AIが質問の作成や内容要約、面接官へのコーチングなど面接全般をサポート――面接インテリジェンス

2024年09月09日

Interview Intelligence 代表的なサービス

面接インテリジェンスプラットフォームは、AIがオンライン面接の内容を自動で要約し、面接担当者の会話を分析する。求職者の評価や情報共有を効率化し、面接の質を向上させるサービスである。
主な機能には、AIによる質問の作成、オンライン面接の自動録画、面接内容の自動文字起こし、AIによる面接内容の要約、面接ガイド、面接のハイライト動画の作成、コーチングなどがある。

〈サービス事業者が提供する機能〉
面接インテリジェンスサービス事業者が提供する機能
面接前に、AIが質問の作成をサポートする。面接中は、面接ガイド機能によって画面上に質問リストが表示される。オンライン会議システムを利用した面接に対応し、録画、文字起こし、要約を自動で行う。
ハイライト機能では、企業が事前に選択した応募動機、スキル、希望職種や給与額、職歴、求職者からの質問内容などの重要なトピックを、AIが録画データから抽出し、トピックごとに動画を分割して表示する。これにより、企業はすべての録画や文字起こしを確認する必要がなくなり、各トピックの動画を再生するだけで済む。
面接後には、面接担当者が求職者に話す時間を十分に与えているか、不適切な表現や質問、バイアスがないかをAIが分析する。
さらに、AIが改善点の指摘やアドバイスを行うコーチング機能や、面接に必要な知識とスキルを面接担当者が動画で学ぶコンテンツを提供する事業者もある。
このように、AIは面接に関するさまざまなサポートを行うが、最終的な選考は人間が行う。

面接の日程調整を自動化するサービスについては、次回の「面接スケジューリング」で詳しく解説する。

サービス事業者の概要は下記のとおりである。

  • 候補者スクリーニングおよび面接インテリジェンスプラットフォーム。AIがジョブディスクリプション(職務記述書)に基づいて質問を作成し、電話やビデオ通話による面接の文字起こしや要約を自動で行う。(Honeit
  • 採用プロセスから無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)を取り除き、公平な選考をサポートするプラットフォーム。人事は、ポジションに適した専門性を持つ面接担当者を画面上で選択し、ライブラリから適切な質問を選んで、面接担当者の専門性に応じて質問を振り分けることができる。(TalVista

人事との関連性

  • AIによる質問作成機能:人事は面接評価シートを作成する手間を減らすことができる。
  • 面接ガイド機能:質問の聞き漏れを防ぎ、複数の面接担当者が同じポジションの面接を行う際に、質問内容のばらつきをなくすことができる。
  • 文字起こしと要約機能:面接担当者は求職者とのコミュニケーションや自社の魅力をアピールすることに集中できる。
  • 情報共有の簡便化:面接に同席していない人事担当者や二次面接の担当者と簡単に情報を共有し、求職者を客観的に判断できる。これにより、選考にかかる時間を短縮し、求職者の辞退を防ぐことができる。
  • 動画研修とコーチング機能:面接担当者のスキルアップを図る。

サービス例

1. BrightHire

面接インテリジェンスプラットフォーム。AIが、ジョブディスクリプションに基づいて面接の質問を作成し、面接中に質問リストを画面上に表示する。また、面接を録画し、文字起こしや要約を自動で作成する。
Zoomと連携可能なアプリ「BrightHire Interview Assistant」では、Zoomで面接が開始されると、自動で録画や文字起こしを行い、ハイライト表示する。
1つのポジションに複数の求職者がいる場合、AIが面接の要約やハイライトを項目別に並列表示し、企業は求職者を比較評価できる。
面接担当者のパフォーマンスを分析する機能もあり、面接担当者が予定通りに面接を開始できたか、面接中に求職者とどの位話をしたか、質問リストをどのくらい網羅できたかなどを数値で表す。平均を下回った場合はアラートを表示し、上回った場合はAIが面接担当者をほめる機能もある。
社内のほかの面接担当者の動画を見て、シャドウイングするトレーニング機能もある。
SmartRecruitersやWorkdayなど約20種類のATS(求職者追跡システム)と連携し、面接担当者は、日常業務で利用するATS上でハイライト動画や面接担当者の評価コメントを確認できる。
顧客は、Canva、Remote、Zapier、Multiverse、FalconX、HCA Healthcare、Tekionなど。

2. Pillar

面接インテリジェンスプラットフォーム。ZoomやMicrosoft Teamsなどのオンライン会議システムに対応する。企業は、ライブラリから採用で重視するスキルに基づいた面接の質問を選び、質問リストを作成できる。また、ジョブディスクリプションに基づいてAIが適切な質問リストを自動作成する機能もある。
面接中は、オンライン会議システム上で質問リストを表示し、面接担当者をガイドする。さらに、AIが文字起こしや要約を自動で作成する。
面接担当者は、画面上に表示されるスキル(コミュニケーション力、コンフリクトマネジメント力、時間管理力など)に対し、「いいね」「よくない」のアイコンをクリックして面接中に求職者を評価し、コメントを入力できるため、評価シートに記入して提出する手間が省ける。
面接後は、生成AIに対話形式で質問することで、二次面接で追加すべき質問が提案される。
面接担当者向けのコーチング機能では、求職者が面接中に自分のスキルや資質を十分にアピールできているか、面接担当者が不適切な言葉を使っていないかなど、AIが改善点を指摘し、アドバイスする。
また、GreenhouseやLeverなどの主要なATSと連携が可能である。
あるグローバルITソフトウエア企業では、5,000人の面接担当者がそれぞれ独自の質問リストを作成していたがPillarを導入したことで、質問項目があらかじめ決められているため、面接担当者による評価のばらつきがなくなった。人事は、面接担当者から評価を即収集できるようになり、採用にかかる時間が短縮された。
顧客はWistiaやTerminals.io などの企業や人材紹介会社。    

ビジネスモデル(課金形態)

企業がサービス事業者にシステム利用料を支払う
企業が面接内容の要約や面接官の会話の内容を分析するシステムの利用料を支払う。料金体系はサービス事業者によって異なるが、BrightHireの場合、月額利用料金は従業員1人当たり60ドル。

面接インテリジェンスのビジネスモデル図

今後の展望

面接インテリジェンスプラットフォームは、パンデミックの影響でリモートワークやオンライン面接が増えた2021年頃から登場したサービスである。
2017年のリクルートワークス研究所の「面接管理ツール」の調査では、システム上で面接用の質問を作成したり、面接担当者が求職者について入力した評価やメモを次の面接担当者に引き継ぐサービスがあった。その後、AIが質問の作成や面接担当者の面接スキルの分析を行う機能が追加され、ツールが高度化している。
一部の企業では、最終面接を対面で行うなど、従来の面接形式に戻る動きも見られるが、オンライン面接は今後も続くと予想され、面接インテリジェンスプラットフォームの需要は高いと考えられる。
2023年には、動画面接プラットフォームのHireViewが面接インテリジェンスの機能を持つModern Hireを買収した。今後、ほかの動画面接プラットフォームも自社開発やM&Aを通じて面接インテリジェンスの機能を追加すると予想される。上述のサービス事業者は、機能を充実させ、他社との差別化を図らないと、ほかの事業者に吸収されるなどして、市場から淘汰される可能性がある。

グローバルセンター

関連する記事