テンポラリーレイバーマーケットプレイス（オンサイト）

Temporary Labor Marketplace-Onsite
代表的なサービス
出所：TTL "Talent Acquisition Technology Ecosystem 11（2023.1）

テンポラリーレイバーマーケットプレイス（オンサイト）は、企業と臨時の仕事を求める労働者をつなぐプラットフォームである。主に、デリバリーや製造、小売り、物流、イベント、医療などの時給制の求人を掲載する。臨時労働者は、勤務地や就業日、給与額などを基に、自分の希望に合った仕事を容易に見つけることができる。

臨時労働者向けのアプリでは、プロフィール・履歴書・稼働可能日の登録、求人の検索、新着求人の通知、応募、始業・終業時刻や勤務時間中の位置情報の記録、企業の評価などができる。
企業側のシステムは、求人の投稿、登録者の検索、お気に入りの臨時労働者への求人情報の優先配信、AIによるマッチングツールの利用、勤務シフトの管理、臨時労働者の評価などの機能がある。採用選考にあたっては、臨時労働者の評価やプロフィール、質問への回答・面接結果を参考にできる。サービス事業者がE-Verify（※1）による身元調査や、薬物検査など、臨時労働者のバックグラウンドチェックを行うところもある。業務完了後、企業が臨時労働者の位置情報や労働時間などを確認し、報酬の支払いを承認すると、サービス事業者から臨時労働者に報酬が支払われる。

サービス事業者や仕事によるが、臨時労働者が就業期間中にサービス事業者の従業員（W-2）となり、残業手当や労災保険、医療保険、最低賃金、401（k）制度などが適用される場合は、サービス事業者が臨時労働者の報酬から連邦税など税金を源泉徴収し、納税する。W-2向けの求人とフリーランサー（1099）向けの求人の両方を扱うサービス事業者もある（※2）。

サービス事業者の概要は下記のとおりである。

• サービス、医療、小売り、教育、施設管理などW-2向けの時給制や短期の求人を掲載するオンデマンドスタッフィングプラットフォーム。稼働可能日やスキルなどを基にAIが求人と臨時労働者をマッチングする。臨時労働者は、残業手当が支給され、労災保険、医療保険などが適用される。（Jitjatjo）
• 倉庫、建設、デリバリー、イベント、清掃、事務などフリーランサー向けとW-2向けに時給制や固定給の求人を掲載する。履歴書の登録は不要だが、W-2向けの求人には、面接、スキルテスト、職歴チェックなどが必要なものもある。フレックス有給休暇制度や、自宅待機・隔離などで働けなくなった人には最大14日間の休業補償がある。（Wonolo）
• 倉庫、軽工業、製造、物流、カスタマーサービスなどW-2向けの求人を掲載する。臨時労働者は労災保険の適用となり、賠償責任保険に加入できる。（swipejobs）
• 倉庫、軽工業、デリバリー、イベント、フードサービス、清掃、ケータリングなどW-2向けの求人を掲載する。臨時労働者の面接やバックグラウンドチェックを行う。臨時労働者は、最低賃金や労災保険、医療保険が適用される。（Bluecrew）
• デリバリー、イベント、小売り、倉庫、軽工業、清掃などの時給制のフリーランサー向けの求人を掲載する。臨時労働者は、賠償責任保険や専門職賠償責任保険（※3）、自動車保険に加入できる。（Jobble）
• コールセンターや倉庫などフリーランサー向けの仕事を掲載する。登録者数は50カ国で50万人超。（Shiftsmart）
• 太陽光・風力発電、建設、石油、ガスなどフリーランサー向けの求人を掲載する。臨時労働者は、医療保険や401（k）などに加入できる。（Workrise）
• 看護師、助産師、小児科医、医療助手の時給制の求人を掲載する。（Enferm）
• トラベルナース（※4）やアライドヘルス（言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、放射線技師など）のW-2向け求人情報を掲載する。臨時労働者は、401（k）や医療保険、専門職賠償責任保険に加入できる。（Trusted Health）

人事との関連性

企業は急な欠員の発生時や繁忙期など、臨時労働者の需要が生じた際にアプリを利用して外部人材の調達や管理を容易に行える。労働者を直接雇用するよりも、費用を抑えることができる。また、企業は自ら求人を投稿して、登録者の中から適材を探すことができるため、人材派遣会社を利用するよりも早く人材を確保できる。

