(4)2016年時点でのピープル・アナリティクスをめぐる実態と課題

2016年03月01日

2016年の人事課題 ~グローバル経営・VUCAへの対応が急務に~

人事面でも、VUCAへの対応が喫緊の課題となってきました。多くの日本企業で問題視されているのが、人材面でのグローバル対応の本格化です。海外事業の比重が高まる中、日本人のグローバル化(海外要員としての日本人の増強)から、海外人材の幹部登用などグローバル共通の人材活用へと、グローバル対応のレベルが一段階あがりました。加えて、短期化するビジネスサイクルへの対応も求められています。経営戦略・事業戦略上のニーズにタイムリーに対応できる組織運営が求められるようになりました。
労働市場に目を移すと、人材流動化の高まりへの対応が必須になりつつあります。特に、優秀人材の獲得とリテンションは、人事の重要課題となりました。社内にいる優秀人材のリテンションを実現するために、多様な個人のキャリア自律を支援するとともに、社外労働市場への目配りが急務となっています。

パフォーマンスマネジメント:~事業部門がデータを活用できる状態に~

2010年頃から、人事部主導でデータを収集・管理・活用する体制から、事業部と人事部が連携する体制へのシフトが起きつつあります。このトレンドを加速させているのが、クラウド型ERPシステムの登場です。特に、グローバルの人事データをタイムリーに分析する必要性が高まっていることから、データ活用の主体は人事部門から事業部門に移ってきています。
ただし、他のBIツールと同様、事業部門側の問題意識およびリテラシーは十分とは言えないことから、インフラはあれど十分には活用されず、という状態にある企業が大半です。

キャリアマネジメント:タレントマネジメントは、グローバルデータの収集フェーズへ

事業のグローバル化への対応およびグローバルガバナンスの徹底を目的として、グローバルレベルでのタレントマネジメントを行う考え方が普及しつつあります。これを実現するためのツールとして、一定階層以上にグローバル共通のグレーディング・アセスメントシステムを導入する企業が増えつつあります。
そして、グレーディング・アセスメントに関するデータをクラウド型ERPに蓄積することによって、データに基づいたグローバルガバナンスを行うようになってきています。 ただし、現状ではデータの収集に留まっており、それをリアルタイムに分析したり、分析結果から将来の人材ポートフォリオを予測したりというところまでには至っていない企業が大半です。

2017年以降に残された課題

  • 生産性向上
    (イノベーションを生み出す個人・組織特性の分析、時間価値向上にむけたリアルタイムデータ分析と予測)
  • 経営・事業のニーズに即応する人事・組織運営
    (AIを活用した経営・事業ニーズと人材のマッチング)