定年後は、正規雇用の職を追われる?

2020年12月22日

定年後の働き方と聞いてどのような姿を想像するか。そう問えば、今働いている企業で継続して雇用されている姿を思い浮かべる人も多いだろう。
定年後の高齢者は実際にどのように働いているのか。実は私たちはその姿をよく理解していないのでないか。本コラムでは、多くの人が定年後のキャリアへの不安をかかえるなか、その本当の姿を伝えていきたい。
第1回は、年齢ごとの就業形態の変遷をたどることで、定年後に働き方がどのように変化していくのかを見てみよう。

年を経るごとに働き方は変わる

年齢階層別に働き方の変化をとったものが図表1である。
ここでいう働き方とは、就業形態と雇用形態の別を組み合わせたものである。まず、就業形態別に、「会社・団体等に雇われていた」「会社などの役員」「自営業主(雇い人あり)」「自営業主(雇い人なし)」「家族従業者(飲食店・卸小売店・農業等の家族従業者)」「内職」の6つに分ける。さらに、「会社・団体等に雇われていた」人については、「正規の職員・従業員」「パート・アルバイト」「労働者派遣事業所の派遣社員」「契約社員」「嘱託など」の5つに分けている。これらの総計10種類の働き方について、各年代の就業者がどれに該当しているのかを見たのが図表1というわけである。
これを見ると、年齢を追うごとに人々の働き方は変わっていくことがわかる。若年期から見ていくと、18歳から22歳まではパート・アルバイトが就業者のおよそ半数を占める。そして、大学卒業者が社会人になる23歳からは正規雇用者が一気に増える。結果として25歳時点で正規雇用者の割合は就業者全体の63.7%を占め、多数派を形成することになる。この時点でパート・アルバイトの比率は20.4%まで下がっている。

正規雇用の職を追われ、非正規に

さらに、年齢が上がると、30代半ばまでは緩やかに正規雇用者の比率が高まっていくが、そこを境に一度正規雇用者比率は下がっていく。一定数の人が子育てなどを機にいったん職を離れるからだろう。
そして次に正規雇用者の比率が大きく下がっていくのは50代後半。55歳時点の正規雇用者比率は56.0%であるが、60歳時点では38.5%、65歳になると20.0%まで下がるのである。やはり、多くの人は定年を境に正規雇用の職を追われているのである。
では、正規雇用の職を追われた人のその後はどうなるのか。定年後に非就業者となる人もいるが、近年は雇用形態を変え働き続ける人も多くいる。
正規雇用が減少する代わりに増えるのは、パート・アルバイトをはじめとする非正規雇用者である。これが定年後の働き方の第一の選択肢だ。パート・アルバイト、契約社員、嘱託などその他の割合がそれぞれ60代前半から後半にかけて高まっている様子がうかがえる。

雇い人なし自営業という第二の選択肢

そして、実は、正社員の職を追われた人が選択する働き方として浮上する有力な第二の選択肢は自営業主(雇い人なし)である。この働き方を選択する人は、55歳時点で就業者全体の4.8%に過ぎないのだが、60歳時点では7.8%、65歳で10.8%、70歳で17.0%まで増える。
自営というと起業のイメージを想起しがちだが、彼らの多くが行っているのは、シルバー人材センターに登録して、自身の生活を優先しながらすきま時間で業務の委託を受ける働き方や、不動産管理やライターなどいわゆるフリーランス的な働き方などであろう。年金収入がある高齢期には、年金収入を得ながら、生活と折り合いをつけ、こうした働き方で生計を補助しているのである。

現役時代は大半の人が正規雇用者として働く。定年を境に多くの人が正規雇用の職を追われることになるが、その後のキャリアには、非正規、会社役員、雇い人あり自営業、雇い人なし自営業など多様な選択肢が広がっているのだ。

図表1 年齢別の働き方(2019年時点)
img01_01.jpg出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」より作成
注:中央3年移動平均により算出している。

図表2 年齢別の働き方の実数(2019年時点)
img01_02.jpg出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」より作成
注:単位は万人