【Tech Stack Interview】複合企業E社(TAグローバルバイスプレジデント)

2019年12月04日

E社は、ハイテク製品やサービスの大手メーカーで従業員数は20万人を超える。独自のテックスタック(複数のテクノロジーを組み合わせて活用する)について、同社のTA(Talent Acquisition)グローバルバイスプレジデントに語っていただいた。

インタビュアー=ジェリー・クリスピン 翻訳=杉田 万起 TEXT=村田 弘美

CodeVueでコード採用

Q テックスタックについて、ATS(応募者追跡システム)とCRM(採用候補者管理システム)はどの製品を利用していますか?
ATSは、現在Workday Recruiting[1]の導入準備をしています。2018年にシンガポールで試行を実施しました。シンガポールはすべての関連会社が拠点を置いている国で、規模的にもパイロットテストを行うには最適でした。2019年に入り、年間採用人数が1万人超と、E社の採用において最大規模の米国でも導入しました。今年10月1日までに、さらにカナダ、メキシコ、ポーランド、英国およびアイルランド、中国で導入する予定です。この6つの地域を合計すると、E社の採用人数の約85%を占めることになります。
CRMは、エグゼクティブの採用にのみ利用しています。Workday Recruitingの導入完了後に、次のステップとして追加するツールを検討する予定です。CRMもそのツールリストの上位に入っています。

Q 採用マーケティングや人材供給パイプラインマネジメンで導入を検討している特定のブランドはありますか?
採用マーケティングやソーシングアプリケーションについては、特定のツールは使用せず、大手求人広告代理店のTMP Worldwideに協力していただいています。人材供給パイプラインマネジメントに関しては、調和のとれたプロセスの設計を進めていて、すべての選択肢を検討しています。時給職から、新卒、中途、エグゼクティブまで、すべての採用領域のワークストリームに関するレポートがまもなく完成するので、これをもとにそれぞれの領域ごとに導入する採用テクノロジーについて検討する予定です。

Q 選考やアセスメント、オンボーディングで利用している製品を教えてください。
選考とアセスメントでは、2018年にCodeVue[2]を導入し、一部のデジタル領域とテクニカル領域の採用において活用しています。エグゼクティブのアセスメントには厳選した結果、Hogan[3]を利用しています。オンボーディングにはWorkday[4]を利用しています。

Q E社のテックスタックでは、何種類の製品を利用していますか?
Yello[5]、Brazen[6]、RolePoint[7]なども利用しています。E社が管理しているものは、合計すると10種類未満です。その他に、提携しているRPO(採用プロセスアウトソーシング)会社も数種類の製品を利用しており、E社のテックスタックの中で重要な一部を占めています。採用テクノロジーの年間予算は、1,000万ドル超です。

Q これまで所属した会社で、採用活動に大きなインパクトを与えたテクノロジー製品は何ですか?
非常に役に立っているのはCodeVueです。過去に利用した製品の中では、Jobvite[8]もよいパートナーでした。E社では利用していませんが、AIにも注目しています。コンプライアンスの観点で導入についてかなり慎重にならざるを得ないのですが、今後の展開に注目しています。

RPOサービスも3社利用

Q 2019年の採用予定人数、そして採用を担当するTAチームの人数と職種について教えてください。
グローバル全体で約2万人の採用を予定しています。TAチームの人数は、RPO会社の人員約200人を合わせると、350人程度です。職種は、従来のリクルーター、ソーサー、コーディネーターに加えて、テクノロジーアナリストや、採用ブランディング、採用マーケティング、候補者体験、導入するテクノロジーを選ぶ担当もいます。

Q コンティンジェントやギグワーカーはどのくらい活用していますか?
多くはありません。コンティンジェント従業員の採用は、プロキュアメント部門が管理しています。TAチームは、特定のテクニカルスキルを持つ人材を有期雇用契約で雇いたい、という戦略的な採用のときだけ関与しています。しかし、3~5年後にはこの状況も変わると思います。

