英米のオンラインインターンシップと面接の事例(1)
英国のオンラインインターンシップ
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、英国では大手企業や多国籍企業はもとより、中小企業も新卒の学生を対象としたオンラインインターンシップに乗り出した。オンラインインターンシップには、企業自らが実施するものと、サービスプロバイダーを介して提供されるものとがある。オンラインインターンシップを実施している業界は、金融やコンサルティング、IT、法律、マーケティング、小売などである。サービスプロバイダーが提供するオンラインインターンシップは、大規模なイベント的なものから、数時間で完了するeラーニングのようなもの、ウェビナーや語学レッスンといったほかのサービスとの抱き合わせで有料のものなど、様々である。
オンラインインターンシップの多くは、参加者がインターンシップを修了すると証明書を発行する。参加者はこの証明書を履歴書やLinkedInのプロフィールに掲載できるとされており、いわゆる箔付け的な要素を担っていると考えられる。
企業のオンラインインターンシップ
いずれの企業においても応募方法は同様で、多くの場合、応募者は履歴書、カバーレター、申込書を提出する。オンラインインターンシップの内容は企業により様々であるが、以下の内容を含むことが多い。
- スーパーバイザーまたはメンターとの定期的なオンライン会議
- 個々のプロジェクトワーク(オフィス環境でのインターンシップでしばしば見られるような小さな仕事ではなく、大きめのプロジェクトに専念する)
- 個別指導やバーチャルツアー
- 従業員とのネットワーキングセッションやチャット
- eラーニングプラットフォームで提供されるトレーニング(ソフトスキルやExcelなどのハードスキルなど)
- チーム飲み会やコーヒーブレイク、クイズといったソーシャルイベント
インターン生には、メンター、指導員、トレーナーの役割を担う担当者が従業員の中から割り当てられる。担当者はインターン生に業務を割り振り、完了した業務に対してフィードバックする。また、インターン生からの質問に対する回答なども行う。
オンラインインターンシップの期間はおおむね1~3カ月間だが、6~12カ月間のケースもある。就労時間は企業によってまちまちだが、週当たり20~30時間以上が多い。インターン生の報酬については、通常のインターンシップと同様に企業によって異なり、無給の場合もある。
EYはインターンシップの大半をオンライン形式で実施、デロイトはオンラインコースを提供
EYは2020年5月、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、例年世界各国で提供されるインターンシップ1万5000件の大半をオンライン形式で実施すると発表した。オンライン形式でのインターンシップには通常のインターンシップと同様にトレーニングやクライアントワークも含まれる。インターン生には、EY入社2年以内の「ピアカウンセラー」と職務経験豊富な「レポーティングカウンセラー」が割り当てられ、インターン生の対応に当たる。このほか、オンラインでのネットワーキング・イベントも実施された。インターンシップの期間は通常1~6週間で、地域により異なる。EYのオンラインインターンシップは有償である。
デロイトは、英国での2020年のサマーインターンシップを中止した。参加を予定していた350人の学生に対して、お詫び金として本来のインターンシップの報酬の6分の1に相当する500ポンドが支払われた。デロイトはまた、インターンシップへの参加を予定していた学生のうち希望者に対して、4週間のオンラインのトレーニングコースを提供した。
サービスプロバイダーが提供するオンラインインターンシップ:Internship Experience UK
Internship Experience UKは、新型コロナウイルスの感染拡大を機にマッチングサービスのBright Networkが主催した英国最大級のオンラインインターンシッププログラムである。ゴールドマン・サックスやJPモルガン、アクセンチュア、アマゾン、グーグル、EY、PwCなど、国内外の大手企業が参加した。オンラインイベントプラットフォームのHopinを利用し、2020年6月後半から7月半ばまでの3週間にわたり、業界ごとに3日間のオンライン形式による就業体験の場を提供した。
オンラインインターンシップの業界カテゴリーは「投資銀行」「テクノロジー」「ビジネス、オペレーション、マーケティング」「金融・専門サービス」「コンサルティング」「法律」の6つ。カテゴリーごとの参加者は3000人を超え、合わせて4万5000人以上が参加した。参加対象はBright Networkに会員登録をしている18歳以上の学生(大学生以外の学生も可)や新卒者。より多くの学生にインターンシップの機会を提供すべく、参加者数を制限しなかった。ただし、参加者が多いため、企業と学生との1対1のネットワーキングの場は設けていない(後日、LinkedInで連絡を取り合うことは可能)。
オンラインインターンシップへの参加は無料である。なお、参加者のスキルアップやエンプロイアビリティの向上を目的としているため、参加者への報酬の支払いはない。
オンラインインターンシップでは、参加企業による各業界に特化したセミナーやワークショップ、Bright Networkによるスキルアップセッションが開催された。このほか、参加者は実地のインターンシップで与えられるのと同様のタスクをシミュレーションしたワークプロジェクトに参加したり、ビデオ通話を利用して他の参加者と1対1でワークプロジェクトに関するディスカッションやフィードバック、ネットワーキングを行ったりした。また、参加者には企業の担当者からサポートやアドバイスが提供された。インターンシップの最後には閉会式が行われ、参加者に修了証明書が発行された。
併せて、2020年7月後半にInternship Experience UKのオンデマンド版が公開された。内容についてはライブで実施されたものと同様で、2週間以内にセッションの聴講やワークプロジェクトを完了した参加者には証明書も発行された。また、2020年12月後半から2021年1月初頭にかけて、「ウインター・インターンシップ」と銘打ち、同様のプログラムがオンデマンド版で開催された。
オンラインインターンシップのスケジュールと参加企業(2020年8月時点)
出所:https://www.brightnetwork.co.uk/internship-experience-uk/
TEXT=長岡久美子