用語解説【販売編】
無人レジ(セルフレジ)
精算業務や袋詰め、支払いなどを行うスタッフを配置せず、消費者が自ら商品のスキャニング、支払い、袋詰めを行う商品精算サービスを指す。フルセルフレジはバーコード読み取りから精算まですべて消費者自身が行う。ショッピングカートにスマートフォンを設置して、買い物しながらバーコードを読み取りすばやく精算ができる方式もスーパーマーケットなどで広がる。無人レジはICタグ方式(RFID)と画像認識方式があり、前者は商品につけてあるICタグから専用レジが情報を読み取り、金額を算出する。画像認識方式はAIの画像認識技術を活用したもので、商品をAIカメラの前に置くと、AIが自動で画像を認識して価格を計算する。大手コンビニエンスストアでは店内の天井に設置されたAIカメラと商品陳列棚の重量センサーを組み合わせることで、リアルタイムに商品情報を読み取る方式の店舗もある。
スマートストア
スマートストアとは、最新のテクノロジーを活用してより効率的に、快適に買い物を行うことができる店舗のこと。AIカメラを使った顧客の自動認識や欠品の自動検知、RFID(電子タグ)を使った商品情報の検知、スマートショッピングカートによるセルフレジ機能など多様な技術が取り入れられている。スマートストアには、顧客が製品の情報を簡単に入手できるスマートタグ、顧客の好みや購入履歴に基づいた商品の推奨を行うAIアルゴリズム、二次元コード決済や自動精算機などの決済システム、さらには、AR技術を使った店内案内や商品のバーチャルトライアルなどの技術的な環境がある。セルフレジやキャッシュレス決済などを活用しているため、少人数の販売スタッフで運営が可能。また在庫管理が自動化されることで、棚卸業務の効率化も期待できる。商品の購入日時、購入者の属性、店舗内の動線など様々な情報を入手でき、マーケティング活動に利用することで、売上の向上が期待できる。
無人型店舗
無人型店舗とは、人が接客・販売を行わずに自動的に商品を提供する小売店のことを指す。AI、ロボット技術、センサー技術などの最新技術を活用しており、顧客は自分で商品を選んで、自動精算システムを使って支払いを行うことができる。人件費などの管理コストを削減できるため、小規模な店舗でも利益を上げやすく、24時間営業できるため、消費者の利便性が高まるというメリットもある。一方、商品の品揃えの限界やセキュリティ管理、トラブル発生時の対応などの課題もある。無人型店舗の代表例としては、アメリカのアマゾンが運営する無人型コンビニエンスストア「Amazon Go」が知られる。入店すると、顧客は専用のスマートフォンアプリでチェックインし、商品を選んでバッグに入れるだけで、自動的に商品が認識され、支払いが完了する。ファミリーマートはTOUCH TO GOが開発した無人決済システムを導入した実用化店舗を展開しており、顧客は商品を手に取り、出口でディスプレイの表示内容を確認し、支払いするだけで買い物が完了する。
RFID
RFID(Radio Frequency Identification)とは、ICタグとRFIDリーダー(読み取り装置)の間で電磁波や電波を送受信し、非接触でICタグのID情報を読んだり書き換えたりできるシステムの総称。身近なRFIDの活用例としては交通系ICカードや高速道路のETCカード、社員証などの非接触ICカード、車のスマートキーなどがあげられる。バーコードの場合、数字や文字情報をバーとスペースの組み合わせで表し、それをバーコードスキャナーの光センサーで読み取る。持てる情報はごく少量で、スキャナーが発する光を遮ると読み取りができなくなり、一度対象物に印刷するとその情報は変更できない。これに対して、RFIDはRFタグとリーダライタ間で通信を行う。RFタグの記憶容量は数十バイトから数キロバイトと大容量であり、多少の障害物があっても読み取ることが可能で、データを書き換えられるタイプもある。
顔認証決済
顔認証は生体認証の1つで、目や鼻など顔の特徴的な部分や顔領域の位置、比率などを基に本人確認をする技術である。顔データとクレジットカードなどの決済手段を事前に紐付けておくことで、顔を認証するだけでの決済が可能になる。顔認証決済はキャッシュレス化の進展とともに、利便性の向上や店舗の業務負担軽減を目指し活用が進む。手ぶらで支払いができる、会計時間を大幅に短縮できる、パスワードの管理が不要といったメリットがある一方、端末との距離や設置場所、光の当たり具合など条件により正確な認証ができない場合があることやサービス提供者により認証精度にばらつきがあること、個人情報漏洩の危険性などが指摘されている。
