フリーランスという働き方は損か得か? 大久保幸夫
フリーランスは約127万人
農林漁業者でもなく、店舗も持たない個人事業主を「フリーランス」と定義するならば、このような働き方をしている人は日本に約127万人いることがわかった。これは2015年春にリクルートワークス研究所が実施した「フリーランス調査」の結果である。フリーランスという働き方は果たして有望なのだろうか?
調査結果からフリーランスの実態を概観してみよう。
表はフリーランスの業務と売上げを一覧にしたものである。業種ではIT系、専門職系、医療・美容・生活系、出版・デザイン・芸術系、教育系、営業・マーケティング系、製造・整備系などに広がり、平均年収は330万円となっている。フリーランスのうち、生計を立てる上で十分な収入を得ている人は25%に過ぎず、生活逼迫型が40%もいる。それ以外の35%は副業としてフリーランスの仕事をしているようだ。取引先が1社のみという人が35%、2~5社が47%で、全体として取引先数は少ない。あまり交渉力を持っていないため、急な仕事や無理な仕事でも断ることができず、単価についても取引先の要求を飲まざるを得ないのが実情だ。本当は新しい取引先を開拓したいのだが、時間もなくそれもできていない。他者にフリーランスという働き方を進めたいとは思っていないが、それでも会社に雇われて働きたいと思っている人は全体の約1割に過ぎず、満足はしていないものの、今の働き方にフィット感は持っているようなのである。
日本もアメリカのようになるのか?
今後フリーランスは増えるのだろうか?アメリカには現在、フリーランスが日本の約20倍いるという。労働人口比でみても10倍以上。つまりまだ増加する余地は相当にあるということなのだろう。
アメリカでは「シェアリングエコノミー」「オンディマンドエコノミー」「ギグエコノミー」という言葉で表現される新しいビジネスが注目を集めていて、フリーランスと消費者をつないで、マッチングするビジネスが次々に出現している。このようなビジネスが成り立つ背景には、ICT技術の進化と、フリーランスの安い人件費がある。
雇用と異なり、社会保障などの費用がかからないうえ、あくまで仕事が発生した時だけ支払いをすればいいため、フリーランスを活用すれば、ローコストで柔軟性が高いビジネスモデルができるのだ。もっとも業務プロセスに指示を出すと雇用者と見なされるために、「我々には雇用者と同じ保障を受ける権利がある」と主張してフリーランスが会社を相手に訴訟を起こすケースが増えてきている。
アメリカにおけるフリーランスは格差の象徴とも言える。低所得を我慢すれば、とりあえずは仕事にありつけるということで、しかたなくフリーランスになるという人が多いのだろう。高齢者や、育児・介護と両立したい人には有望な働き方といえそうだが、他者にはない専門的な技術を持っている人でないと、昔の内職がIT化されただけになってしまう。
日本のフリーランス約127万人も、自ら望んでこの働き方を選んだ人は半数に過ぎない。慎重に考えたほうがよさそうだ。
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