解雇、自主退職、契約終了などの労務手続きを自動化する退職プロセス管理サービスへの注目高まる、ほか
海外HR Techニュースリリースまとめ(2023年2月前半)
従業員の退職(オフボーディング)プロセスを管理する米国のプラットフォームを紹介する。「EOR」サービスのDeelはグローバルチームを一元管理する人事管理システム「Deel HR」を発表した。また、ノンデスクワーカー管理システムのSonaが、ノンデスクワーカー向けメッセンジャーアプリのYapsterを買収した。
【注目トピック】
Onwards HRなどの退職プロセス管理サービス、解雇や自主退職の労務手続きを自動化
米国には、従業員の退職プロセスを管理するプラットフォームがある。代表的なサービスには、Onwards HR、BambooHR、Bitscapeなどがある。
Onwards HRは、解雇手当の計算、解雇予告通知書や退職合意書などの文書の作成と送信、電子署名の進捗確認といった業務を自動化する。また、正当な解雇理由や解雇対象者の選定基準を文書化したり、選定プロセスを記録する機能などもあり、企業は訴訟などのリスクを軽減させることができる。
BambooHRは、解雇対象者による社内システムへのアクセス遮断や備品の回収といったタスクの担当者へのアサインや進捗確認、マネジャーや総務などへのリマインドの自動送信、退職面談の日時設定などの機能を備える。自主退職者や解雇者の離職理由や勤続年数、直属のマネジャー名、離職率などを一目で確認できる機能もある。企業は誰が、いつ、なぜ離職したのかを把握し、離職パターンを分析することで、離職を減らすことができる。
退職に関する法律は州や国によって異なり、全体を把握するのは難しい。また離職に関する労務手続きは通常、表計算ソフトなどを使ったマニュアル作業で行われることが多い。従業員によって労働条件が異なるため、退職手当の計算ミスなどが起きやすい。企業は、退職プロセス管理サービスを利用することで、法令違反や労使トラブル、退職手当の過払いなどのリスクを管理できる。また、部署間の業務フローを効率化し、退職プロセスにかかる時間や手間を削減できる。
【機能・サービス】
Deel、グローバルチームを一元管理する人事管理システム「Deel HR」を発表
世界各国の人材を雇用代行し、顧客企業に派遣する「EOR」サービスのDeelは、直接雇用の社員、EOR従業員、フリーランサーを1つのシステムで管理できるHRIS(人事情報システム)の「Deel HR」を発表した。Deel HRは、人件費や離職率などを記したレポートの作成、有給休暇や立替経費精算の申請の承認、従業員名簿の管理、PCなどの支給、バックグラウンドチェック、シェアオフィスの利用者の登録などの機能を備える。従業員数200人未満の企業は無料で利用できる。Slackプラグイン機能「Deel Engage」もあり、従業員はSlackからDeel HRにアクセスし、休暇の申請や1on1、候補者の紹介(リファラル採用)、従業員の検索などを簡単に行うことができる。
DeelのARR(年間経常収益)は2022年の1年間に5700万ドルから2億9500万ドルに増加。また企業評価額は120億ドルに達した。(1月23日Business Wire)
https://www.businesswire.com/news/home/20230123005215/en/Deel-Simplifies-Global-HR-with-New-Full-Stack-Platform
【M&A】
Sona、Yapsterを買収
医療、サービス、小売、物流業界などの現場で働くノンデスクワーカー管理システムのSonaは、会社とノンデスクワーカーのコミュニケーションを促進する社内メッセンジャーアプリのYapsterを買収した。この買収により、両社の合計ユーザー数は、5カ国で10万人を超える。英国のSonaは、シフトや勤怠の管理、給与の支払いなどの機能を備える。Yapsterは、会社の最新情報のフィード表示、従業員間の個別およびグループチャット、従業員名簿の検索などの機能を備え、Krispy Kreme、Nobu Hotels、BrewDog、Vision Expressなどの企業に利用されている。(1月17日Silicon Canals)
https://siliconcanals.com/news/startups/londons-sona-acquires-yapster/
【調査】
テック企業700社の給与情報を集約するウェブサイト「Comprehensive.io」、人気職種の平均給与レンジを発表
AmazonやGoogleなど大手テック企業約700社の給与情報をまとめた新しいウェブサイト「Comprehensive.io」が開設された。ニューヨーク市やカリフォルニア州などでは、企業が求人情報への給与の上限額と下限額の掲載を義務づける法律が制定されている。Comprehensive.ioは、クローラーが企業の採用情報ページを日々自動訪問し、新着求人情報をもとに数字を更新している。Comprehensive.ioによると、人気職種の平均年収レンジは下記のとおりである。
職種 | 平均年収レンジ |
プリンシパルソフトウエアエンジニア | 20万7000〜28万2000ドル |
エンジニアリングマネジャー | 17万3000〜23万4000ドル |
データサイエンティスト | 15万4000〜21万2000ドル |
シニアプロダクトマネジャー | 15万2000〜20万8000ドル |
セキュリティエンジニア | 15万~18万ドル |
テクニカルプログラムマネジャー | 14万7000〜20万1000ドル |
シニアプロダクトデザイナー | 14万1000〜20万ドル |
ソフトウエアエンジニア | 13万2000〜20万ドル |
プロダクトマネジャー | 13万〜19万7000ドル |
シニアデータアナリスト | 12万5000~17万4000ドル |
(1月6日 Business Insider)
https://www.businessinsider.com/these-are-the-most-popular-tech-jobs-what-they-pay-2023-1?inline-endstory-related-recommendations=
【資金調達】
Arctic Shores、Praetura Venturesなどから700万ドルを資金調達。資金はソフトスキルの評価技術の開発や欧州など国外事業の拡大に充てる。英国の行動アセスメントプラットフォームのArctic Shoresは、求職者に10のタスクを与え、認知能力、目標達成意欲、思考スタイル、対人スタイルなどを測る。スキルや経験ではなく、人柄や素養などの潜在的な能力を重視する「ポテンシャル採用」をサポートする。PwC、Siemens、Thales、TalkTalk、Airbus、Schneider Electricなどの企業が、世界各国の候補者300万人以上の評価にArctic Shoresを利用している。
Welcome to the Jungle、Revaiaなどから5000万ユーロを資金調達。資金は、採用ブランディングソリューションの強化や米国への進出などに充てる。フランスの求人求職サイトのWelcome to the Jungleは、サイトのスタッフが求人企業のオフィスの写真や従業員のインタビュー動画などを撮影し、企業ページに掲載。顧客企業は、求人情報や、福利厚生、企業文化などに関する詳細情報を同ページに追加する。Welcome to the Jungleは、スペインとチェコ共和国でもサイトを運営しており、自社開発したATS(応募者追跡システム)を企業に提供している。顧客数は約5000社で、ARRは3000万ユーロに達する。
https://techcrunch.com/2023/01/25/welcome-to-the-jungle-grabs-54-million-for-its-slick-job-platform/
TEXT=杉田真樹
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