シェアードタレントネットワーク
最終選考に残った優秀な人材を他社に紹介
シェアードタレントネットワーク(STN)は、最終選考に残ったが、通勤や給与の条件が合わないなど何らかの理由で採用に至らなかった、2番目に優秀な"銀メダリスト"の情報を企業が他社と共有するプラットフォームである。企業は、不採用通知者にプラットフォームへの招待メールを送信し、ユーザー登録を促す。プラットフォームでは、AI技術により人材と求人のマッチングが行われる。他の企業がその人材を採用すると、人材を紹介した企業には成功報酬が支払われる。
人事との関連性
人材を採用したい企業は、他の大手企業による最終選考に残った優秀な顕在層だけが集まる人材プールから候補者を発掘できるため、書類審査や1次面接を省き、採用選考のスピードを上げ、コストを削減できる。人材を紹介する側の企業にとっては、不採用の連絡と同時に、ほかの就職先を見つけるチャンスを提供することで、より良い候補者体験につなげ、企業イメージの低下を防ぐというメリットがある。また紹介ボーナスを得ることで、タレントプールの構築にかかったコストを一部回収できる。求職者側も、最終選考にまで残ったその努力を次のチャンスに即生かせるため、就職活動を最初からやり直す労力や手間を省ける。
サービス例
1.Finalist:共同創設者の1人は日本人
最終選考に残ったが不採用となった求職者の中から優秀な人材上位2~3人を選び、Finalistへの登録を勧める。人材を探している企業が提出した求める人材のタイプや仕事内容といった情報をもとに、同様の企業、同様のポジションの採用において最終選考に残った人材の中からAI技術でマッチングする。登録者が他の企業に採用された場合、成功報酬の50%を手数料として得たうえで、残りを紹介した企業に支払う。
2.Stella:フォーチュン500企業も利用
米航空宇宙局(NASA)、米国防高等研究計画局(DARPA)、スタンフォード大学の研究者が開発したAI技術をもとに、「バーチャルリクルーター」のStellaが求人に最も合った人材を特定する。2017年12月の公式オープン時点で、Unilever、Hilton、Estee Lauder、Revlon、HBO、JetBlueなど大手企業100社が登録している。採用が成立した場合、企業はStellaに手数料として一律2,000ドル(時給職の場合は500ドル)を支払う。人材を紹介した企業はその一部を成功報酬として受け取る。
ビジネスモデル(課金形態)
企業がサービス事業者と人材を紹介した企業に成功報酬を支払う
企業A社が、最終選考に残ったが不採用となった求職者にSTNへの登録を促す。STNを介してその求職者を採用した企業B社は、STNに成功報酬を支払う。STNは、その成功報酬の一部を手数料収入として得たうえで、残額を成功報酬としてA社に支払う。
今後の展望
採用選考で落ちた求職者が、SNSや口コミサイトに会社の悪口を投稿したり、サービスを解約したりするケースは少なくない。英国の通信会社Virgin Mediaが行った不採用者の行動について調査を行ったところ、6%が同社のケーブルテレビを解約し、他社に乗り換えている。これを年間の売り上げに換算すると、約440万ポンド(540万ドル)の損失に相当することが分かった。合否にかかわらず、この会社に応募してよかったと思ってもらえるような候補者体験を提供することの重要性に対する企業の意識は高まっている。
STNのサービスは約10年前に米国で初めて登場したが、コストをかけて集めた人材の情報を他社と共有したくないと利用を躊躇する傾向がとくに大手企業の間で強く、利用が伸びずに事業者のほとんどがサービスを中止した。最近設立された上述のサービス事業者のうち、どの事業者が企業の採用担当者が持つ心理的抵抗を上回るメリットをアピールし、生き残ることができるのか、今後に注目したい。
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