GoogleがAIを活用した面接練習ツールを発表、ほか
海外HR Techニュースリリースまとめ(2022年6月)
Googleが、AIを活用した面接練習ツールを発表した。面接の質疑は自動で書き起こされ、求職者は自分の回答を文字で確認し、内容をブラッシュアップできる。
NACEの調査によると、2020-2021年のインターンとコーオプの平均時給はそれぞれ20.82ドルと、過去最高水準に達した。
また、コーチングプラットフォームのCoachHubが、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2などから2億ドルを資金調達した。トニー・ブレア元英首相の息子のユアン・ブレア氏が共同設立したアプレンティスシッププラットフォームのMultiverseも、投資会社から2億2000万ドルの出資を受けた。
【注目トピック】
企業の依頼に応じてプロチームを編成するフリーランサーマーケットプレイスが増加
フリーランサーに仕事を発注するフリーランスマーケットプレイスは、世界に500前後あるといわれている。従来のサイトは、発注者が多数のフリーランサーのなかからスキル、金額、納期などをもとに人材を選ばなければならないが、最近では複数のフリーランサーによるチームを組成し、企業とマッチングするサービスが増えている。
製品開発に特化するA.Teamは、企業の依頼をもとに、ソフトウエアエンジニア、データサイエンティスト、プロダクトマネジャー、マーケッター、デザイナーなどから人材を選び、クラウドベースのチームを編成して、企業に提案する。フリーランサーは、12〜18カ月間、チームでプロジェクトに取り組む。ワクチン製造ソフトウエアや学習アプリなど、さまざまな製品の開発に携わっている。平均時給は130ドルである。2022年6月現在の登録者数は4000人を超え、登録希望者から毎月500件以上の申し込みがある。McGraw-Hill、Lyft、PepsiCo、Saks Fifth Avenueといった企業約250社が利用している。
Fiverrが2022年6月に開設した、広告業界に特化するTogetherrは、登録審査に通過した優秀なクリエイターのチームを結成し、大手ブランドや広告代理店のプロジェクトと結びつけるプラットフォームである。AIがスキルや経験、協働の実績などをもとに、顧客のニーズに合う人材を厳選する。多くの登録者がカンヌライオンズなどの受賞歴を持ち、なかにはGoogle、IKEA、Nikeといった大手企業のキャンペーンに携わった人材もいる。2022年6月現在、プロデューサーやアートディレクター、コピーライターなどのクリエイターが1100人超登録している。プロジェクトの報酬金額は、平均5万ドルである。
これらのサービスを利用することで、企業は希望に合うフリーランサーを探す手間を省くことができる。一方、フリーランサー側も、従来のサイトでは誰でもすぐに受注できる低単価のタスク型案件が多い傾向があったが、より大きな案件に携わることができる。
【新サービス・新機能】
Google、AIを活用した面接練習ツール「Interview Warmup」で就活をサポート
Googleは、機械学習とAIを利用した面接練習ツール「Interview Warmup」を発表した。もともとは「Google Career Certificate」の受講者向けにつくられたが、現在は誰でも利用できる。データ分析、Eコマース、ITサポート、プロジェクト管理、UXデザイン、一般職の6種類から希望する分野を選択すると、ランダムに選ばれた5つの質問が表示される。質問は、バックグラウンド(職歴や過去のトレーニング経験、興味関心、ゴール)、特定の状況に対する対処方法、希望する職種に関連する知識やスキルの3種類で構成されている。その分野の専門家が厳選した質問を閲覧することもできる。
音声またはキーボードを使って、質問に答える。音声は保存されず、誰とも共有されない。自動書き起こしされた自分の回答を見て、話し方の傾向や、必要なポイントを押さえているかどうかや、頻繁に使用する用語などを確認できる。また、表示される別の表現に変換して、回答をブラッシュアップすることもできる。(5月18日 PCMag)
https://www.pcmag.com/news/googles-ai-powered-interview-warmup-helps-with-job-prep
【M&A】
Adzuna、Getworkを買収
英国の求人検索エンジンのAdzunaは、米国の求人検索エンジンGetworkの買収を発表した。Getworkは、Fortune 100の50社超の企業などを含む、数万社のキャリアサイトから毎日数百万件の求人情報を収集し、インデックス化(データを検索エンジンに登録すること)する。同社は、求人情報会社のLinkUpから1年前に分社独立した。
