転勤(2020年11月版)

2020年11月20日

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リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を用いて、20歳から59歳までの正社員のうち、2019年1年間に転勤を経験した割合(転勤経験者の割合)と人口推計規模を算出してみたところ、2.2%(約67万人)であった(図1)。家族帯同の転勤は0.8%(約25万人)、単身赴任の転勤は1.4%(約43万人)であった。

属性別にみてみると、男性の方が女性よりも転勤経験者は多く、年代別では若年世代の方がほかの世代より多い(図2)。人材育成効果を期待して、育成期間にある若手を中心に転勤を行っていると考えられる。

男性の方が女性よりも転勤経験者は多いが、転勤は男性のみならず女性の働き方にも大きな影響を与えている。5年以内に離職した女性について、離職理由をみてみた。2.1%の女性が、「配偶者の転勤」を理由に離職していることがわかる(図3)。ほかの離職理由と比べてその割合は小さいものの、人口推計規模にすると約30万人となる。転勤は、本人のみならず、その家族の働き方にも影響を与えることがわかるだろう。

また、5年以内に「配偶者の転勤」を理由に離職した女性について、現在(2019年12月時点)の就業状況をみてみた(図4)。39.1%の女性が、いまだ非就業であることがわかる。「配偶者の転勤以外」を理由に離職した女性と比べると、約5%pt多い。多くの企業では、転勤先や転勤時期などルールを明文化していない※。そのため、突然の配偶者の転勤を受け、十分な準備ができないまま離職してしまい、そのまま働かなくなる可能性がある。

従来の転勤制度は、女性が安心して働き続けることの妨げになっているのではないか。業職種や事業内容によっては、現地へ赴任しなければならないなど必要不可欠な転勤もある。しかし、若手・中堅層のローテーションの一環や日常業務のマンネリ化防止など、慣習として行っている転勤もあるだろう。女性が安心して働き続けるためには、必要不可欠な転勤とはなにかを考え、行き先やタイミングなどルールの明文化をするなど、従来の転勤制度を見直す必要があるだろう。

 

※独立行政法人 労働政策研究・研修機構「企業における転勤の実態に関する調査」によると、76.4%の企業が転勤ルールを明文化していない。

図1 2019年1年間に転勤を経験した割合と人口推計規模teiten6-3-1_201120b.jpg

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2020」
注:20歳から59歳までの正社員に限定している。xa20を用いて集計している。

図2 属性別にみた2019年1年間に転勤を経験した割合6-3-2_2020.png

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2020」
注:20歳から59歳までの正社員に限定している。Xa20を用いて集計している。

図3 5年以内に離職した女性の離職理由 ※クリックで拡大します図3 5年以内に離職した女性の離職理由

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2020」
注:2015年から2019年まで(5年以内)に離職した女性に限定している。複数回答である。xa20を用いて集計している。

図4 離職理由別5年以内に離職した女性の現在(2019年12月時点)の就業状況6-3-4_2020.png

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2020」
注:2015年から2019年まで(5年以内)に離職した女性に限定している。現在とは2019年12月時点を指す。xa20を用いて集計している。

文責:孫亜文(アナリスト)
編集:リクルートワークス研究所
※2019年7月時点の本記事はこちら
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