LinkedInが中国でのSNS事業から撤退、Deelが約4億ドルを調達、ほか

2021年11月02日

海外HR Techニュースリリースまとめ(2021年10月)

LinkedInは、中国でのSNS事業から撤退すると発表した。中国政府からの同社への圧力が以前から強まっており、2021年5月に、中国のLinkedIn Appの新規ユーザー登録の受付停止を求められた。9月には、「禁止されているコンテンツを含んでいる」という理由で、中国に住む複数のアメリカ人ジャーナリストのプロフィールを閲覧できないようにしたことが、批判されていた。
資金調達の主なニュースでは、世界各国においてリモートワークをする従業員やインディペンデントコントラクターの採用および労務管理をサポートする企業であるDeel、Andela、Ontop、Oysterの4社が相次いで、ソフトバンクグループ傘下の投資会社などから2000万~4億2500万ドルの出資を受けた。パンデミック以降、リモートワークが浸透し、企業は国を問わず、広く優秀な人材を確保できるようになったことで、こうしたプラットフォームの需要が伸びている。

【新サービス・新機能】
LinkedIn、中国から撤退、新アプリを公開予定

LinkedInは、中国でのSNS事業から撤退すると発表した。撤退理由について、「中国ユーザー向けの求職サービスでは成功したが、情報共有といったユーザー間の交流では、同じ水準で成果を上げることはできなかった」と説明した。さらに「中国の事業環境は非常に厳しく、法令順守の要求も高くなっている」と説明する。
今後は、求人求職サービスに重点を置く。今年の後半には、中国向けの求人検索アプリ「InJobs」を発表する予定である。InJobsは、ユーザーによる投稿やコメント、記事の共有といったSNS機能は含まない。(10月14日 LinkedIn Official Blog)
https://blog.linkedin.com/2021/october/14/china-sunset-of-localized-version-of-linkedin-and-launch-of-new-injobs-app

Upwork、外部人材による理想のチームをつくる「Virtual Talent Bench」機能を発表

フリーランスプラットフォームのUpworkは、信頼できるフリーランサーのネットワークを構築し、プロジェクトが発生した際に、即業務を発注できる「Virtual Talent Bench」機能を発表した。有望なプロフェッショナルを見つけてリスト化することが容易で、スキルを表すタグをもとにリストの中から人材を検索する。プロジェクト終了後もフリーランサーとのつながりを維持できる。(10月5日 Upwork)
https://www.upwork.com/blog/virtual-talent-bench-updates

Deel、就業形態間違いの訴訟費用を補償する商品「Deel Premium」を発表

世界150カ国においてリモートで働く社員やインディペンデントコントラクターの採用、給与の支払い、法令順守をサポートするプラットフォームのDeelは、企業が労働者を従業員ではなく、インディペンデントコントラクターとして誤分類して働かせた場合の訴訟費用などを最大2万ドル補償する有料プラン「Deel Premium」を発表した。
企業は、Deel Premiumにアップグレードすることで、従業員の分類に当局が異議を唱えた場合の法的コスト、未払いの税金や福利厚生、罰金などの補償を受けられる。
Deelは、労働者が居住国でインディペンデントコントラクターとして登録されているか、適切な書類が揃っているかもチェックする。各国の法規制を順守する契約書の作成や、労働許可証の自動収集なども行う。
同プランの月額料金は、インディペンデントコントラクター1人あたり50ドル。(10月18日 Deel)
https://www.letsdeel.com/blog/deel-premium

欧州の中小企業向け人事管理プラットフォームのPersonio、「People Workflow Automation」の新機能を発表、2億7000万ドルを資金調達

