制度があるのに、なぜテレワークしないのか 萩原牧子
「全国就業実態パネル調査2017」(リクルートワークス研究所)によると、雇用者でテレワーク制度が適用されている割合は2.5%。しかしながら、2016年12月時点の週テレワーク時間をみると(図1)、制度対象者のうち過半数が、テレワークを実施していないことがわかった。なぜ、制度が適用されているのに、テレワークできないのか。その要因を分析してみたい。
図1 制度対象者の週テレワーク時間
図2は、正規職員・従業員のテレワーク制度対象者のうちテレワーク実施を1、非実施を0とするウエイト付ロジスティック分析の結果である。*は統計的に有意な影響がある場合を示し、数値はオッズ比である。*がついていて、数値が1より大きいほど、テレワークをしている確率が増え、逆に1より小さいほど減る。
図2 制度対象者のテレワーク実施の要因(正規職員・従業員限定)
まず、性別、配偶者や子どもの有無をみると、それらの違いは、テレワーク実施に有意な影響を生じていない。子どもがいるからテレワークをするかというと、そうではない。勤務先の状況をみると、規模が小さいところに比べて、大きいところはテレワークをしている確率が低い。特に、100人以上1000人未満では、テレワークをしている確率が低い。業種では情報業、職種では営業職がテレワークをしている確率が高いのは、想像のとおりではないだろうか。
そして、これらの要因を調整してもなお、「自分で仕事のやり方を決めることができた」がテレワーク実施の確率を有意に高めていることは、テレワークを進めていく上で、重要なポイントだろう。なぜなら、仕事を自律的にできるかどうかは、多くの仕事で汎用可能な、マネジメントの問題だからである。
つまり、ミッションを明確にして、毎日、報告や相談をしなくても、部下が自身で判断して仕事を進められるようにしているか。テレワークが進むかどうかは上司のマネジメントスキルにかかっている。
萩原牧子(リクルートワークス研究所 主任研究員/主任アナリスト)
※本稿は「働き方改革の進捗と評価」に掲載されているコラムの転載(一部調整)です。
・本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。