
6 女性、高齢者が急速に労働市場に流入している
日本型雇用と称される、日本ならではの雇用慣行。過去、年功賃金や終身雇用など日本ならではといわれる仕組みが正規雇用者を中心とした労働者の雇用の安定につながり、また企業側としても安定した人員確保を可能にした部分もあった。しかし、低迷する経済と歩調を合わせる形で日本型雇用は近年批判が行われてきた。こうしたなか、日本の雇用は変化しているのかあるいはそうではないのか。本シリーズでは、日本の労働環境が今どのように変化をしているのか確認していく。
日本型雇用と称される、日本ならではの雇用慣行。過去、年功賃金や終身雇用など日本ならではといわれる仕組みが正規雇用者を中心とした労働者の雇用の安定につながり、また企業側としても安定した人員確保を可能にした部分もあった。しかし、低迷する経済と歩調を合わせる形で日本型雇用は近年批判が行われてきた。こうしたなか、日本の雇用は変化しているのかあるいはそうではないのか。本シリーズでは、日本の労働環境が今どのように変化をしているのか確認していく。
労働市場に参加している人の属性も変わってきている。近年の日本の労働市場を振り返ったとき、大きな出来事として挙げられることにはなんといっても女性の労働参加の急伸がある。
2000年に58.7%であった日本の15~59歳の女性就業率は、足元で74.4%まで上昇している。女性の社会進出は世界的な潮流となっているが、主要先進国の中でも日本が最も急増している。また、就業率の水準でみてもすでに日本は女性の就業率が高い国である。北欧など一部の国や都市国家では日本よりも高い就業率を達成しているものの、日本の女性就業率の水準や近年の伸びは特筆すべきものだといえる。
この傾向は高齢者でも同様である。日本の高齢者の就業率もまた近年急上昇している(図表1)。男性の60~64歳の就業率は2000年時点で65.1%であったが、2023年時点には84.4%となり、15~59歳の就業率に追いついている。年金の支給開始年齢の引き上げや継続雇用制度の普及に伴って、就業率は大幅に上昇している。65~69歳の男性についても足元で就業率は61.6%と働く人が多数派になっている。
女性高齢者も就業率上昇が続いている。過去の世代においては、女性が働かないことが当たり前だった時代背景もあって高齢女性の就業率は低い水準にあった。しかし、この20数年の間に60代前半の女性の就業率は37.8%から63.8%まで急上昇した。また、60代後半の女性の就業率は2012年から2023年までの間に27.8%から43.1%まで上昇している。
図表1 就業率の推移出典:総務省「労働力調査」

坂本 貴志
一橋大学国際公共政策大学院公共経済専攻修了後、厚生労働省入省。社会保障制度の企画立案業務などに従事した後、内閣府にて官庁エコノミストとして「月例経済報告」の作成や「経済財政白書」の執筆に取り組む。三菱総合研究所にて海外経済担当のエコノミストを務めた後、2017年10月よりリクルートワークス研究所に参画。