欧州の中小企業向けの、採用、入社手続き、給与計算、勤怠管理などの人事管理プラットフォームのPersonioは、「People Workflow Automation」を発表した。これまで手作業で断片的に行われていた人事業務を、組織全体と社内のすべてのアプリケーションにまたがる自動化ワークフローに変換する。
中小企業は、1社あたり平均40以上のアプリケーションを使用しているが、その多くは人事業務に関連した人事データを使用している。
大企業では、さまざまなソフトウェア会社の製品(Workday、ServiceNow、UiPathなど)を連携させ、社内のITリソースやコンサルタント会社を活用して、カスタムの自動化ワークフローを構築している。一方、多くの中小企業は、自社でワークフローを自動化するためのリソースや技術的な専門知識、適切なテクノロジーを持ち合わせていない。
People Workflow Automationは、社内のすべてのアプリケーションと連携し、入社、解雇、昇進、勤務地の変更、病欠休暇などに関するワークフローを自動化する。たとえば、雇用契約書の作成や発行、入社や退職時の特定のアプリケーションへのアクセス権限の変更などである。
また、 PersonioはGreenoaks Capital Partnersなどから2億7000万ドルを調達した。累計調達額は5億ドルを超え、企業価値は63億ドルとなった。(10月12日 Personio)
https://www.personio.com/blog/series-e-people-workflow-automation/

【M&A】
Fiverr、CreativeLiveを買収

5ドルからフリーランサーに仕事を依頼できるプラットフォームのFiverrは、起業家向けオンライン学習プラットフォームのCreativeLiveを買収した。CreativeLiveは、デザイン、ビジネス、動画、マーケティング、写真技術などに関する2000種類以上の講習情報を掲載する。ピューリッツァー賞、グラミー賞、オスカー賞の各受賞者、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー作家、著名な起業家など、多彩な講師陣を揃えている。
Fiverr創設者兼CEOのMicha Kaufman氏は、「Fiverrは単なる仕事のプラットフォームではない。私たちは、能力開発や訓練も含むフリーランサーのライフスタイル全般をサポートするという信念をもつ。急速に変化する事業環境の中で、フリーランサーが新しいスキルを身につけ、その収益化をサポートすることがFiverrの役割である」と言う。オンライン学習プラットフォームのFiverr Learnは、CreativeLiveに統合される。(10月8日 Fiverr)
https://www.fiverr.com/news/creativelive-acquisition

Fourth、SnagajobのPeopleMatterとHiring Managerを買収

外食、ホスピタリティ、小売業向け労働力管理ソリューションを提供するFourthは、Snagajobの時給制従業員向けATS「PeopleMatter」と、オンボーディングソリューションの「Hiring Manager」を買収した。PeopleMatterと Hiring Manager は、求人、研修、オンボーディング、パフォーマンス管理の機能を備えるアプリである。
この買収によって、人手不足が深刻な業界の事業者向けに、応募者追跡から、オンボーディング、研修、スケジューリング、勤怠管理、パフォーマンス管理、高度な予測分析、給与計算までを備えるエンド・ツー・エンドのソリューションを構築し、自社の地位を強化する狙いである。Fourthのサービスは7000社以上の企業に利用されている。(10月6日 Fourth)
https://www.fourth.com/fourth-to-acquire-peoplematter-and-hiring-manager-to-complement-end-to-end-workforce-solution-and-product-suite/

【調査】
Fiverr、世界中で検索件数が急増するサービスやテクノロジーを発表

Fiverrは、プラットフォーム上の数百万件の検索データを分析した「Fall 2021 Small Business Needs Index」を発表した。過去6カ月間に検索数が最も大きく伸びたのは、Shopifyセールスファネルで235%増。次いで、Amazon PPC キャンペーン(171%増)、オンライン講習のコンテンツ(166%増)、Klaviyo(139%増)、Kajabi(135%増)、ランドスケープデザイン(100%増)、GoHighLevel(94%増)、Google Maps(94%増)、Google Adwords(93%増)、Facebookページの作成(90%増)であった。
これらのサービスや技術は、中小企業の需要が高まっている。現在 Amazon PPC キャンペーンサービスを販売しているフリーランサーは 、受注1 件あたり最高 1万ドル、Shopify セールスファネルのプロは、 1 件あたり最高 2195 ドルの報酬を得ている。
Fiverrには、グラフィックデザイン、デジタルマーケティング、プログラミング、動画やアニメーション制作など、500種類以上の仕事が掲載されている。2021年6月30日までの1年間で、400万人の顧客が160カ国に在住するフリーランサーに仕事を発注した。(10月14日 Business Wire)
https://www.businesswire.com/news/home/20211014005117/en/

