仕事の指示の仕方で変わる、部署の業績と部下の成長 萩原牧子
仕事の指示の仕方で変わる、部署の業績と部下の成長
この春、初めて部下をもつことになった新任マネジャーはもちろん、長年経験を積んできたベテラン管理職でさえ、悩んでいるに違いない。業績をあげること、部下を育成することの両方のミッションをどのように達成すればよいのか。日々どのように部下に仕事を指示すればよいのだろうかと。
ここでは、上司の仕事指示の仕方に注目し、それが、部署の業績や部下の成長に与える影響について考察してみたい。首都圏で働く個人を対象に実施している「ワーキングパーソン調査2014」では、「直属の上司のふだんの仕事指示の仕方(16項目)」と併せて、直属の上司が管理する「部署の業績」の良し悪し、「部下(回答者本人)の成長実感」の有無についてもそれぞれ尋ねている。以下では、これらの関係を見ていくことにしよう。
業績と育成に効果の高い仕事指示とは
「部署の業績」と「部下の成長実感」への効果の違いをみるために、ぞれぞれの上司のふだんの仕事指示の仕方に関して、「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」と回答したグループと「あてはまらない」「どちらかというとあてはまらない」と回答したグループで効果の差分を計算し、「部署の業績」と「部下の成長実感」それぞれで、差が大きいものから順に5つ並べた 。
効果の高い上司の仕事の指示の仕方(差分が大きいもの上位5項目)
まず「部署の業績」への効果が高い項目をみると、上司が「部下の仕事状況を把握し」「相談するとすぐ結論を出し」「仕事の優先順位を明確につける」などが上位にくる。ここからは、部下が不要な仕事に埋もれず、また、必要以上に悩むこともなく、重要な仕事に集中することで、仕事の精度を高め、部署の業績に貢献しているという流れが見える。
一方で、「部下の成長実感」への効果が高い項目をみると、上司が「任せる仕事の目的・背景から説明」「仕事の結果をフィードバック」「大きなミスにつながる前に介入する」などが上位にくる。ここからは、上司による部下の仕事の方向付けや取り組み方の軌道修正が、部下の成長実感を促すことに繋がっている様子がうかがえる。
ただし、俯瞰してみれば、順序こそ異なるものの、「部署の業績」にも「部下の成長実感」にも、上位に並ぶ項目は、かなり共通していることがわかる。正しく仕事を指示すれば、「部署の業績」をあげることと「部下に成長を感じさせる」ことは、同時に達成できるということだ。
自身の仕事の指示の仕方を見直そう
一つひとつの仕事の指示項目をみると、どれも当たり前のことではないかと思うかもしれない。しかし、その当たり前のことを、しっかりと実行できているのか否かが重要だろう。先ほど上がった効果の高い仕事指示の項目について、直属の上司のふだんの仕事の指示として「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」と回答した割合を見てみると、高いものでも4割強と半数に満たないし、「フィードバック」に関しては3割強しか行われていないのだ。そんなはずはない、と思うかもしれないが、これが、部下自身からの評価である。
直属の上司のふだんの仕事の指示として「あてはまる(計)」%
一方で、「部署の業績」にも「部下の成長感」にも、悪影響を与えかねない次のような仕事の指示がある。同じように、直属の上司のふだんの仕事の指示として「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」と回答した割合を見てみると、3割弱から2割強にのぼる。
直属の上司のふだんの仕事の指示として「あてはまる(計)」%
できていると思っている仕事の指示、こんなことはやっていないと思っている仕事の指示、ふだんの自身のやり方について、これを機会に見直してみると、部署の業績と部下の成長に、思わぬ効果が表れるかもしれない。
※分析対象は回答者が正社員フルタイム勤務で20歳から49歳に限定している。
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