女性の正規雇用率は上昇している 小前和智

2024年11月12日

リクルートワークス研究所では、個人が生き生きと働き続けられる状態を理想とし、日本における働き方がその理想に近づいているかを評価することを目的としてWorks Indexを作成している。本コラムは、20246月にまとめたレポート「Works Index 2023のなかでも特徴的な変化を示した女性の正規雇用率を取り上げる。

女性の正規雇用率は上昇傾向

図表1には、2020年から2023年までの4年間の女性の就業率と就業形態の構成割合を示した。2020年と2024年の就業率を比較すると、15~24歳と65~74歳では低下しているが、それ以外の幅広い年齢層で上昇が続いている。

さらに、就業率が高まっている年齢層において、正規雇用として働く割合(正規雇用率)が上昇しているのは重要である。これまでに、多くの女性が結婚や出産を機に退職しその後非正規雇用として再就職していると報告されてきた。図表1は、そうした流れが変わり、数値の変化としても捉えられるようになった可能性を示す。

図表1 女性の就業形態の構成割合(年齢階級別)女性の就業形態の構成割合(年齢階級別 棒グラフ)

出所:リクルートワークス研究所「Works Index 2023」図表2-3

正規雇用として継続する率も上昇傾向

正規雇用率の高まりの要因には、非正規雇用や非就業状態から正規雇用への移行、正規雇用での就業継続などいくつかの要因が考えられる。非正規雇用や非就業状態から正規雇用へ移行しやすくなっているかという論点は重要であるものの、近年、正規雇用への転換はそれほど伸びていないことが示されている(※1)。そこで本コラムでは後者の論点である、正規雇用としての就業継続に着目する。

図表2は前年に正規雇用として就業していた女性のうち当年も正規雇用として就業継続した割合を示す。たとえば、総数(1574歳)における2016年の90.5%という数字は、2015年から2016年の変化をみている。2016年と2023年を比較すると、特に2534歳では+3.1%pt89.1% 92.2%)と大きく上昇し、総数(1574歳)でも1.4%pt上昇していた。2010年代と比べ、全体として正規雇用継続率が高まってきたことがわかる。こうした変化が正規雇用の構成割合を上昇させた一因になっているものと考えられる。 

図表2 女性の正規雇用継続率の推移(年齢階級別)女性の正規雇用継続率の推移(年齢階級別 グラフ)

出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」より筆者作成

カギは、性別に偏りなく柔軟な働き方ができること

ここまで、女性の正規雇用率が高まりつつあること、その要因の1つとして正規雇用継続率が上昇してきたことを示した。では、女性の正規雇用継続率が高まってきたことの背景としては、どのような要因が考えられるのだろうか。

Works Index 2023では、長時間労働の是正に加え、休暇や勤務時間・勤務場所の自由度の高まりを指摘した。そのうえで、「働き方改革」関連法をはじめとした法制度や市場環境の変化により幅広い層で働き方が変わったことが、女性が正規雇用として継続的に働き続けられる環境の整備につながっているものと推論した。

有配偶の女性の場合、女性自身の勤務先の制度や働き方のみならず、配偶者である男性の働き方も重要な要素となることは、多くの研究で指摘されてきた。家事(household work)を夫婦で分担するとすれば、男性の長時間労働や柔軟でない働き方は女性への家事負担の偏りにつながるためである。

図表3には、ワークライフバランスの指標であるIndex IIIの値の推移を示した。数値が高いほどより柔軟な働き方が可能になっていることを示す。7年間で女性では確かに上昇しているが(68.6pt → 71.4pt)、男性はより大きな上昇幅をみせている(60.5pt → 65.2pt)。図表3の対象者は必ずしも有配偶者に絞っているわけではないものの、男女ともワークライフバランスが改善してきたことを示しており、これは夫婦間での家事分担の観点から大きな意味をもつだろう(※2)。

「働き方改革」や人手不足によるリテンション施策として、今後も柔軟な働き方が広がりをみせるのか、柔軟な働き方の実現が女性の正規雇用としての就業につながっていくには、特にどのような要素が重要となるのかなど、今後解明すべき論点はたくさんある。

図表3 Index III(ワークライフバランス)の推移ワークライフバランスの推移(折れ線グラフ)出所:出所:リクルートワークス研究所「Works Index 2023」計数表


※1 たとえば、「非正規雇用の正規転換と無期転換―労契法と派遣法の改正、コロナ禍を通じて変わったか」を参照されたい。
※2 なお、Works Index 2022では、雇用形態(正規雇用、非正規雇用)別にみても、Index III(ワークライフバランス)が上昇してきたことを示している。 

小前和智(研究員・アナリスト)
・本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、
所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。