SIAエグゼクティブフォーラム2018参加報告(3)

派遣かフリーランサーかロボットか?変化する人材ポートフォリオ

2018年08月24日

講演者
SIAコンティンジェント労働力戦略担当上級副社長
ブライアン・ペーニャ氏

従業員とコンティンジェント労働者

従来、労働者には従業員かコンティンジェント(派遣労働者やフリーランサーといった非正規)労働者かの2つの形態しかなかった。企業は業務の需要ピーク時にコンティンジェント労働者を利用することで、需要の増減に対処している(図1)。

近年、HRの役割はより戦略的に事業を手助けするものになっている。SIAのコンティンジェント労働力戦略専門家であるブライアン・ペーニャ氏は、さまざまな臨時労働力の種類について解説し、今後発展するであろう人材モデルを紹介した。

どの就業形態の人材を利用するかは、図2のような基本的なプロセスで判断できる。

労働者の種類

労働者をさらに細分化すると、従業員から派遣労働者、個人事業主、ロボットまで様々な種類がある(図3)。

従業員

  • フルタイム&パートタイム勤務
  • 実習生、研修生、有償インターン生

非従業員

  • 派遣労働者
  • インディペンデントコントラクター(IC)、コンサルタント、フリーランサー
  • SOW、専門サービス(例:経営コンサルタント、弁護士)
  • オンライン労働者(例:マイクロ業務、クラウドソース)
  • 業務委託サービス(例:警備員、保守管理)
  • 提携会社(例:サプライチェーン、共同経営会社、合併事業)
  • 公式&非公式ボランティア(例:セルフサービスの客)
  • フランチャイズ、関連会社、共同経営(例:マーケティング、営業活動)
  • ロボット、ドローン、コグニティブ・コンピューティング・アプリケーション

SOW(Statement of Work、専門サービスを提供する短期コンサルタント)

スタッフィング会社は、マージンを上げるために顧客会社へSOWを派遣する場合がある。また、SOWというコンサルタントを提供するサプライヤー(スタッフィング会社)と顧客会社間でリスクを共有できる。SOWは6種類あり、それぞれSOWとサプライヤー、企業にかかるリスクのレベルが異なる(図4)。

今後、発展する9つの人材モデル

1.オンラインスタッフィング

典型的なオンラインスタッフィングは、場所に関わらず完結する業務委託。特定の労働者に特定の業務(通常は臨時)を委託する。リモートで、かつオンラインで遂行するのが一般的。オンラインスタッフィングへの関心は年々高まっており、企業は、どのカテゴリーの仕事がオンラインスタッフィングにふさわしいかを見定めているところ。

2.ジャスト・イン・タイム・スタッフィング(Just in Time Staffing)

今すぐに労働者を必要としている企業人事を、ウェブやスマートフォンで労働者とつなげるサービス。主な対象は、リモートワークが適さない現場でのブルーカラー職やホスピタリティ業、かつ時給で短期就労。

企業によっては、労働者を見つける時間が6週間から6分に短縮された。ツールには地理位置情報システムが搭載されており、人手を必要としている現場に労働者が近づくと、「ここで働きますか?」という通知が出て即座に申し込みと就労ができる。

3.FMS(フリーランサー・マネジメント・システム)

ウェブベースのプラットフォームで、企業がICを採用、管理、分析するためのツール。ICをFMS経由で採用することもある。最近、オンラインスタッフィングプラットフォームはFMSを内蔵するものが一般的になっている(図5)。

4.クラウドソーシング

業務を小分けにして広範囲に散在する多数のICに割り振るためのオンラインプラットフォーム。サービス業者にはOneSpace、Streetbees、CrowdFlowerなどがある。業務を委託する方法には、ミクロ業務分配モデルとコンテストモデルの2種類がある。

5.CRPO(Contingent Recruitment Process Outsourcing)

サプライヤーが顧客企業のために臨時労働者を発掘して採用するサービス。サプライヤーの担当者が顧客企業専任のリクルーターとなり、業務委託として請け負う。料金は固定価格で、1人採用するごと、あるいはリクルーター1人当たりで支払う。リクルーターが発掘した候補者のデータベースは顧客企業に帰属するが、サプライヤーが臨時労働者の雇用主となってペイローリングサービスを提供する場合がある。欧州でよく利用されるビジネス。

6.AI・ロボット工学

通常は人間の知能が必要な業務をコンピューターシステムが遂行する。視覚、音声認識、意思決定や翻訳など。

「近年、テクノロジーが記録的な数の仕事を奪っている」と言われるが、実際は少数である。1850年代の仕事数の変化率は60%だったが、2010年代ではわずか5%と安定している(図6)。

SIAの調査によると、企業の38%がAIを活用しているか、今後活用を予定している。興味深い事例では、IBMワトソンが作成したバーチャル弁護士、Rossがある。ある法律事務所が、破産専門弁護士としてRossを年俸17万6,000ドルで採用した。Rossは、世界中で破産した企業の判例を24時間探し続けられる。仕事ぶりを考えるとこの年俸は安い。

もう1つの例はAutomated Insights。これはデータをもとにして自然な言語で記事を執筆するプラットフォーム。例えばスポーツの試合の結果から、どのチームがどんなスコアで勝利したかといった記事を自動作成する。

さらに、Alphabet(Google)はトロント市(カナダ)を「スマートシティ」にするビジョンを持っている。市のすべてのサービス、例えばごみ収集や下水道清掃をロボットに任せるというものだ。

7.企業間の人材シェア

企業が余力のある人材を業界をまたいで他社と共有することで、定着率を高め、人材の能力の幅を広げたりして、市場利益を最大化させるといった狙い。

需要のピークが異なるスタッフィング会社同士での活用が考えられる。これによって、オフシーズンの離職を抑えることが期待できる。

8.ダイレクトスタッフィングあるいはタレントプール

CRPOやFMSなどを仲介せず、社内の担当者が臨時の人材を採用すること。雇用主ブランドを介して候補者を発掘する。

サウスウエスト航空やPwCがオンラインプラットフォームを持っている。

9.社会正義・親和性

最新のモデル。顧客・潜在的顧客内で会社への忠誠心を養う機会を提供する。好事例はSteadyである。労働者が入力した仕事や金銭面での目標をもとに、達成するための助言をする。アルゴリズムで就くべき職業やそれぞれの仕事に何時間従事すべきかといったアドバイスを与え、 借金を清算する手助けをする。2017年に創立したばかりの革新的なモデルである。

企業はより新しい人材ポートフォリオを活用しようと考えている。

SIAの役目は、それぞれの人材に適した形のモデルを顧客が見つける手助けをすること。エグゼクティブフォーラムでは他にも、スキル不足解消に取り組むスタッフィング会社のパネルや、異なるビジネスモデルを持つジョブボード大手3社によるパネル、ウーバーに見る新しい経済でのスタッフィング事業など、特色ある企業のエグゼクティブから直接事例を聴くセッションがあった。スタッフィング業界の進化は今後も続いていく。

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