、適合度順による候補者の表示を行い、採用業務を効率化する。生成AIモデルには、OpenAIなど広範囲に対応するものだけでなく、Tombo AIのような採用業務に特化したものもある。
2. 「面接管理ツール(Interview Management Tools)」を「面接インテリジェンス(Interview Intelligence)」と「面接スケジューリング(Interview Scheduling)」に分割
従来の「面接管理ツール」の機能が2つに分けられた。1つ目は、AIがオンライン面接の内容の自動要約や面接担当者の会話の分析を行い、評価や情報共有の効率化、面接の質の向上をサポートするサービスである。これを「面接インテリジェンス」と呼称する。2つ目は、AIが面接の日程を自動で調整するサービスで、これを「面接スケジューリング」とした。
3. 「オンラインイベント」を削除
就職フェア、展示会、マーケティングイベント、大学のオープンキャンパス、企業の研修など、さまざまなイベントのウェブページ制作、開催、管理を行う「オンラインイベント」領域が削除された。コロナ禍の影響で対面での採用イベントが難しくなり、企業はオンラインサービスを利用していたが、最近ではサービス事業者がCRM(採用候補者管理システム)や人事管理システムの企業に買収されるなどして、採用イベントに特化したプラットフォームが減少したためである。
4. 個人向けの就職支援
「個人向けキャリアマネジメント」に分類されていた「ジョブサーチオーガナイザー」「キャリアアドバイス&コーチング」「ソーシャルCV & レジュメ・ビルダー」の3領域が削除された。これは、サービス事業者の入れ替わりが激しく、事業拡大が見込めないためである。
最近では、学歴に関係なく求職者のスキル開発や自律的学習、ネットワーキング、デジタルID管理、資格取得を支援するサービスが登場しており、将来的にはこれらのツールがHRテクノロジーマップに掲載される可能性がある。
図 HRテクノロジーマップ(2024)
出所:TTL "Talent Acquisition Technology Ecosystem 12(2024.4)"を基に作成(2024.8)
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HRテクノロジーマップは、2つの軸から成る。横軸は、タレントアクイジション(人材獲得)の工程で、1)ソーシング(候補者の発掘)、2)エンゲージメント(関係性の構築)、3)選考、4)採用、の4つのステージがある。縦軸は、対象で、内部人材向けと、外部人材向けのテクノロジーを表す。
グローバルセンター
杉田真樹(リサーチャー)