シニアの就業(2020年11月版)
総務省「労働力調査」をみると、2019年の60~64歳の就業率は70.3%となり、8年連続で上昇し(図1)、2000年以降で最高水準となった。改正高年齢者雇用安定法※が施行された2006年以降、リーマンショックで就業率が低下した一時期を除き、上昇傾向にある。65~69歳の就業率も同様に8年連続で上昇し、48.4%と高水準となっている。高齢者の就業率は順調に上昇しており、政府目標※を上回っている。
男女別に高齢者の就業率の推移をみてみると、性別を問わず高齢者の就業率が上昇していることがわかる(図2)。特に女性の就業率の向上が著しい。2000年と足元の2019年を比較すると、男性60~64歳、男性65~69歳、女性60~64歳、女性65~69歳の就業率はそれぞれ17.2%pt、10.3%pt、20.8%pt、13.5%pt上昇し、男性よりも女性の就業率の伸びが大きい。高齢者における男女の就労格差も、徐々にだが狭まってきていると評価できる。
リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を使用して、60~69歳の就業者の労働供給を観察しよう。労働日数は2015~2019年の5年間とも1週間当たり約4.6日でほぼ横ばいといえる(図3)。労働時間についても2018年からほぼ横ばいの32.1時間となった。労働時間の分布をみたところ(図表4)2015年と比較して2019年は労働時間が36時間以上45時間以下の就業者の増加が目立つ。以前は高齢者というと短時間のみの労働が多かったが、徐々にフルタイムで働く高齢者も増加している可能性がある。
少子化による労働力の減少や、社会保障費の抑制による財政負担軽減のため、労働意欲ある高齢者に元気で長く働いてもらいたい。政府においては、高齢者が働くインセンティブをもつように年金などの社会保障制度の見直しを進め、企業も賃金システムの再考など現行制度の見直しを行う必要があるだろう。
※年金支給開始年齢の段階的引き上げに伴い、定年の引き上げや再雇用制度の導入など、企業は65歳までの雇用確保を義務付けられた
※政府目標:2020年において60~64歳の就業率を67.0%まで上昇させる
図1 就業率の推移
図2 就業率の推移(男女別)
図3 労働日数と労働時間の推移(60~69歳)
図4 労働時間の分布(2015年と2019年、60~69歳)
文責:茂木洋之(研究員・アナリスト)
編集:リクルートワークス研究所
※2020年5月時点の本記事はこちら
※2019年4月時点の本記事はこちら
「定点観測 日本の働き方」一覧へ戻る