テクノロジー化が進む世界の採用‐米仏企業調査より‐ 碇 邦生

2017年04月19日

採用活動におけるテクノロジーの普及

"HR tech" や "HR analytics" が脚光を浴び、人事へのテクノロジーの導入が注目されている。その中でも、世界的な潮流として、採用にテクノロジーを導入しようという動きが活発だ。たとえば、募集においてLinkedInのようなSNSが活用され、 Google や Facebook、PepsiCoといった欧米企業は採用に関するデータを分析し、募集・選抜の精度や効率を高めようとしている。採用へのテクノロジーの導入は最も重要な課題だと述べる欧米企業の採用責任者は多い。

それでは、どのようなテクノロジーが欧米企業では活用されているのだろうか。本コラムでは、米国とフランスの人事パーソンを対象にしたオンライン調査をもとにして、採用におけるテクノロジーの導入状況について考察する。本調査の米国における回答者数は303名、フランスにおける回答者数は306名となっている。

テクノロジーを人事に導入しようという取り組みは米国が注目されがちだが、欧州でも積極的に行われている。特に、フランスは近年、世界最大規模のHR techに関するイベントの開催国となっているほか、AXAをはじめとした大企業がテクノロジーの活用を優先的な戦略課題とするなど、テクノロジー導入に対する動きが活発である。

導入が進む10のテクノロジー

調査では、弊所コラム「HR Technology Trends」と米国とフランスにおける企業インタビューの結果をもとに、10のテクノロジーに関する導入状況と導入を検討しているかについて質問している。10のテクノロジーは以下の通りだ。

図表1 採用に関する10のテクノロジー
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調査の結果は、図表2にまとめられている通りだ。この結果をみてみると、テクノロジーの導入状況は3つの段階に分かれていることがわかる。1つ目の段階は、既に導入が進んでいる分析系テクノロジーだ。HRデータの分析ツール、HRトラッキングシステム、応募者管理システム、面接スケジュール管理ツールは米国とフランス共に約30%を超える企業が導入済みである。検討している企業を含めると、70%前後にも及ぶ。

2つ目の段階は、普及し始め、導入を検討する企業も出ている募集・選抜におけるツールだ。オンラインの性格・適性テストや面接、オンライン・インターンシップ、ワーク・サンプリングなど、導入・検討している企業が50%前後となっている。オンライン・インターンシップのみ、米国ではあまり普及していないようだが、フランスでは積極的に導入が検討されている。

3つ目の段階は、普及も導入も発展途上にある採用自動化のテクノロジーだ。AIによるリコメンデーションや書類選考など、人の手を介さない募集・選抜ツールは未だ普及はしていないものの、先進的な企業では既に導入を始めている。たとえば、フランスの大手情報通信企業では、書類選考をAIで行い、場面によっては採用担当者の判断よりも重視されるという。

図表2 「導入している」もしくは「導入が検討されている」採用におけるテクノロジー
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以上のように、採用におけるテクノロジーの導入は、データ分析、募集・選抜プロセス、採用の自動化という順に普及が進んでいる。特に、米国よりもフランス企業の方が全体的にテクノロジーの導入に前向きな傾向にあることもわかった。このことは、オンライン調査の事前に行われたインタビュー調査でも同様の傾向が見られた。テクノロジーの導入で採用の効率と精度を高め、競争の激しい欧州の人材マーケットで優秀な人材を獲得するための打開策としていた。

米国やフランスでのテクノロジーの導入と比べ、日本はどうだろうか。是非、この結果を参考にして自社の取り組みについて考えてみて欲しい。面接やエントリーシートのような従来の手法に捉われ、新たな採用手法の可能性を見落としていないだろうか。テクノロジーを活用していくことが、日本の採用を進化させる方向性の1つと言えるだろう。

 

碇 邦生

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