分析4 転機をつぶさに探索してみた(4)

2019年07月04日

分析④-4

仕事の場の変化、意識の変化だけでは足りない。
グループAのキャリア展望のカギは学習行動でした。

転機のグループによってキャリアの展望や、転機によって生じている変化には大きな差がありました。転機の正体をつかむためには、それぞれのグループごとに、どんな変化がキャリアの展望に関わっているのか、あるいはどんなプラスαがあれば、キャリアの展望を持ちやすくなるのかを見ていく必要がありそうです。そこでまず、転職や転勤、海外赴任など「仕事の場の変化」に関わるグループAについて、転機がもたらす3つの変化がキャリア展望に及ぼす影響のパスを分析してみました。なお、ここでは、転機の次のステージの「学習行動」との関係も見ています。転機によって生じた変化を学習という形で結実させることを通じて、キャリアの先行きが見えやすくなる、そんなルートがあると考えたからです。

グループAの場合、「働く価値の再発見」が4つの学習行動それぞれを通じて、キャリア展望を高めていました。一方で、「仕事以外の価値の発見」「新しいテーマの発見」のいずれも、直接的にも間接的にもキャリア展望を高めることにつながっていませんでした。27ページで、グループAは 転機が変化に結びつきにくいことを指摘しましたが、仮に変化に結びついても、それでは十分でないようです。仕事への姿勢、いわば「意識」が変化するだけでなく、次ステージでの学習という主体的な「行動」を伴う場合にのみ、キャリアの展望を高めると考えられます。

職業人生の長期化により、人は常に次のキャリアの可能性を模索する必要に迫られるようになると言われます。ですが、単に仕事の場を変えてみるだけでは、十分ではないのかもしれません。仕事の場を変えたいと思った時、「そこでどんな発見ができそうか」、「どんな形でその発見を深めていけそうか」考えてみると、個人のキャリアにとってより良い結果がもたらされそうです。

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text:大嶋寧子
「マルチサイクル・デザインの時代」レポートPDF版