ボット

人事の代わりに1次審査を実施

2019年03月12日

Bots
代表的なサービス

ボットとは本来、インターネット上でタスクを自動で実行するプログラム全般のことを言う。一方、チャットボットとは、人と「チャット」をする「ボット」である。つまり、画面上で人と対話をする、自然言語処理と機械学習を用いた自動対話プログラムである。

人とテキストで対話をする「チャットボット」、電話で対話しその記録を文字に起こす「ボイスボット」、アバターが動画で会話をする「ビデオボット」がある。最近では、チャットボットを略して「ボット」と表現することが多い。

HRテクノロジーにおいて一般的には、応募前から1次審査までの、採用プロセスの初期段階で利用されている。会社のキャリアサイトにポップアップウィンドウを表示しておくと、サイト訪問者はボットにチャット形式で会社に関する質問をすることができる。それをきっかけに、ボットは訪問者に求職の意思があるかどうかを確認し、経験やスキル、希望について基礎的な質問をし、応募を受け付ける。そして、求人に適した候補者をショートリスト化してリクルーターへ通知する。ボットはSNSのメッセージングアプリや、携帯電話のショートメッセージでも機能する。

人事との関連性

人事がボットを利用する目的は、応募前の求職者に対する会社情報の提供、候補者のスクリーニングおよび求人とのマッチングや、面接日時の設定、採用選考における応募者への進捗報告などである。求職者からの問い合わせにボットが即対応することで企業に対する印象が向上し、応募率の上昇につながる。また、一度に多数の候補者から情報を収集できるため、採用選考をより早く、豊富なデータをもとに行えるようになる。大量の人材を採用したい時、1次審査の工程でボットは最も効果を発揮する。

サービス例

1.Mya: 代表的な採用アシスタントボット

応募を受け付けると、Myaは応募者とチャット形式でスクリーニングを開始する。人間と対話をする時と遜色ない自然な文脈でチャットをする。スクリーニング中に応募者について追加の情報が判明すると、ATS(応募者追跡システム)内の情報をアップデートする。スクリーニング終了後は、対話記録とスコアカードをATSに送信する。対話記録の中で候補者が重視する項目をハイライト表示し、リクルーターが面接の際に参考にできる。Myaは応募条件を満たす候補者とリクルーターとの面接日時を設定し、リクルーターの予定表に入力、通知する。条件を満たさない候補者には、ATS内の別の求人を提案する。Googleマップとも連携し、候補者の住所から通勤時間を割り出して最も近い職場を提案する。応募者が過去に会社でトラブルを起こした人物でないかを、ATSで確認する機能もある。ブルーカラー職の大量採用に適している。

2.Reckrut: リクルーターの声で電話審査をするボイスボット

インドの会社。リクルーターは職務の説明や面接の質問を録音し、候補者に電話で一斉発信する。都市ごとに電話をかける最適な時間帯をアナリティクスで導き出せるので、メッセージの発信時間を予約しておくことも可能。Reckrutは候補者のボイス面接の内容をランク付けし、音声とテキストの両方をリクルーターへ送る。また、未回答の候補者へ自動でリマインドの電話もかける。応募してほしい人材に応募を促すコールドコールや、選考通過の連絡、面接の連絡など様々な場面でボイスボットを利用できる。

3.Robot Vera: ソーシングから動画面接までをこなす最先端ボット

ロシアの会社。ボイスボットとビデオボットを提供する。リクルーターが設定した職務内容や求めるスキルをもとに、Veraがインターネット、ジョブボード、ATSなどから要件を満たす候補者を検索する。Veraは発掘した候補者に電話をかけて求人の説明をし、資格やスキルといった必要な情報を聞き出し、候補者の質問に答える。ショートリストに残った候補者には、リクルーターが事前に設定した質問をもとに、Veraが動画面接を実施する。レジ係からIT開発者まで、スキルを測定しやすい職種に役立つ。また、質問に対する候補者の表情と声から、怒りや驚き、中立的、喜びなどを認識するため、接客業に向いている候補者の特定にも役立つ。68カ国語に対応しており、電話審査ならば日本語でも対応可能。

ビジネスモデル(課金形態)

企業がボット作成費と月額利用料をサービス事業者に支払う
企業は、求人情報やそれに基づく候補者への確認事項、会社について候補者からよく聞かれる想定質問・回答をサービス事業者へ提供し、ボットのカスタマイズを依頼する。企業は、サービス事業者にボット作成費とシステム利用料(月額)を支払う。システム利用料は、システムユーザー数あるいは審査を実施した候補者数に基づく。

今後の展望

ボットの技術はまだ黎明期であり、リクルーターが事前に設定した想定質問・回答をもとに候補者と対話をしているものが多い。将来的には、文脈のつながりがより自然になってボットの対話クオリティが上がり、よりインタラクティブになると思われる。機械学習のイノベーションが進めば、候補者の回答内容から学び、ボットが質問を生成し、候補者に質問をするようになるだろう。ボット開発者は、いずれボット同士が協働するようになる、予測マッチングができるようになるとも考えている。

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