生成AIによってマネジャーの役割や業務はどう変わるのか

武藤久美子

2024年10月07日

リクルートワークス研究所presents「研究員の『ひと休み ひと休み』Season2」は、研究員の「生の声」をお届けするPodcast番組です。
第3回は、研究員の武藤(ぶとう)久美子に話を聞きました。本コラムでは、収録音源から抜粋した内容をご紹介します。
※podcast番組はぜひこちらからお聴きになってください。

――ワークス研究所歴はどれくらいになりますか。

武藤:ワークス研究所とのお付き合いという観点でいくと、もう10年くらい前に遡っていて、コンサルタントとして、「女性リーダーをめぐる日本企業の宿題」というプロジェクトでご一緒しています。
その後、同じくプロジェクトベースで2年くらい前から関わっていて、正式に籍を置いてやるようになったのは1年半くらいになります。

――コンサルタントと兼務をされているということで、他の研究員とはまた少し違う目線をお持ちで、違った角度からの意見によって研究により深みが増す、といったようなことはありますか。

武藤:そうなれたらいいなと思います。私はコンサルタントと研究員で3部署を兼務しながら今仕事をしているんですけれども、お客様と共に研究を行うと考えた時に、テーマ、もしくはお客様のその課題に関してどのぐらい推進したいかといったお気持ち等々を含めて、時にはそれはコンサルティングのお仕事としてお引き受けしたり、研究として一緒にやらせていただいたり、その時々によってある意味3枚の名刺を使い分けて、研究員とコンサルティングのどちらでも対応するみたいな感じで現在やっているんですね。なので、コンサルティング寄りの研究があったりとか、研究寄りのコンサルティングがあったり、純粋研究、純粋コンサルティングみたいなことを、その時々で顔を変えて対応していますね。

生成AIがどのくらい世の中に変化をもたらすか

――直近ではどんな研究に取り組まれていますか。

武藤:いくつかあるんですけれども、今日ひとつご紹介したいのは、「生成AIが変えるマネジャーの役割や業務」という研究テーマを追いかけているので、そちらのお話をさせていただければなと思います。

問題意識からのお話になりますが、生成AIがどのくらい世の中に変化をもたらすかということに関しては人によって見方が様々で、希望的観測を持つ人も、悲観的な観測を持つ人も、すごく大きな影響を持つと考える人も、そうでない人もたくさんいらっしゃると思うんです。

その中で良い面に着目したとして、これが例えば産業革命級の変化だとおっしゃる方もいるし、日本経済の復活とか、何か日本経済にとって良いものになるかもしれないというふうに考えた時に、それを活かせる生成AIを活用できるような社会とか企業になるにはどうしたらいいんだろうというのが、もともとの発端です。

先ほどお話ししたように、私はコンサルタントとして、テーマはいろいろあるんですけれども、大きな組織変革の場面をお手伝いすることが多かったんです。これまで、IT革命とかDX変革とか技術を基にする変革もたくさん行われましたし、たくさん業務プロセスの変更などが行われてきましたが、よくよく考えると、日本の企業の組織とか人事って大きなところではあんまり変わっていないんですよね。

マネジャーの役割や業務が生成AIによってどう変わるのか

マネジャーの研究でいけば、1900年代半ばぐらいにマネジャーの役割ってこういうことだよねと置かれたものが、今もパワフルに生きている分野でもあります。組織という観点でいくと、業務内容が変化したとしても、官僚型組織を組織構造として持つ会社が一定規模以上の企業にはかなり多いですし、マネジャー1人あたりのメンバーの人数みたいなものにも大きな変化がありません。

となると、産業革命級の変化を受け取るのに、組織と人事はそのまま変わらないんじゃないかなという……変わらないままでその産業革命級の変化って受け取れるのかなという気持ちがあったんですよ。なので、今回の生成AIがもし千載一遇のチャンスだとしたら、これを使い倒せる組織人事のありようはどういうものなんだろうかを考えたかった、というのがもともとの問題意識です。

また、マネジャーの方は組織の最小単位の長としてメンバーと直接対峙する観点もありますし、経営幹部の方からの要請も多いですし、いろいろな法令遵守等々の砦にもなっています。その中で仕事が逼迫しているという状況になった時に、マネジャーがこのまま生成AIを使ってくれ、使って何とかしてくれとなると、マネジャーの皆さんがさらに大変になっちゃうだけだったら辛いな、という気持ちもあります。

マネジャーになりたくないみたいな議論も最近よく聞かれますけれども、マネジャーの置かれた状況がかなり大変で、もう待ったなしと分かっている状況に相まって、技術として来ている大きな変革の波をいい感じに捉えるにはどうしたらいいんだろうと。なのでマネジャーの役割や業務が生成AIによってどう変わるのかみたいな話を考えてみたかったんです。

組織人事には慣性の法則が働くのでそんなに大きく変化はしないんですけれども、ものすごく極端に振って、変革だと言って1ミリようやく動くかなというようなものだと考えた時に、もちろんたくさんのリスクもありますけれども、せっかくのこの機会をいい感じに使うのであれば、こんなふうに変えていった、対応できた企業とか組織の方がうまくやれるんじゃないですか、というようなことを伝えていきたいなと思っています。

――ありがとうございました。

■リクルートワークス研究所presents  研究員の「ひと休み ひと休み」
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武藤 久美子

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ エグゼクティブコンサルタント(現職)。2005年同社に入社し、組織・人事のコンサルタントとしてこれまで150社以上を担当。「個と組織を生かす」風土・しくみづくりを手掛ける。専門領域は、働き方改革、ダイバーシティ&インクルージョン、評価・報酬制度、組織開発、小売・サービス業の人材の活躍など。働き方改革やリモートワークなどのコンサルティングにおいて、クライアントの業界の先進事例をつくりだしている。2022年よりリクルートワークス研究所に参画。早稲田大学大学院修了(経営学)。社会保険労務士。