Adzunaのミッションは、テクノロジーで、「より良い仕事と人材をマッチングすること」である。独自のAIツールや給与に関するインサイトを提供し、求職活動を支援する。また、企業向けには、独自のマッチングテクノロジーとプログラマティック求人広告の配信機能で、候補者の確保や選考、マッチングのスピードを向上させる。現在、スイス、ベルギー、メキシコなど世界20カ国で事業を展開している。
AdzunaとGetworkは、今後も独立したブランドで運営する。両社は、FedEx、Home Depot、Amazon、Walmartなど、5万社以上の企業の求人情報を掲載する。毎月の訪問者数は数千万人の見込みである。(6月14日 PRNewswire)
https://www.prnewswire.com/news-releases/adzuna-acquires-job-search-engine-getwork-301566650.html
WorkGenius、JBCを買収
フリーランサープラットフォームのWorkGeniusは、ドイツで創業し、現在は米国に本社を置く。小売、エンターテインメント、メディア、クリエイティブサービス、ファッション業界を対象とする米国の人材派遣会社JBCを買収した。JBCは、主に米国、英国、スペイン、フランス、カナダ、香港で事業を展開している。統合後の会社の売上高は約1億ドルになる。WorkGeniusは、フリーランサーとクライアントをつなぐプラットフォームで、仕事の受発注や報酬の支払いができる。(6月8日 PRNewswire)
https://www.prnewswire.com/news-releases/workgenius-a-freelance-technology-company-acquires-us-based-jbc-a-staffing-company-301564053.html
BetterPlace、OkayGoを買収
ブルーカラー労働者のソーシング、選考、身元照会、オンボーディング、勤怠や給与管理を行うインドの人事管理プラットフォーム のBetterPlaceは、デリバリーの仕事に特化した検索アプリのOkayGoを買収すると発表した。この買収により、BetterPlaceは、短期業務に配置する人材のタレントプールを企業に提供し、人件費を15~20%削減することを目指す。BetterPlaceは、1500社以上の企業に利用されている。昨年、マイクロラーニングプラットフォームのOust Labs、求人サイトのAasaanjobsやWaah Jobsを買収しており、今回は4度目の買収となる。
OkayGoの顧客は、Flipkart、Swiggy、Zomato、Jiomart、Zepto、Apolloなどである。(5月31日 The Economic Times)
https://economictimes.indiatimes.com/tech/technology/betterplace-acquires-okaygo-to-help-gig-workers-earn-more-in-india/articleshow/91922086.cms?from=mdr
【調査】
NACE調査、2021-2022年のインターン採用予定人数は前年比で22.6%増加の見込み
NACE(全米大学就職協議会)の調査報告書「2022 Internship & Co-op Survey」によると、2021-22年の企業によるインターン採用予定人数は前年比で22.6%増加し、コーオプの採用予定人数は同1.1%増加する見込みである。
インターン採用予定人数を前年より「増やした」と回答した企業は約57%で、中小企業と大企業の両方で増加が見られる。コーオプの採用予定人数は、企業の約50%が「横ばい」、41%が「増加」を見込んでいる。
調査は、2021年11月10日~2022年1月12日に実施され、NACE加盟企業183社と非加盟企業26社が回答した。(5月10日 NACE)
https://www.naceweb.org/about-us/press/intern-hiring-projection-climbs-22-point-6-percent/
NACE調査、2020-2021年のインターンの平均時給は20.82ドル
NACEの調査報告書「2022 Internship & Co-op Survey」によると、2020-21年の学士レベルのインターンとコーオプの平均時給はそれぞれ20.82ドルと、過去最高水準に達した。
インターンの平均時給は、前年より0.06ドル上昇し、また2018~19年の平均時給(19.54ドル)を1.28ドル上回った。コーオプの平均時給も、前年(20.20ドル)から0.62ドル上昇し、2017~18年(18.69ドル)を2ドル以上上回った。(5月16日 NACE)