サービス例

1. Nomad Health

トラベルナースやアライドヘルス向けの臨時の求人情報を掲載する医療系のデジタルマーケットプレイスである。登録者数は30万人を超える。
臨時労働者は、アプリで履歴書などを登録し、専門分野・勤務地・勤務開始日・契約期間・報酬単価などで求人を検索し、応募する。Nomad Healthが応募書類を確認した後に、医療機関が書類選考や動画面接などを行う。医療機関が採用決定すると、臨時労働者はアプリにBLS（一次救命措置）のEカード、運転免許証などをアップロードし、Nomad Healthが本人確認を行う。
就業期間中、臨時労働者は、Nomad Healthの従業員（W-2）となり、残業手当が支給され、医療保険、歯科保険、眼科保険、賠償責任保険、401（k）制度に加入できる。保険は就業期間中のみ有効で、業務完了後、次の医療機関での就業開始まで14日以上空く場合は保険への再加入が必要となる。Nomad Healthは、臨時労働者に自宅から就業地までの交通費（最大1000ドル）や、就業地での住居費・光熱費を支給する。医療機関が特定の免許や資格の取得を義務付けている場合は、その費用も支給する。
1つの医療機関での就業期間は通常13週間で、Nomad Healthから臨時労働者に週払いで報酬が支払われる。Nomad Healthで働くトラベルナースの報酬金額は、週当たり平均2677ドルである。
医療機関が支払う仲介料は、臨時労働者の報酬の15％である（2018年時点）。顧客は、Hallmark Health Care Solutionsなど。

2. Field Nation

ケーブル、PC、デジタルサイネージ、防犯カメラの設置・修理・交換などを行うフィールドおよびサービスエンジニアとして働くフリーランサー向けの求人を掲載する、オンデマンドレイバーマーケットプレイスである。求人掲載件数は米国とカナダで約140万件、登録者数は10万人を超える。臨時労働者は業務災害保険（※5）と賠償責任保険に加入できる。
Field Nationは、企業への請求書の作成や送付を行い、業務完了後、臨時労働者にPayPalまたは口座振替で、週払いで報酬を支払う。
企業は、ウェブ上で業務の発注、スケジュール、報酬の支払いを管理できる。業務完了後、企業と臨時労働者がお互いの評価をつける。
企業はField Nationに仲介料を支払う。企業向けの料金プランはPlus、Premier、Enterpriseの3種類があり、料金は業務発注額の3％以上となっている。臨時労働者は、サービス料として受注額の10％以上をField Nationに支払う。顧客は、FujitsuやService Expressなど7000社を超える。

ビジネスモデル（課金形態）

企業には、サービス事業者との契約やプラットフォーム登録料などの初期費用、求人掲載料は発生しない。また、多くのサービス事業者が従量課金制を取り入れており、臨時労働者の就業時間分を企業に請求する。サービス事業者は、企業に仲介料と臨時労働者への報酬を請求し、臨時労働者にその報酬を支払う。サービス事業者によっては、臨時労働者にもサービス料を請求するところもある。

1. 企業がサービス事業者に仲介料を支払う
企業が、臨時労働者を確保するための仲介料をサービス事業者に支払う（Nomad Health、Jitjatjo、Bluecrewなど）。

2. 企業と臨時労働者がサービス事業者に仲介料やサービス料を支払う
企業は、臨時労働者を確保するための仲介料をサービス事業者に支払う。臨時労働者は、企業への請求書発行などの業務を代行するサービス料をサービス事業者に支払う（Field Nation）。

今後の展望

MBO Partnersの2022年の調査によると、企業の労働力の中で臨時労働者（フリーランサー、SOWコンサルタント、契約社員、派遣社員など）が占める割合は約28％であった。また、今後5年間に臨時労働者の利用が「大幅に増加するだろう」と回答した企業は77%、一方、「減少する」は6％と、臨時労働者の利用意向は高い。柔軟に労働力を調整できるテンポラリーレイバーマーケットプレイス（オンサイト）のニーズは大きく、当面は拡大が見込まれる。

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