電子棚札(ESL)
電子棚札(Electronic Shelf Label, ESL)とは店頭の棚札の価格表示の更新を自動化する装置のこと。キャンペーン情報や二次元コードの表示なども可能で、大規模なスーパーストアなどでも作業効率化のために導入されている。以前は液晶モニターなどのものが多かったが、現在は電子ペーパーが主流となっている。電子ペーパーとは薄型の紙のような表示パネルで、液晶パネルよりも表示速度は遅いが、電力のコストカットなどの観点から主流となっている。価格マスターなどとデータ連携することにより、タイムリーに正確な価格表示を実現する。Wi-Fiや赤外線通信無線通信経由で表示を更新するため、紙の値札と比べて大幅に省力化でき、ECサイトとの同一価格表示もタイムリーに実現できる。スマホでタッチすると、内蔵NFCにより指定URLでWebサイトに誘導し、商品情報の取得や決済も可能。商品位置情報との連動や内蔵LEDを活用することで、単なる価格表示を超えた、店頭デジタル化の道を拓く。
AIカメラ
AIカメラとはAI(人工知能)を活用したカメラのこと。映像を記録する通常のカメラとは異なり、AIが搭載されていることで人物の一致・不一致、性別や年齢層の推定などが可能である。来店者数や来店者の性別・年代・滞留時間のリアルタイム分析、入店から退店までの来店者の動線の分析、商品棚ごとの来店客の立ち止まり時間や人数のカウント、商品棚ごとの集客状況、関心度合いの可視化などを実現する。店舗経営者は来店者がどの商品に触れたかやブランドや形状ごとの関心度合い、手にしたものの購入につながらなかった商品、比較検討の様子などを把握、分析することができる。さらに、AIカメラで収集した情報とPOSシステムとを連携させることで「いつ・どこで・誰が・何を買ったか?」などが把握でき、店舗ごとの来店者の属性、広告と来店者数の相関などを分析し、品揃えや店舗レイアウトの最適化などに反映することで、マーケティング施策のPDCAを回すことができる。
スマートショッピングカート
スマートショッピングカートは、ショッピングカートにタブレット端末とバーコードリーダーを装着し、バーコードリーダーでプリペイドカードを読み込ませたうえで、客が自分で商品のバーコードをスキャンしながら決済することができるサービス。店舗側はレジの設備やチェッカーが不要で、レジスペースを確保する必要がなく、大幅なコスト減につながる。タブレット端末に商品情報やレシピなどを掲載、クーポンなども付加し販促プロモーション機能としても活用することが可能となる。客もレジ待ちがないなどストレスが低減し、合計金額を確認しながら買い物をすることができる。国内の導入例としては、トライアルホールディングスのグループ企業のRetail AI(リテールエイアイ)が開発した、「トライアルレジカート」がある。同社の専用プリペイドカードをスキャンすることでカートが使用できるようになり、買い物後に専用ゲートを通過する際にプリペイドカードのチャージ額から買い上げ額が差し引かれる。客はレジ待ちをすることなくキャッシュレス決済が完了する。
スマートディスプレイ
スマートディスプレイは、スマートスピーカー(対話型の音声操作に対応したAIアシスタント機能を持つスピーカー)の機能にディスプレイを組み合わせたデバイスのこと。スマートスピーカー同様、音声による操作が可能であると同時にスクリーンを備えるため、音声だけでなく、ビジュアル情報の表示が可能である。スマートディスプレイは、タブレットやスマートフォンと同じような機能があるが、ハンズフリー操作ができるという点がメリットである。料理のレシピや天気情報など静止画、動画の表示やビデオ通話が可能で売場の販促に使えるほか、来店者と店員、店員同士のコミュニケーションにも活用することができる。
商品棚管理ロボット
商品棚管理ロボットは、自動的に商品の陳列状況や値札を調べたり、商品の在庫を管理したりするロボットのことで、アメリカでは小売店や物流センター、倉庫などへの導入が進んでいる。カメラを使って棚にある商品を認識し、位置や数量を把握する「ビジョンセンサー」や、商品を運ぶためのアームやクローラーを制御し、正確に商品を取り扱う「モーションコントロール」などの機能を備えている。自律的に作業を行うため、人間の監視が必要なく、自ら商品の在庫を把握し、補充が必要な場合は自動的に注文を出すことができる。小売店などは商品棚管理ロボットの導入により、在庫管理の効率化や品質向上、作業員の負担軽減などの効果を期待している。米小売り最大手Walmartでは移動ロボットに搭載したカメラと距離画像センサーで、商品パッケージや陳列の状況、値札などを調べ、その結果をクラウドに送って店頭在庫を管理する仕組みを一部に導入する。
