AIで面接の日程調整を自動化し、業務効率や候補者体験を向上させる――面接スケジューリング

2024年09月20日

Interview Intelligence 代表的なサービス

面接スケジューリングは、AIを活用してオンラインや対面での面接の日程調整を自動化し、人事の業務効率を向上させるサービスである。GoogleカレンダーやMicrosoft Outlook予定表と連携し、カレンダーから空いている日時を自動抽出して、求職者に提示する。

面接担当者と求職者のスケジュールが合わない場合、従来のメールでの日程調整では、双方の都合を確認するために何度もやりとりが発生し、手間がかかる。
日程調整が長引くと、求職者が選考を辞退したり、また応募人数が増えるとダブルブッキングや誤った時間を伝えるなどのミスが発生したりする可能性も高まる。さらに、複数人の面接担当者で手分けして行う場合、担当者の面接回数に偏りが生じ、特定の人に業務が集中してしまうこともある。
面接スケジューリングを活用することで、業務効率を向上させ、面接担当者の負荷を軽減することができる。短期間で日程調整を行えるため、候補者体験の向上にもつながる。

サービス事業者は主に下記の機能を提供する。

  • 面接に関する定型業務の自動化
  • 面接担当者の空き日程や予定を自動で判別
  • AIが面接担当者の空き日程や職種、面接の上限数を基に、面接を自動で振り分け
  • ZoomやMicrosoft Teamsのオンライン面接の招待URLの自動発行
  • 人事による求職者向け専用ページの作成
  • 面接担当者専用ページの提供
  • 面接についての感想を収集する求職者アンケートの実施
  • 日程調整にかかった日数などを示すアナリティクスの提供

サービス事業者の概要は下記のとおりである。

  • 面接のスケジューリングを自動化する。電話でのスクリーニング、対面やオンラインでの個別およびパネル面接に対応し、日程調整やZoom、Microsoft Teamsの招待URLの発行、会議室の予約を行う。(Evie
  • 面接のスケジューリングを行う。面接担当者の空き時間やタイムゾーンを基に候補日時を抽出し、求職者に提示する。日時が確定した後、求職者にメールやショートメール(SMS)で招待URLを自動送信する。(Rooster
  • 面接の日程調整、ZoomやMicrosoft Teamsの招待URLの発行、求職者への面接担当者の情報送信を自動化する。求職者向けの専用ページやアンケート機能も備えている。(Guide
  • 人事、営業、カスタマーサービス向けの会議スケジューリングプラットフォーム。個別、グループ、パネルでの面接に対応する。(OnceHub

人事との関連性

  • 面接に関する定型業務を自動化できるため、特に大量採用を行う際の選考を効率化できる。
  • AIが面接担当者の空き状況を自動判定するため、面接担当者の予定表を確認したり、メールで都合を尋ねたりする手間を減らすことができる。
  • 自動振り分け機能により、面接担当者の業務量を均等に保つことができる。
  • 提示された候補日時のなかから求職者が日程を選ぶため、人事は調整の手間を省ける。
  • スムーズな日程調整により、選考スピードが上がり、他社よりも早く優秀な人材を確保することができる。

サービス例

1. GoodTime

面接スケジューリングプラットフォーム。主な機能は、面接担当者の登録、AIによるスケジューリング、業務フローの自動化である。
面接担当者の登録では、担当者が自身の所属部署、勤務地、タイムゾーン、面接可能な曜日や時間帯、1日または1週間当たりの面接数の上限、LinkedInのプロフィールを登録する。職級やスキル、出身大学などをタグ付けすることも可能である。また、「有給休暇」「出張」「アポ」などのキーワードを登録し、面接を入れられたくない日時を指定できる。「ランチ」など調整可能な予定についてもキーワードを指定できる。

AIがGoogleカレンダーやMicrosoft Outlookと連携し、面接担当者の空き時間やカレンダーに入力されているキーワード、GoodTimeの登録情報を基に面接を自動で振り分ける。
Zoom、Microsoft Teams、Google Meetとも連携し、招待用URLを自動発行する。

求職者は専用ページで、面接前に準備すること、面接担当者のプロフィール、会社の紹介動画などをまとめて確認できる。ワンクリックで日時変更を依頼したり、次回の面接の希望日時を選択したりすることもできる。また人事にチャットで問い合わせしたり、面接後にアンケートに回答したりできる。