https://www.naceweb.org/job-market/internships/average-hourly-wages-for-2020-21-interns-co-ops-identical-at-20-dollars-82-cents/
【資金調達】
A.Team、Tiger Global ManagementやInsight Partnersなどから5500万ドルを資金調達。招待制のフリーランサーマーケットプレイスのA.Teamは、企業からの依頼をもとにフリーランサーを厳選し、製品開発チームを編成し、企業に提案する。
HourWorkが、Morgan Stanley投資ファンドのNext Level FundやMM Catalyst Fundなどから250万ドルを資金調達。累計資金調達額は1250万ドルに達した。資金は、カスタマーサクセスやマーケティング部門の人員増強などに充てる。HourWorkは、ファストフード店のフランチャイズオーナー向けSaaS型の人材採用・定着プラットフォームで、時給制労働者と企業をマッチングする。応募フローの改善や人材の定着といった企業の課題を解決するため、従業員の満足度を調査する自動チェックインや、過去の応募者および元従業員へのアプローチや採用といった機能を備える。同プラットフォームを利用するフランチャイズ店の数は2021年に4000店増え、2022年6月時点でMcDonald's、Burger King、Taco Bell、Dominos、Wendy'sなど6000店を超える。
Multiverseが、Lightspeed Venture Partnersなどから2億2000万ドルを資金調達。企業評価額は17億ドルに達し、設立から6年で英国初のEdTechユニコーンとなった。資金は、米国や英国での事業拡大や、同社のサービスを支えるテクノロジーへの投資に充てる。Multiverseは、実習生と受け入れ企業をマッチングするアプレンティスシップ(見習い訓練)プラットフォームである。実習生は、ソフトウエアエンジニアリング、デジタルマーケティング、データ解析といった分野の仕事に就き、実地訓練を積む。業界の専門家であるパーソナルコーチから、キャリアガイダンスやトレーニングといったサポートも受けられ、訓練修了率は85%を超える。登録する実習生やコーチの数は8000人。2022年6月時点の顧客数は500社と、過去2年間で約9倍に増えた。
https://www.unleash.ai/learning-and-development/multiverse-becomes-uks-first-edtech-unicorn/
CoachHubが、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2やSofinaなどから2億ドルを資金調達。累計資金調達額は3億3000万ドルに達した。デジタルコーチングプラットフォームのCoachHubは、人間の知能とAIによって、90カ国に居住する3500人以上の認定ビジネスコーチ陣のなかから、従業員に合ったコーチをマッチングする。ウェブとアプリ経由でリーダーシップスキルの向上、仕事のパフォーマンスの改善、レジリエンスや生産性の向上につながるコーチングセッションを提供する。セッションは、コーチング研究者でもあるUniversity of Reading大学のJonathan Passmore行動心理学教授が率いるCoaching Labの研究開発に基づき、60カ国語に対応する。同社は、Coca-Cola、Danone、Toyota、LVMH、L’Oréal、Credit Suisse、Twitterなど500社超の企業にサービスを提供している。
Gartnerの調査によると、企業内ラーニング業界は急速な変革を遂げている。デジタルコーチング分野は最大100倍に成長し、多くの企業がこの10年間で大規模なデジタルコーチングの導入を検討すると予想されている。CoachHubは、2021年にフランスのデジタルコーチングプラットフォームのMoovOne、2022年2月にはオーストリアのコンサルティング会社Klaitonのコーチング事業部門を買収した。
https://www.coachhub.com/news_press/coachhub-raises-200m-series-c/
Sesoが、Index VenturesやFounders Fundなどから2500万ドルを資金調達。資金は、金融サービスなどの開発に充てる。働き手を必要とする農家と出稼ぎ労働者をマッチングする人材管理プラットフォームのSesoは、紙の書類で行っていた労働者の採用やビザ申請を自動化し、給与処理などの業務をデジタル化するツールを提供する。2021年の設立以降、米国最大級の農家を含む77社が利用している。
https://www.businesswire.com/news/home/20220414005849/en/
TEXT=杉田真樹