デジタルサイネージ
デジタルサイネージとは、駅頭や店舗などにディスプレイやプロジェクターなどの映像表示装置を設置して情報を発信するシステムのこと。スーパーマーケットやショッピングセンター、ドラッグストアなどあらゆる空間に設置されている。従来は紙のポスターや看板が一般的だったが、デジタルサイネージはデジタル映像機器を用いることで、より多くの情報をタイムリーに発信できるのが特長である。配信するコンテンツは、テキストや画像、動画、音声、アニメーション、生放送など多岐にわたる。デジタルサイネージの利点としては、情報のリアルタイム性、コンテンツの柔軟性、配信の効率性、訴求力の高さなどがあげられる。また、複数のディスプレイを連携させることで、大画面の映像演出や情報の一元管理が可能となる。
AIバーチャルアシスタント
AIバーチャルアシスタント(Intelligent Virtual Assistant)は企業の情報資産と人間の洞察力を活用して、コグニティブコンピューティング(単に与えられた情報を処理するだけの機械ではなく、人間のように自ら理解、推論、学習できるシステム)により、人に対して個々の応答を生成するシステム。会話型 AI を活用し、複数のトピック、長時間の複雑な会話にも対応できるので24時間年中無休でカスタマーサービスをサポートできる。また、顧客の質問の意図を引き出し、顧客の需要に合わせたコンテンツを作成したり、人間の代わりにセールやキャンペーンの情報を顧客に送信できる、といった導入メリットがある。顧客は、AIバーチャルアシスタントを使用した店舗のアプリを通じて、店舗の案内を受けることができる。例えば、顧客が買いたい商品のある場所を尋ねると、どの方向へ行けばいいかをAIバーチャルアシスタントが案内する。また、商品の成分、アレルギーなどを含む関連情報を提供することができる。
流通BMS
流通BMS(Business Message Standards)とは、小売業界においてEDIを利用して、商品の情報や取引データをやりとりするためのシステムのこと。小売業界におけるEDI(Electronic Data Interchange)とは、企業間の電子的な商取引やデータ交換を行うための標準的な方式を指す。小売業者や流通業者はEDIを介して商品情報を交換し、その情報を基に流通BMSが商品の仕入れ先や在庫状況、価格設定などを管理することができる。また、流通BMSは小売業者に対して、在庫状況や注文状況の情報を提供することで、迅速な納品や正確な在庫管理を実現することができる。従来の流通業者の標準仕様であるJCA手順は通信に電話回線を用いる方法で、2024年にサービスが停止する。このため流通BMSの普及が急がれている。
マイクロ・フルフィルメントセンター
消費行動のオンライン化に伴い、従来のスーパーマーケットの中あるいは敷地内に、自動化された小型のフルフィルメントセンターを導入した施設である。フルフィルメントセンターは、商品の受注、梱包発送、決済という一連の流れを1カ所で行う施設のことで、顧客データ管理、在庫管理、返品やクレーム対応なども行う。マイクロ・フルフィルメントセンターは、小売業者が在庫を複数の場所に分散させることで、より迅速かつ正確に配送することができるメリットがある。また、自動化技術やロボット技術を利用することで、より迅速で効率的な処理が可能となる。アメリカではアマゾンが1997年に初めて2カ所のフルフィルメントセンターをオープンし、2020年9月時点ではアメリカ国内で190カ所にまでその数を増やした。
メタバース
メタバースは「メタ(meta=超越した)」と「ユニバース(universe=宇宙)」を組み合わせた造語で「仮想世界」を意味する。1992年に発表されたニール・スティーヴンスンのSF小説『スノー・クラッシュ』から名付けられた。ユーザーはオンライン上に構築された仮想空間に自身のアバター(インターネット上の仮想的な世界で動作する利用者の分身)で参加し、ゲームへの参加や商品・サービスの売買など経済活動を行うことができ、仮想の生活空間とすることが想定されている。日本におけるメタバースの事例としては、スタートアップのクラスターが開発した「cluster」やHIKKYの「バーチャルマーケット(Vket)」などがあり、様々なイベントが開催されている。メタバースは日本国内でも注目されており、今後ますます発展が期待されている。