LinkedInが中国で「InCareer」を公開、英国政府機関と専門職の採用で契約、ほか
海外HR Techニュースリリースまとめ(2021年12月)
LinkedInは、2021年10月に中国当局からの規制強化を受けて、SNS事業から撤退したが、12月に求人検索アプリを公開した。今後は、企業の採用やマーケティング支援に注力し、中国でのプレゼンスを維持する狙いである。
英国内閣府傘下のGDSは、デジタル分野の専門家や上級管理職など、政府の 「スペシャリスト」職の候補者を発掘するため、LinkedInと2年間の契約を結んだ。これにより英国内にいる1000万人超に採用アプローチを行うことなどが可能となる。
全米産業審議会は、約4万件の求人情報を解析し、人手不足に対応した求人要件の見直しについて解析した報告書を発表した。
資金調達関連の主なニュースでは、JobandtalentとSenseが、ソフトバンクグループ傘下の投資会社などから資金を調達した。ソフトバンクグループは、世界各国から完全リモートで働く人材の採用および労務管理プラットフォームのOntopおよびAndela、ダイバーシティ人材採用プラットフォームのMogulなど、HRテック企業への出資を積極的に行っている。
【新サービス・新機能】
LinkedIn、中国で求人検索アプリ「InCareer」を公開
LinkedInは、中国で求人検索アプリ「InCareer」を公開した。 InCareer は、職種、業種、勤務地、社名、年功レベルの求人検索、プロフィールの登録、ほかのユーザーへのつながり申請、企業の採用担当者とのメッセージの送受信などの機能を備える。保存された検索結果、閲覧した求人情報、プロフィールをもとに、希望条件に合った新着求人をプッシュ通知する。ユーザーによる投稿やコメント、記事の共有といったSNS機能は含まない。
企業は求人情報を無料で掲載できる。また、採用ツール「LinkedIn Recruiter」のユーザーは、アプリに登録する求職者の情報も同ツール上で検索できる。(12月13日 LinkedIn Official Blog)
https://blog.linkedin.com/2021/december/linkedin-s-new-app-to-help-professionals-in-china-find-jobs
【M&A】
Workday、5億1000万ドルでVNDLYを買収
人事管理システムのWorkdayは、外部人材の管理システムのVNDLYを5億1000万ドルで買収する。これにより、社員、時給制労働者、非正規労働者、業務委託まで、あらゆる人材を一括で管理し、総合的な人材戦略を立てる労働力最適化ソリューションを提供する。企業は、従業員数、福利厚生、報酬、プロジェクト、総人件費に関するデータを包括的に把握できる。(11月18日 Workday)
https://www.globenewswire.com/news-release/2021/11/18/2337786/0/en/Workday-Announces-Intent-to-Acquire-VNDLY.html
英国内閣府のGDS、デジタルとリーダーシップのスペシャリストの採用で、LinkedInと60万ポンド規模の契約を締結
英国内閣府の政府デジタルサービス(Government Digital Service、以下GDS)は、デジタル分野の専門家や上級管理職など、政府の 「スペシャリスト」職の候補者を発掘するため、LinkedInと2年間の契約を結んだ。
GDSは、年額7275ポンドの「LinkedIn Talent Solutions」ソフトウェアプラットフォームのライセンスを17件、さらに求人広告サービス「Job Slots」の求人広告掲載枠を144件取得した。初年度の総費用は20万5695ポンドとなる。契約期間中に合計で最大60万ポンドを費やす見込みである。
契約書によると、GDSは「英国を拠点とする1000万人超の多様な候補者プールへのアクセス」と「潜在層および顕在層を対象とする求人情報の掲載や候補者の発掘」、そして「特定の地域に住み、スキルや経験が募集職種に適している候補者を対象に、求人情報を戦略的に掲載および広告する」機能を求めている。(11月18日 PublicTechnology.net)
https://publictechnology.net/articles/news/cabinet-office-taps-linkedin-help-fill-%E2%80%98specialist%E2%80%99-digital-and-leadership-roles-%C2%A3600k
【決算】
Kanzhun、第3四半期決算は、前年同期比105.4%の増収
