定年後は、希望する仕事に就けない?
雇用がスタンダードであった現役時代。その後、多種多様な働き方へと移りゆく。今回は、職種に焦点を当てることで、定年後の仕事の中身をさらに検証していこう。
現役時代には、職種はあまり変わらない
年齢階層別に職種の構成をとったものが以下の図表である。ここから、年齢を経るにしたがって、人々がどのように仕事を変えていくのかを考えてみる。これはあくまで一時点のデータを年齢階層別にとったものであるから、一人ひとりの個人が生涯にわたってどのように職を変えるのかその正確な実態はわからないが、大まかな傾向を把握することはできる。
図表 年齢階層別の職種構成(2019年時点)
出典:総務省「国勢調査」より作成 注:中央3年移動平均により算出している
この図表からわかることは、25歳から59歳の年齢階層にあっては、職種の構成は全体として大きく変化しないということである。販売などサービス職業に就いていた人が事務職に移るといった個別の職種の移動で随所に行われているのだろうが、趨勢的に一方からもう一方に移るといった傾向はあまり生じておらず、全体として安定している。
他方で、若年期は大きく職種が変化する年代にある。15~19歳が就く仕事で最も大きなシェアを占めるサービス職業(全体の29.8%)は、25~29歳では11.4%まで比率が下がり、次点の販売職も21.8%から14.0%へと比率が低下する。これは、サービス職業や販売職を学生時代にアルバイトとして選んでいた人が、就職して事務職や専門的技術的職業に就いたりするからであろう。
事務職、専門職から現業職へ
前回に見た働き方と同様、高齢期には仕事の内容も激変する。60歳以降からの職種の変化を捉えたとき、第一の潮流として見えてくるのは、事務職や専門職の減少である。55~59歳の事務職の就業者全体に占める割合は20.7%であるが、60~64歳で16.1%、65~69歳で11.1%、70~74歳で9.1%まで下がる。専門的・技術的職業も同様である。同様に55~74歳まで5歳刻みに推移を追うと、16.3%から11.7%、9.0%、7.3%まで比率が下がっていくのである。
そして、その代わりに増えるのが、現業職であるサービス職業、保安職業、輸送・機械運転、建設・採掘、運搬・清掃・包装等、農業などである。たとえば、農業に従事する人の割合は、55~59歳から70~74歳までに3.1%から5.8%、9.4%、14.2%へと単調に増える。運搬・清掃・包装等の職に就く人も同様に7.2%から9.8%、11.3%、11.3%へと増えている。
もちろん、高齢期になっても事務職や専門職として会社や病院、学校など組織に残る人もいる。その中には役職者となる人も少なからずいる。しかし、高齢期キャリアを貫く第二の潮流として見えてくるのは、これら現業職が大きく増えるという事実なのだ。
この現実をどう見るか。定年後には会社から追い出されて仕方なく馴染みのない仕事に就かざるを得なくなる。そういった側面があるのだろう。
他方で、職種の変化のグラフを眺めてみると歴然であるが、高齢期には多様な職が混在しているのである。現役時代から高齢期にかけて職は多様化するということは事実である。