株式会社GSI 池田 和也氏
※調査結果をとりまとめた研究レポート「UIターン人材活躍のセオリー」
北海道に戻って、開発の仕事に新たにチャレンジ
山梨でエンジニアとして勤務の後、北海道へUターンし活躍する池田氏と研修担当の方々にUターンの経緯とその活躍のポイントについて伺った。
【本人インタビュー】
株式会社GSI
池田 和也氏
<プロフィール>
北海道出身。北海道で約1年間勤務した後に山梨へ転勤し約6年3カ月勤務。2015年に株式会社GSIに採用される。
30歳を区切りに、地元北海道へ戻って新たなチャレンジをすることを決意
―札幌にUターンするまでの経緯を教えてください。
大学を卒業して北海道のIT企業に入社しました。もともと大学が工業大学でIT系の学科だったこともあり、システムエンジニアに就きたいと考えました。はじめの1年間は北海道で勤務していたのですが、2年目に山梨県甲府市に転勤になりました。そこから約6年3カ月、保守の仕事に携わった後に、2015年8月にGSIに入社しました。
転職のきっかけは、もともとプログラムをつくることが好きだったので、このままずっと保守をやっていていいのか、開発の仕事がしたいと思ったことです。今年で30歳になるので、区切りとしてもちょうどよいと思い、転職しようと考えました。山梨にいたときには、急に地元に戻ってこなければならないときに、時間やお金がかかり、転職するならば、なるべく地元でという考えがありました。
―今の会社を選んだ理由を教えてください。
保守の仕事が面白くないわけではなかったのですが、十分に満足感を得られていない部分もあり、転職を検討しました。
今の会社にした理由の1つは、札幌市内で転勤にならないということ、もう1つは、それまでずっと保守の仕事をしてきて、開発はブランクがあったので、研修もしっかりしてくれるというところ、そこが大きかったです。保守から開発に仕事を変えるとなると、スキル的には不安がありましたので。
―Uターンをされるタイミングで困ったことは何かありましたか。
前の会社を辞める前にも、1社北海道の会社を受けたのですが、面接に来るときに、時間や交通費がかなりかかってしまうのが、厳しいと思っていました。山梨から東京に出て、札幌に来るとなると、待ち時間も含めて、7、8時間はかかります。だから、朝早く出ても、昼ぐらいに着くような感じで、仕事をしながら求職するのは、難しいなと思っていました。
保守の経験をしてきたことが開発の仕事にも活きている
―今担当されているお仕事について教えてください。
顧客先の開発現場に常駐していまして、仕事内容は、既にあるシステムについて、お客様からの改善要望を受けて、その要望に沿って、システムをつくったり修正したりしていくという仕事をやっています。実際、開発をやっているのが、楽しいです。
最初は要件定義の仕事で、資料作成が主だったんですけど、1月からはプログラミングを主にしていて、プログラムをつくって、修正して思いどおりになったり、自分でつくったものが動くというところが面白いですね。ただ、年齢的にも30歳を超えているので、プログラムだけつくっていればいいというわけではなく、要件定義の経験もこれから活きていくと思います。
―転職されて新しく学んだことはありますか。
プログラミングの能力は、前よりは上がったかなと思っています。Javaなのですが、Javaといってもいろいろなパッケージがあって、それを現場で使いながら、こんなのもあるんだという発見をしながらやるのが面白くて、四苦八苦しながらも取り組んでいます。
仕事の進め方とか周りの方々とのコミュニケーションはまだ模索中です。それぞれの仕事のやり方があると思っているので、どんな感じで仕事するのかを見ています。自分の経験に基づいた改善点などを探りながら、こうしたほうがいいのではないかと思っているところに、これから踏み込んでいこうと思っています。
―過去やってきた経験が活きているところはありますか。
保守の仕事は、サーバーなどの大きな部分を見るんですが、何か障害があったときに、多分ここはこういう状態なんだろうなというイメージを持って作業を進めることができるという点では、前の仕事が役に立っていると思います。
―今の仕事の成果とこれから実現したいことを教えてください。
