働くことに「大きな喜びを感じたことのある」人たちに共通していること 辰巳哲子
今回は、2013年から年に1回実施されている「仕事に関するアンケート」から、働くことと喜びの関係について取り上げる。
教育に携わる仕事をしていると、中学生や高校生、大学生から、「働くこと」についてよく質問を受ける。彼らは「どんな時に大変ですか?」「どんな時に辛くなりますか?」と聞いてくる。「どんな時におもしろいですか?」「仕事のどんな時に大きな喜びを感じますか?」と聞かれることはほとんどない。
「仕事の大変さや辛さを教えたい」と思っている学校の先生が、生徒に「特に辛さ、大変さを聞くように」と指示しているのではないかと疑いたくなるくらいだ。
しかし、働くことで大きな喜びを得ることは、パフォーマンスにも影響すると考えられている。実際、仕事で大きな喜びを感じている人たちはどれくらいいるのだろうか。
働くことに「大きな喜び」を感じたことのある人は63.1 %
年代別にみると、年齢が高い人のほうが「大きな喜び」を感じた経験も多く、全体的に男性よりも女性のほうが、働くことに「大きな喜び」を感じている。
そして、こうした「働く喜び」が「必要だ」と回答した人は、2015年調査では83.7%に上っている。これまでに働く喜びを感じた人については、93.7%が「必要だ」と回答しており、これまで喜びを感じたことのない人でも、66.5%の人が「(働く喜びは)必要だ」と答えている。彼らは、こうした、「働くことの喜び」をどのような出来事から得ているのだろうか。
「働くことの喜び」の背景にある7つの因子
この1年間で、「働く喜びが増えた」と答えた人に、その理由を聞くと以下のようなコメントがあげられた。
・良い後輩たちに恵まれ、毎日が楽しい、職場の雰囲気がよい
・忙しい毎日ではあるが、やりがいと充実感を感じるから
・(以前は)できなかったことができるようになった
・病気をしたことによって、健康に働ける喜びを実感した
・任せられる仕事が増えた
・収入がよくなった
・自分らしく働けている
・必要とされていると思える
・目標がある
一方、この1年間で働く喜びが減った人にその理由を聞いたものが次のコメントだ。
・労働時間の超過、職場環境の悪化、多忙感
・マンネリ、やりがいが持てない
・職場の雰囲気が悪い
・年齢のせいで疲れた、体力・気力の衰え
・定年後の再雇用で限定的な仕事になった
・昇給しない
・評価の不透明さ
こうした理由の中にも見られるように、「働くことの喜び」は、7つの因子に分類されることがわかっている(リクルートキャリア2013)。7つというのは、「信頼関係」「学び・成長」「役割・居場所」「快適な環境」「顧客の期待・感謝」「必要な収入」「社会的影響」である。この7つの組み合わせは、性別や年齢、求められる役割によっても変化する。そして、これまでにも言われてきたように、「自分のやりたいことは何か」「自分の持ち味は何か」この2つの問いに対する答えが明確になっていればいるほど、より働く喜びを感じることができる。
働く喜びは自分で増やせると思いますか?
この1年間で働く喜びが「増えた」と回答している場合は、ほとんどの人が「働く喜びは自分で増やせる」と考えている。ただし、働く喜びが減った人でも、7割超の人が「働く喜びは自分で増やせると思う」と考えていることがわかる。
この数字を別の分析でより詳しく確認してみると、働く喜びが自分で増やせると考えている人は、男性よりも女性に多く、この1年間で「学び・成長」「役割・居場所」「快適な環境」「顧客の期待・感謝」を感じていると回答した人ほど、働く喜びを自分で増やせると感じており、中でも「学び・成長」の機会は、働く喜びに大きな影響を与えている。「信頼関係」「必要な収入」を得ているかどうかは、働く喜びに対して有意な影響は確認されていない。
「学び・成長」の因子は、「自分にはできないと思っていたことができるようになっている」「新しいスキルを身につけることができている」「少しずつ一人前になっている実感がある」「人間的に成長しているという実感がある」などといった項目で構成されている。
今回の調査では、年齢に関係なく、成長実感が持てる働き方をしている人は、働く喜びも自分で作り出すことができると考えていることが示された。働く喜びが下がった人のコメントに「マンネリ」が多いことを考慮すると、「成長実感が持てる働き方」を自覚化する機会が必要なのかもしれない。その際にはもちろん、成長実感には、自己満足だけでなく、他者からの適切なフィードバックもセットで考えることを忘れてはならない。
調査概要
調査票タイトル:仕事に関するアンケート
調査期間:2015/12/17~2015/12/21
有効回答数 5503s
インターネットモニター調査
調査者:株式会社リクルートキャリア
調査対象:
・15~64歳までの全国の働く人々
・総務省統計局「労働力調査」をもとにした母集団を反映する形で、エリア×性別×年齢(10歳刻みの5区分)×就業形態(正規雇用者/非正規雇用者/自営業の3区分)サンプルを有意抽出
[関連するコンテンツ]