中国最大級の求人マッチングアプリ「BOSS直聘(BOSS Zhipin)」の運営会社であるKanzhunは、2021年第3四半期決算を発表した。売上高は、前年同期比105.4%増の12億1180万元(1億8810万ドル)となった(2020年は5億9010万人民元)。2億8620万元(4440万ドル)の純損失を計上した。
売上高の内訳は、ネット求人サービスが同104.4%増の11億9710万元(1億8580万ドル)、その他サービス(主に求職者向けの付加価値サービス)が同217.4%増の1460万元(230万ドル)となった。また、過去12カ月に有料のネット求人サービスを利用した法人ユーザー数は、前年比110.5%増の400万人となった。
第4四半期の売上高は、前年同期比58.1%~62.8%増の10億2000万元から10億5000万元となる見通しである。(11月23日 GlobeNewswire)
https://www.globenewswire.com/news-release/2021/11/23/2339595/0/en/KANZHUN-LIMITED-Announces-Third-Quarter-2021-Unaudited-Financial-Results.html
【調査】
企業は人材確保のために採用戦略を見直し、全米産業審議会が調査
全米産業審議会(The Conference Board)とEmsi Burning Glassが発表した報告書によると、逼迫する労働市場において、人手不足に悩む米国企業は、採用戦略の見直しを図っている。
2021年10月時点で、サイニングボーナス(入社時賞与)を記載する求人広告の割合は、パンデミック以前の2020年3月と比べて、2倍以上に増加した。とくに、大卒の資格を必要としないブルーカラー、教育や医療など人材不足が深刻な職種でこの傾向が顕著に見られる。
また、給与情報を求人広告に記載する企業が増えており、求人広告の8件中1件以上が給与データを掲載している。とくにブルーカラー職でこの傾向が強く見られる。
企業は人材を確保するために、学歴要件の緩和も行っている。営業・販売、オフィスサポート、ブルーカラーなど、もともと学歴を必要としない職種で、大卒資格を要件とする求人広告の割合は、パンデミック以前の約18%から15%以下に減少した。OJT(職場内訓練)の提供を記載する求人広告も増えている。
報告書は、求人サイトや企業のウェブサイトなど、ネット上に掲載された約4万件の求人情報をリアルタイムで分析した結果にもとづく。(12月8日 The Conference Board)
https://www.conference-board.org/topics/tags.cfm?parent=help-wanted-online&child=press&child1=online-job-ads-labor-shortages
【資金調達】
スペインのJobandtalentが、ソフトバンク・ビジョン・ファンド 2から5億ドルを資金調達。企業評価額は23億5000万ドルとなった。資金は、米国などの主要市場での事業拡大や、技術や営業部門、経営幹部の増員に充てる。デジタルスタッフィングプラットフォームのJobandtalentは、独自技術で、物流、eコマース、倉庫、製造業などさまざまな分野の企業の臨時の仕事と人材のマッチングを行う。DHL、FedEx、XPO、Ceva Logistics、eBay、IKEA、Kuehne & Nagel、JD Sports、Ocado、Sainsbury's、Argos、GLSなど、1300社以上の企業が Jobandtalent を利用している。
Senseが、ソフトバンク・ビジョン・ファンド 2などから5000万ドルを資金調達。累計資金調達額は9000万ドル、企業評価額は5億ドルに達した。タレントエンゲージメントプラットフォームのSenseは、企業や人材派遣会社、人材紹介会社によるブルーカラーやグレーカラーの人材発掘やエンゲージメントを支援する。メールやショートメール(SMS)による求人配信、メッセージの自動送信、チャットボットといった機能を備える。Amazon、Sears、Vaco、Kennyなど600社以上が Senseを利用している。
TextUsが、Eastside PartnersやAccess Venture Partnersから2200万ドルを資金調達。テキストメッセージングプラットフォームのTextUsは、企業がショートメール(SMS)で顧客、候補者、従業員とリアルタイムで会話をする、会話型テキストプラットフォームである。既読率は98%、回答率は最大45%に達する。TextUsのマーティン・ペインCEOは、「ビジネス用ショートメールの市場規模は40億ドルであり、2028年には150億ドルを超えると予想されている。今回の資金調達によって当社は、急成長市場におけるリーダーとして地位が拡大するだろう」と語った。
TEXT=杉田真樹