構造的な人手不足が日本社会を大きく変えてしまう!?
リクルートワークス研究所presents「研究員の『ひと休み ひと休み』」は、研究員が「何を考えているのか」「どんな思いで研究活動をしているのか」、そんな研究員の「生の声」をお届けするPodcast番組です。
第1回は、主任研究員・古屋星斗に話を聞きました。本コラムでは、収録音源から抜粋した内容をご紹介します。
※podcast番組はぜひこちらからお聴きになってください。
――古屋さんは、最近は「未来予測」の研究に取り組まれていましたが、この研究をやりたい、と思ったきっかけはどんなことでしたか?
古屋:「未来予測」研究では、「労働供給制約」と呼んでいる構造的な人手不足をテーマにしているのですが、きっかけは地方の中小企業の方から聞いたお話でした。新卒採用の面接の際に、学生さんから「社長、私は火曜日と水曜日は残業ができませんけどよろしいですか?」と聞かれたと。我々の常識からするとちょっと信じられないような話なんですけれども、その社長さんは、採用活動が上手く進んでいなかったことやその学生さんがしっかりした方だったこともあって、その方を採用した、とおっしゃっていたんですね。その話を聞いて「すごい時代になったな」と思ったんです。
5年前、10年前とは(企業と学生の)関係性が逆転してしまっている。背景にあるのは、地方における圧倒的な人手不足で、その先のことを考えてしまった。各企業が担っている生活サービスや水道などのインフラ、介護・医療など、様々なサービスに我々の生活は支えられているわけですけども、こういったサービスほど人手が本当に足りなくなる。先ほどの企業と学生の力関係が逆転している、という話は一例に過ぎないと感じていて、構造的な人手不足が日本社会を大きく変えてしまうんじゃないか。これを研究しなければまずいんじゃないか、何かが起こり始めているんじゃないか、そう思ったのがきっかけですね。
根源的な問題点やキーワードを思いつく瞬間はグッときます
――古屋さんが研究をしていてグッとくる瞬間ってありますか。
古屋:いろんな現場の人たちのお話を聞いていると、それが調査で分かってきたデータとか、国の統計とかと組み合わさって、一本の線にまとまってくるときがあるんです。そこからふと、根源的な問題点とか、キーワードを思いつく瞬間がある。インスピレーションを得る瞬間、これは本当にグッときますね。これはすごい気づきなんじゃないか、とか、世の中で今起こっていること、データで明らかになっていることをこの切り口で見てみたら全然違う解決策が見つかるんじゃないか、とか。そういう根源的な問題点やキーワードを思いつく瞬間はグッときます。
あとは反響ですね。いろんなところで講演をしますけれども、終わったあとにメールやDMで、「自分の会社でこういう提案をしてみました」「こういう取り組みをやっているので、一緒に議論させてもらえませんか」とか、そういうリアクションがいただけたときは本当に嬉しいです。研究者冥利に尽きますね。
――そういった反響が古屋さんのエネルギーとなり、次の研究を生み出していくパワーになっているんですね。
古屋:本当にそうですね。僕がやっている研究で、高校生の就職とキャリアという、研究している人が本当に少ない分野があるんですけど、2年くらい前にレポートを発表するなど、盛んにアウトプットをした効果が出てきているのか、主要メディアからしっかりと取り上げられるようになってきていて。今日もこのあと取材なんですけど、高校の就職活動解禁日にメディアが応じてくれる、こういうちょっとした変化の積み重ねで、社会を少しでも良くしていきたいと思って研究をしています。
――先ほど「キーワードを思いつく瞬間がある」とおっしゃっていましたが、それってどんな感じなんですか。パッと視界が開けたり、雷に打たれるような?
古屋:そうそう、そういう感じです。めちゃくちゃビビビ、って来ます。で、だいたい風呂に入っているときなんです。自分一人で考える瞬間を大事にしていて。インプットもいろいろするんですけど、何も見ずに心を無にする、みたいな時間も大事で。たとえば電車に乗っているとき、通勤で歩いているときなどに、すごくいろいろ思いつくんですよ。スマホとか見ていると思いつかないので、何も見ずに、ひたすら心を無にして歩く。でも本当、風呂に入っているときと歩いているときは、いろいろ思いつくんですよね。
ただ、思いついたことってすぐ……本当にすぐ、忘れちゃうんですよ。それで、スマホのメモ帳に大量にメモを書き留めています。1カ月半分のメモだけで、3万文字くらいありますね。音声入力も使っていたりするんですけど、家でやると子供が邪魔してきて、全然メモにならないという。基本的には打ち込んでいます。めちゃくちゃメモ魔ですね。
研究や調査を通じて、世界のすべての人たちと会話ができるようになりたい
――では最後に、古屋さんの今後の野望があれば、ぜひお聞かせください。
古屋:自分たちがやっている研究や調査で、いろんな方とつながっていきたいです。ありがたいことに、お話のできる方の幅が、自分の研究が進めば進むほど拡がってきているなと感じていまして。東京だけでなく、僕の出身である岐阜県の企業団体からもお声がけいただいて初めて岐阜県で講演をしたり。それも、地方の企業に自分の研究が何かしら響いたからだと思うんです。そういう意味で、自分の野望としては、研究や調査を通じて、世界のすべての人たちと会話ができるようになりたい、そういう気持ちでやっています。
――ありがとうございました。
■古屋星斗
2011年一橋大学大学院 社会学研究科総合社会科学専攻修了。同年、経済産業省に入省。産業人材政策、投資ファンド創設、福島の復興・避難者の生活支援、政府成長戦略策定に携わる。2017年より現職。労働市場について分析するとともに、若年人材研究を専門とし、次世代社会のキャリア形成を研究する。一般社団法人スクール・トゥ・ワーク代表理事。
Works未来予測20XX
https://www.works-i.com/project/futureofwork.html
高校生の就職とキャリア
https://www.works-i.com/research/report/recommendationskks.html
■リクルートワークス研究所presents 研究員の「ひと休み ひと休み」
・Spotifyはこちら
・youtubeはこちら