成長実感・キャリア展望(2020年11月版)

2020年11月27日

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リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を用い、成長実感及びキャリアの見通しをもっている人の割合をみてみよう(図1)。2019年は成長実感をもっている人の割合が30.0%で前年の29.0%からわずかだが増加した。また、キャリアの見通しに関しては14.7%から15.5%と前年から0.8%pt上昇し、2015年以降では最高水準となった。ただし、過去の定点観測をみると、ここ数年で労働時間や賃金など様々な指標が変化している一方で、成長実感やキャリアの見通しはほとんど変化していないことがわかる。また、成長実感およびキャリアの見通しともに、もっている人が3人に1人にもみたない。

キャリアの見通しや成長実感をもつには何をすればいいのか?自己啓発やOJTなどの人的投資がこれらに与える影響をみてみよう(図2)。自己啓発している人のうち、成長実感をもっている人の割合は44.5%であったが、自己啓発をしていない人の場合は21.8%であった。キャリアの見通しに関しても、自己啓発している人の方が、見通しをもっている人の割合が14.1%pt高い。OJTについても同様の傾向が観察される。仕事において自己投資すると、新しい知識や経験を得て、仕事のできる範囲が拡張する可能性がある。これらが成長実感やキャリアの見通しにつながっているのだろう。

最後に、成長実感及びキャリアの見通しと相談できる人との関係をみてみよう(図3)。相談できる人が多いといろいろな選択肢ができると考えられ、よりキャリアの見通しが開ける可能性がある。実際に「相談できる人はいない」と回答した人は成長実感、キャリアの見通しともに、もっている人の割合が最も低い(それぞれ15.1%、8.4%)。一方で「NPO、ボランティア活動の知人」に相談できると回答した人がそれぞれ43.4%、23.8%と最も高い。「職場や仕事の知人」もそれぞれ41.4%、21.3%と高いが、一方で「学校や自己啓発の知人や教師」なども高い結果となった。このように仕事関連のみならず、多様なつながりを維持することが、自分のキャリアの広がりにつながる可能性がある。

人がいきいきと楽しく働くためには、高い報酬や、働きやすい職場環境は確かに大切だろう。しかし仕事を通じて「成長している」という実感をもつといった、内的なモチベーションはやはり必要だ。また今後のキャリアの見通しが開けていることも重要であろう。全く先が見えない状態で働き続けるのは苦しいものだ。自発的に学んでみたり、職場以外のコミュニティーに活動の場を広げてみたりするなどの小さな一歩が、より豊かな働き方につながるだろう。

図1 成長実感・キャリアの見通しをもっている人の割合(経年比較、就業者)teiten10-3-1_201124.jpg

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2016~2020」
注1:成長実感をもっている人、キャリアの見通しをもっている人の割合は、それぞれ「仕事を通じて、「成長している」という実感を持っていた」および、「今後のキャリアの見通しが開けていた」という質問に対し、「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」と回答した人の割合。
注2:xa16~xa20を用いたウエイト集計を行っている。

図2 自己啓発とOJTの有無別、成長実感とキャリアの見通しをもっている人の割合(2019年、就業者)teiten10-3-2_201124.jpg

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2020」
注:xa20を用いたウエイト集計を行っている。

図3 相談できる人別、成長実感、キャリアの見通しをもっている人の割合(2019年、就業者)teiten10-3-3_201124.jpg

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2020」
注1:「あなたにとって相談できる人は誰ですか」という質問に対しての複数回答。
注2:xa20を用いたウエイト集計を行っている。

文責:茂木洋之(研究員・アナリスト)
編集:リクルートワークス研究所
※2019年8月時点の本記事はこちら
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