今の現場で、こういう資料をつくったらどうですかというものを提示して、それが採用されたことは、うれしい成果です。また、1からプロジェクトに携わりたいと思っていたのですが、これから始まる新しいプロジェクトに呼ばれたので、目標としては一つ達成ですかね。
今後の目標としては、1つの、それほど大きくなくていいので、プロジェクトをマネジメントできるようになっていきたいと思っています。
Uターンして活躍するには、本人の要因だけではない。受け入れ組織のサポートも不可欠だ。池田氏の研修担当の方々に活躍のポイントを伺った。
【研修担当インタビュー】
最後の工程の経験を活かして開発プロジェクトを引っ張っていってほしい人材
―どのような期待をしていますか。
会社の事業規模が大きくなるにつれ、新規の案件や、既存の案件から派生した案件で、プロジェクト内でチームに分かれる仕事が任されるようになってきました。きちんとチームをつくって作業にあたるというところでお客様から評価をいただいているので、チームをまとめるリーダーの存在が必要になってきていました。プロジェクトを引っ張っていける人材を探しているタイミングで彼が採用されました。
今後、開発をしていくうえで、運用したときにどんなことが起こり得るのかを知っている人材というのは稀です。そこの経験を活かして、ただ単純に上流工程ができるだけではなくて、最後の工程の経験を活かして開発もできる人材になっていってもらいたいと思います。
―入社時の研修で注意していることを教えてください。
中途採用は即戦力として詰め込みすぎてしまうケースがありますが、私たちは一からやっていくところを重要視していて、つまずいたところを徹底的に直す、指導することに力を入れています。どんな経験をしてきたのかを丁寧にヒアリングして、何ができるのか、知っているけどやれていない、実際には業務経験がない部分はどこなのか、ということを、研修中に聞き出しています。
研修後に配置された案件の担当者や上長と「こういう傾向のミスをしやすい」とか「こういうところは得意」といった情報の連携に心掛けています。 それによって、実際のチームに入ったときに、チーム内でのタスクシェアがうまくいくと思います。「現在の研修生はこういう状態ですよ」とか、「こういうところをミスしやすい」というのは日々情報を共有しています。
―社内にUターンIターンの方は多いですか。
北海道で開発をしたいという入社理由が多いので、UターンやIターンで入社される方もかなり多いです。Uターンの方も多くいますが、Iターンですと、学生時代北海道にいた方や、配偶者がこちらの出身という方もいますね。彼らは地域愛があります。「北海道が好き」とか、「地域が好き」とか「家族がいるから」という思いがあるので、そういう思いをしっかりと実現しておくことが大事だと思っています。
私たちの仕事は、デスクの上で頭を使って働くタイプの仕事です。落ち着いた環境で、しっかりと集中して仕事に取り組むことが重要ではないかと思います。
―コミュニケーションを活性化する取り組みは何かされていますか。
中途で入社した場合に、新卒と比べて同期のつながりはできにくいと思います。なので、「年とか、経験とかを気にせずに、ここにいる人たちはみんな同期ですよ」という意識づけをしています。また、実際の業務をしていくうえでは、課会が頻繁にありまして、入社すると最初に一通り、全ての課会に参加していただいています。 あと、3年前ぐらいから社内イベントの取り組みで部活動などを始めていまして、課とかチームを越えて、さらに横のつながりを深めていってもらっています。横と縦でしっかりと人脈を広めて、結束意識を深めることが、離職率低下やコミュニケーション活性化には効果的だと思います。
【株式会社GSI 池田和也氏 の活躍のポイント】
今回のインタビュー結果を研究レポート「UIターン人材活躍のセオリー」でまとめた3つのターニングポイントに当てはめると以下のポイントで整理される。
Uターンから活躍するまでの3つのターニングポイント※1
※1:3つのターニングポイント
UIターンから活躍するまでを入社までの「移住前」、入社後約半年までの「適応期」、入社後1~2年までの「活躍期」の3つの期間に分類して整理した考え方
3つのターニングポイントと学習3階層モデルの詳細については、下記の「UIターン人材活躍のセオリー」のレポートを参照
https://www.works-i.com/research/report/item/160407_uiturn.pdf