Q RPOは何社利用していますか?
現時点では3社ですが、近日中に2社になる予定です。

人間同士の交流を重視

Q 自動化している採用プロセスはありますか?
完全に自動化されたプロセスはありません。自動化についてのアイディアはありますが、現在は大規模な組織変革を進めている最中なので、来年以降のことはまだ考えられません。3~5年後に、3~4割を自動化できればよいと思っています。私はリクルーティンの領域で20年以上の経験がありますが、これまでを振り返ってみると、自動化ツールが誕生すればするほど、人間的要素やタッチポイントがより重要になっていきました。プロセスの一部は自動化されますが、他の多くの部分ではヒューマンタッチが増加すると思います。

Q 自動化されないと思う採用プロセスは何ですか?
面接プロセスを完全にデジタル化し、オンデマンドビデオ面接を行った後にオファーを出している会社もあります。E社でも、場合によっては自動化することもあります。ただ、ビデオ面接では実際に会社を訪問するなどの経験は得られません。実際に従業員と会って何かを体験する、社内の雰囲気を感じることで、社風が分かります。カルチャーフィットは、入社後に教わることも、開発することも決してできません。とくに、高い役職の採用を行う場合では、人間同士の交流や対面がより重要となります。リクルーターが候補者のスキルやコンピテンシー、適性を見て、キャリアに関する将来の要望とポジションをマッチさせるなど、採用プロセス全体を通して候補者をサポートします。こういった重要な部分を自動化することは不可能だと思います。

[1]Workday Recruiting:HCMクラウドシステムプロバイダーのWorkdayが提供するATS。適任の候補者を社内外から探し、選定するまでの一連の業務をサポート。採用プロセス全体を可視化する。
[2]CodeVue:プログラミングテストでエンジニアのコーディングスキルを測るHireVueの有料オプション機能。ライブまたは録画面接の中でテストをリモートで実施する。13種類のプログラミング言語に対応。自動採点機能や、プログラミングの知識を持たないリクルーターでもテストの不正を特定できる機能などを備える。
[3]Hogan:正式社名は「Hogan Assessments」。通常の状態での行動スタイルを測るブライトサイド、ストレス状況下での行動傾向を測るダークサイド(疑い深い、興奮しやすいなど)、意思決定スタイル、論理的思考力、動機付け要因や価値観、興味関心を診断する様々なアセスメントサービスを提供する
[4]Workday:人事から採用、タレントマネジメント、ラーニング、労働力管理、給与計算管理、報酬管理までを網羅し、人材、労働力、コストを一目で把握できる統合型HCMクラウドシステムのプロバイダー。

[5]Yello:人材の発掘、スケジューリング、評価、管理を自動化する採用プラットフォーム。AI搭載の日程管理ソフトウェア「Advance」は、候補者が都合のよい日時を選択するランディングページの制作、自動チャットによる候補者のスクリーニング、送信メッセージのテンプレートといった機能を備え、GmailやOutlookのカレンダーと同期。予定が近づくとリマインダーを自動送信する。
[6]Brazen:企業向けチャットソフトウェア。キャリアサイトや求人広告にチャット専用ランディングページのリンクを掲載し、求職者とチャットできる。バーチャルキャリアフェアなどのオンラインイベントで、候補者がリクルーター、従業員アンバサダー、採用部署のマネジャーと事前に決められた日時にグループチャットで交流する機能もある。
[7]RolePoint:リファラル採用プラットフォーム。Google の機械学習機能「Google Cloud Job Discovery」を活用しており、従業員は求人情報を簡単に検索できる。リクルーターが従業員へメッセージを送るたびにアルゴリズムが学習し、リファラル制度への参加を促すメッセージを作成する。従業員は自身が紹介した候補者の選考状況を定期的に受け取る。
[8]Jobvite:ATS「Jobvite Hire」のプロバイダー。採用案件や候補者情報や選考状況の管理、AIによる候補者の自動検索や面接の日程調整、従業員の人脈を介した採用情報の配信といった機能を備える。その他、CRM「Jobvite Engage」、ビデオ面接「Jobvite Video」、キャリアサイトの制作「Jobvite Brand」、自動テキストリクルーティング「Jobvite Text」、オンボーディング「Jobvite Onboard」も提供。2019年に買収したTalemetry(採用マーケティングプラットフォーム)、RolePoint(リファラル採用プラットフォーム)、Canvas(チャットボット)の製品技術をもとに、エンド・ツー・エンドの人材獲得アプリケーションを開発している。Universal Music Group、LinkedIn、Schneider Electricといった企業が利用している。

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