人事は、求職者へのリマインダーや面接日時の確定を知らせる通知の送信など、定型業務フローをシステムで作成し、自動化できる。たとえば「面接後に求職者にアンケート依頼メールを送る」など、人事が事前に設定したタイミングで業務が自動で実行される。
また、グローバル採用ではWhatsApp、PCよりも携帯電話の利用のほうが多い職種や求職者層にはSMSなど、メッセージの配信形式(メール、SMS、WhatsApp、求職者専用ページ)や時間帯も事前に指定できる。

GoodTime その他の機能

  • 面接担当者専用ページ:求職者のLinkedInプロフィールや、AIによる履歴書と職務経歴書の要約などが1つのページにまとまっているため、面接担当者は必要な情報をすぐに確認できる。
  • 複数の面接調整:1人の求職者に対して、複数の担当者との面接を1~2日にかけて行う場合、AIが求職者の希望と面接担当者の空き日程を基に、複数の日程パターンを提案する。
  • 面接手当の支給:Uberのクーポンを求職者へのカレンダー招待に添付する機能もあり、企業は競合他社と差別化を図ることができる。
  • アナリティクス機能:人事がダッシュボードで面接の日程調整に関する進捗や時間など、主要な指標を職種別や面接担当者別に確認できる。AIがボトルネックを検知し、「代替要員の自動補充機能を活用しましょう」など改善アクションを提案する。

GoodTimeでのAIスケジューリング

  1. AIが面接者の登録情報を基に、面接担当者を自動選定し、カレンダーから候補日時を抽出する。
  2. 担当者に面接の依頼を送る。
  3. 依頼が辞退された場合、AIが代替要員を見つける。
  4. システムが求職者に面接の候補日時を提示する。
  5. 求職者は、希望の日時を選択する。
  6. 日時が確定すると、システムが面接担当者のLinkedInのプロフィールを含む招待メールを求職者に自動送信する。面接担当者にもカレンダー招待を自動送信する。

顧客は、Spotify、Slack、Sony Interactive Entertainment、Pinterest、Okta、HubSpotなど、300社以上。

2. ModernLoop

面接スケジューリングプラットフォーム。GoogleカレンダーやMicrosoft Outlook予定表と連携し、AIが面接担当者の空き時間を判別して、面接を自動で割り当てる。
さらに、ZoomやMicrosoft Teamsなどのオンライン会議システムだけでなく、HackerRankやCodilityといったコーディング面接プラットフォームとも連携し、招待用のURLを求職者と面接担当者に自動で発行する。面接担当者は、Slackを通じて通知を受けることもできる。
求職者からのフィードバックの自動収集やアナリティクスの機能もある。
顧客はEventbrite、Box、Instacart、Brex、Lattice、Nextdoorなど。Instacartでは、マニュアル作業でスケジューリングを行っていたため、手間がかかりミスが発生しやすく、候補者体験に悪影響を与えていた。ModernLoopの導入後、人員を増やすことなく、1週間に行う面接数が168件から377件と2倍以上に増えた。 

ビジネスモデル(課金形態)

企業がサービス事業者にシステム利用料を支払う
企業が面接の日程調整を自動化するシステムの利用料を支払う。料金体系はサービス事業者によって異なるが、たとえばOnceHubの場合、月額利用料金は従業員1人当たり10ドルからとなっている。

GoodTimeのビジネスモデル図

今後の展望

2016年のリクルートワークス研究所の調査では、当時は人事が面接担当者の予定表を見比べながら日時を調整する必要があった。しかし、技術が進化し、現在ではAIが担当者の空き時間だけでなく、ほかの予定の内容も把握し、自動で均等に面接を割り当てることができるようになっている。
Future Market Insightsによると、世界の面接スケジューリングソフトウエア市場は、2023年の約6億1830万ドルから、2033年には108億1640万ドルに達すると予測されている。
スケジューリング業務は一見地味な作業だが、時間や労力がかかる。ROI(投資対効果)が明確に表れる面接スケジューリングに投資する企業は今後さらに増えると考えられる。

グローバルセンター

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