【資金調達】

Deelが、Andreessen HorowitzやYC Continuity Fundなどから4億2500万ドルを資金調達。企業評価額は55億ドルに達した。Deelは、世界150カ国においてリモートで働く従業員やインディペンデントコントラクターの採用、給与の支払いなどをサポートする。2021年4月に1億5600万ドルを資金調達し、「ユニコーン」(評価額10億ドル以上、設立10年以内の未上場企業)の仲間入りをしたばかりである。同月から半年で顧客数は1800社から4500社に増加した。

https://www.letsdeel.com/blog/raising-our-series-d


アフリカ企業のAndelaが、ソフトバンクグループ傘下のSoftBank Vision Fund 2、Chan Zuckerberg Initiative、アル・ゴア元米副大統領らの投資会社Generation Investment Managementなどから2億ドルを資金調達。企業評価額は15億ドルとなった。Andelaは、アフリカや中南米、東欧など80カ国においてリモートで働くソフトウェアエンジニアの採用を支援する。AIによるエンジニアと企業のマッチング、語学力の診断やコーディングテストの機能を備える。登録するエンジニアは10万人を超えた。またGoldman Sachsや、ViacomCBS、Kraft Heinzといった有名企業が利用している。今後は、デザインやデータといった分野の人材にも対象を拡大する。

https://www.businesswire.com/news/home/20210929005125/en/Andela-Announces-200M-Investment-Led-by-SoftBank


Ontopが、Tiger Globalやソフトバンクグループ傘下のSB Opportunity Fund(アフリカ系、ヒスパニック系、ネイティブアメリカンの創業者を支援する1億ドル規模のベンチャーファンド)などから2000万ドルを資金調達。Ontopは、世界150カ国に住むインディペンデントコントラクターとの業務委託契約、報酬の支払い、税務、法令順守をサポートする。

https://www.bizjournals.com/southflorida/inno/stories/fundings/2021/10/05/ontop-series-a-tiger-global.html


Oysterが、Indeed関連会社のHR Tech InvestmentsとPayPal Venturesから資金を調達。累計調達額は7500万ドルを超えた。Oysterは、世界180カ国においてリモートワークで働く従業員やインディペンデントコントラクターの採用、給与や報酬の計算管理、医療保険の提供、法令順守をサポートする人事管理プラットフォームである。

https://www.prnewswire.com/news-releases/oyster-announces-funding-from-paypal-ventures-and-hr-tech-investments-as-it-launches-discounts-program-for-mission-driven-companies-301381428.html


The Mom Projectが、Leeds Illuminateなどから8000万ドルを資金調達。累計調達額は1億600万ドル。ワーキングマザー向けタレントマーケットプレイスのThe Mom Projectは、求人検索、履歴書の登録、ほかの登録者との交流、オンラインワークショップ、コミュニティ機能を備える。登録者数は、女性50万人以上、企業3000社。プロテニス選手のセリーナ・ウィリアムズ氏が同社の戦略アドバイザーに名を連ねている。女性と企業のマッチングや、スキルアップの機会の提供を通じて、今後2年間で合計10億ドル以上の経済機会を女性に提供するという目標達成を掲げている。

https://www.prnewswire.com/news-releases/the-mom-project-secures-80m-in-series-c-funding-301394796.html


Karatが、Tiger Globalなどから1億1000万ドルを資金調達。Karatは、技術面接の業務を不特定多数の人々に委託する「面接クラウド」で、面接官の訓練を受けた「Interview Engineers」と呼ばれるソフトウェアエンジニアが、ビデオ面接を行い、評価シートと面接中に作成されたプログラミングコードを企業に提供する。Karatの顧客数は直近1年間で2倍に増加した。企業1社あたりの平均契約規模も前年比で倍増し、8社が年間100万ドル以上を費やしている。主要顧客は、Roblox、American Express、Intuit、Compass、Wayfairなど。

https://www.businesswire.com/news/home/20211013005399/en/Karat-Pioneers-the-Interviewing-Cloud-to-Transform-Technical-Hiring-Secures-110M-in-Series-C-Funding


Gemが、ICONIQ GrowthやGreylockなどから 1億ドルを資金調達。企業評価額は12億ドルとなった。Gemは、ソーシング、CRM、アナリティクス、ダイバーシティ採用の機能を統合したオールインワンの採用管理プラットフォームで、メールによる候補者フォローの自動化機能も備える。Dropbox、Lyft、Robinhood、Robert Waltersなど、800社以上の有名企業が利用している。

https://www.gem.com/blog/series-c

TEXT=杉田真樹

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