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第6回 雇用の優先か付加価値の再分配か AI時代の国家方針すぐに議論を

2024年02月09日

20 2 3 年1 1 月、「Microsoft 365Copilot(コパイロット)」が日本でスタートしました。Microsoft 365にAI支援機能を搭載したもので、たとえばTeamsでオンライン会議が終わると、AIが議事録を作成し、各自の役割に応じたToDoリストがカレンダーに反映されます。

これまでホワイトカラーと呼ばれる人々が主に取り組んできたのは、主操縦士である上司を補佐する業務です。調査や調整に基づいて、上司の判断を仰ぎ、経営の意思決定につなげるコパイロット(副操縦士)としての補佐業務は今後、基本的にAIに代替されていくと考えています。

私自身が取り組んできた企業参謀の仕事も5年以内に消滅すると予測しており、AIに代替されづらいコミュニティマネジメントの仕事を増やすなど、仕事内容の見直しを進めています。

こうした状況における生存戦略は、国や企業などの組織、個人と二層に分けて考えるべきです。

前号でお話ししたように、ITビジネスの本質は、自動化による高付加価値モデルの確立と再分配です。GAFAMやOpenAIがAIを活用して競争優位性を構築する動きに日本も追随するのか、あるいはアナログな人海戦術に頼った「AI鎖国」を続けるのか。

既得権益を守るためライドシェアを排除してきたように、今後も「AI鎖国」を続け、雇用を保護することも選択肢の1つです。日本の最大の問題は、IT化によってもたらされる付加価値の再分配を享受するのか、雇用を優先するのか、国や企業として十分な議論すらできていないことです。

ハリウッドでは、脚本家たちが「生成AIに脚本を書かせるな」とストライキを起こし、AI使用については、少なくとも年2回脚本家組合と協議するなどの暫定合意に至りました。このような議論を、今すぐ始めることが重要です。

一方、生成AIによって言語の壁が消滅するなか、個人の生存戦略としては日本にいながら海外企業と直接契約するケースも増えるでしょう。

こうした動きを後押しするHRテックも生まれています。アフリカのユニコーン企業アンデラは、新興国のエンジニアと世界中の企業をマッチングするサービスを提供しています。別々の国で働く人材のスキルやカルチャーフィットをAIがアセスメントし、プロジェクトへの配置を提案する技術も進化しています。人材採用や評価のあり方も今後大きく変わっていくでしょう。

w182_tech_main.jpgホワイトカラーの仕事の多くは今後AIに代替されるだろう。
Photo=LSC/amanaimages

Text=渡辺裕子

プロフィール

尾原和啓氏

Obara Kazuhiro
IT批評家。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー、NTTドコモ、リクルート、グーグル、楽天などを経て現職。共著に『アフターデジタル』『努力革命』ほか。

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